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体重別選抜柔道大会2018(男子)_小川雄勢が王子谷剛志と原沢久喜破って下剋上の100㎏超級を初制覇!

f0090954_08525847.jpgバクー世界柔道選手権(9月20日~7日、アゼルバイジャン・バクー)の日本代表最終選考会を兼ねる平成30年全日本選抜柔道体重別選手権は8日、福岡国際センター(福岡市)で最終日の男女合わせて7階級の競技が行われました。

写真はGS延長戦で原沢を破って初優勝を達成した100㎏超級の明治大の小川雄勢です。

女子は昨日の記事でお知らせしましたが、全階級で第1シードの選手が優勝を逃すという波乱のけっかとなりました。

それに比べると、男子は60㎏級の高藤直寿と66㎏級の阿部一二三が代表に内定してこの大会には出場しておらず、比較的予想の範囲内での試合展開でした。

例外が第1シードが初戦で敗退した60㎏級と100㎏級でした。

60㎏級では連覇してオープンの二枠からの出場を目指していた去年のこの大会の覇者永山竜樹(東海大4年)が1回戦で敗れてしまいました。試合中負傷して視界が悪くなった影響もあってかこの大会で準優勝の米村克麻(センコー)から背負い投げ技ありを喰らってしまいました。

66kg級は第1シードの丸山城志郎(ミキハウス)が素晴らしい出来で初優勝を飾りました。

73㎏級は、去年の世界チャンピオン橋本壮市(パーク24)とリオ五輪の金メダリスト大野将平(旭化成)、そして66kg級から階級を上げた海老沼匡(パーク24)と3人の世界王者がエントリーした最激戦区でした。

結果からいうと男子73kg級を制したのは第1シードの橋本でした。決勝までの試合内容で印象的な勝ち上がり方をしたのは海老沼匡でしたが、同門(パーク24)対決となった決勝戦で首投げかと思わせる左腰車「技有」で去年の世界チャンピオンの橋本に軍配が上がりました。

海老沼は1回戦でグランドスラム東京王者の立川新(東海大3年)を袖釣込腰「一本」、準決勝で大野からいずれも内股で2つの「技有」を奪って合わせ一本勝ちで決勝に駒を進めましたが、試合巧者の橋本にしてやられました。

橋本は決勝でこの海老沼からわずかな間隙を縫って電光石火の投げ技を仕掛け技有を奪っての完勝でした。みごと大会連覇を決めました。

81kg級はグランドスラム・エカテリンブルク大会で決勝を争った藤原崇太郎(日本体育大2年)と佐々木健志(筑波大4年)の若手2人が決勝で再戦することになりました。グランドスラム・エカテリンブルク大会では藤原が勝利しましたが、この選抜体重別では激しい攻め合いの末に残り39秒で藤原の払腰を潰した佐々木が隅落で捲り返して「技有」を獲得し、雪辱を果たしての嬉しい初優勝を決めました。ただ、バクー世界選手権代表には、国際大会での実績を優先されたためでしょうか、藤原が選ばれていました。

90㎏級は73㎏級と並ぶ激戦区と目されていました。グランドスラム東京の覇者・長澤憲大(パーク24)、グランドスラムパリを制した向翔一郎(ALSOK)、そして今春から完全復帰したリオ五輪金メダリスト・ベイカー茉秋(日本中央競馬会)の三つ巴での優勝争いが予想され、勝った選手がそのまま代表入りするとされていました。

この90kg級は長澤が初優勝を達成しました。決勝では、準決勝で小外刈を返しての浮落「技有」で向を破ったベイカーと対戦しました。大学(東海大学)の先輩でもある長澤はGS延長戦に入ってから徐々にペースを握り左内股技ありでベイカーを退けました。

100kg級は第1シードの飯田健太郎(国士舘大2年)が1回戦で敗れる波乱での幕開けとなりました。昨年から階級を上げた西山大希(新日鐵住金)が、決勝で熊代佑輔(ALSOK)を「指導3」の反則で破り、90kg級で優勝した2016年大会に続く2度目の選抜体重別制覇を果たしました。

男子100kg超級は12月のグランドスラム東京を制した小川雄勢(明治大4年)が初優勝でした。組み手とパワー、そして大きな体と抜群のスタミナを生かした戦術的柔道でしぶとく戦い続け、1回戦の太田彪雅(東海大3年)戦、準決勝の王子谷剛志(旭化成)戦、そして決勝の原沢久喜(日本中央競馬会)戦と、すべてGS延長戦の末に3つの「指導」を奪って勝利しました。延長戦にもつれ込む消耗戦での強さは父親譲り(小川直也)だなと思いました。

各階級の入賞者は次の通りです。
60kg級
優 勝:大島優磨(旭化成)
準優勝:米村克麻(センコー)

66kg級
優 勝:丸山城志郎(ミキハウス)
準優勝:田川兼三(筑波大4年)

73kg級
優 勝:橋本壮市(パーク24)
準優勝:海老沼匡(パーク24)

81kg級
優 勝:佐々木健志(筑波大4年)
準優勝:藤原崇太郎(日本体育大2年)

90kg級
優 勝:長澤憲大(パーク24)
準優勝:ベイカー茉秋(日本中央競馬会)

100kg級
優 勝:西山大希(新日鐵住金)
準優勝:熊代佑輔(ALSOK)

100kg超級
優 勝:小川雄勢(明治大4年)
準優勝:原沢久喜(日本中央競馬会)

2枠目および最重量級代表は4月29日の全日本柔道選手権終了後に決定されますが、 バクー世界柔道選手権(9月20日~27日、アゼルバイジャン・バクー)の6階級での男子日本代表は以下のように発表されました。

60kg級 髙藤直寿(パーク24)
66kg級 阿部一二三(日本体育大3年)
73kg級 橋本壮市(パーク24)
81kg級 藤原崇太郎(日本体育大2年)
90kg級 長澤憲大(パーク24)
100kg級 ウルフアロン(了徳寺学園職)

2枠の選択は難しいですね。73㎏級の海老沢、100㎏超級で原沢と小川かなと思っていますが、そうすると66㎏級の丸山城四郎が可哀想。

# by zoompac | 2018-04-10 08:55 | スポーツ | Comments(0)

選抜体重別選手権2018(女子)の結果_第1シードがことごとく敗れる春の珍事

f0090954_09134901.png

女子は大荒れでしたね。
第1シードの選手がことごとく優勝できませんでした。

48kg級は現役世界王者の渡名喜風南(パーク24)が準決勝で山﨑珠美(自衛隊体育学校)に破れました。

52㎏級はすっかり三番手に居所をみつけたとの印象を強くした寝業師・角田夏実が世界選手権銀メダリストの意地を見せました。ブダペスト世界選手権金メダリストの志々目愛(了徳寺学園職)が第1シード、講道館杯からグランドスラム東京、さらにグランドスラム・パリと全勝して台頭中の阿部詩(夙川学院高3年)が第2シードを張った52kg級で、志々目と阿部の二強対決との予想を覆して、角田夏実(了徳寺学園職)が準決勝で阿部を、決勝で志々目をそれぞれ伝家の宝刀の巴投げで仕留めて初優勝を飾りました。(写真は、決勝で志々目を射止めた角田の巴投げ!)

57kg級は準決勝で波乱が起きました。まず第1シードの芳田司(コマツ)がGS延長戦の末に舟久保遥香(三井住友海上)に「指導3」の反則で撃破され、続いて芳田と共に世界選手権代表選考対象者の宇高菜絵(コマツ)も玉置桃(三井住友海上)に袖釣込腰と巴投の合技「一本」で破れました。(同門対決となった決勝は総試合時間9分43秒の熱戦の末に玉置が隅落「技有」で勝利し、初優勝に輝きました。)

63kg級は第1シードの田代未来(コマツ)と第2シードの鍋倉那美(三井住友海上)がともに1回戦で姿を消すという情けない結果になりました。どんぐりの背比べ階級として去年の世界選手権代表派遣見送りとなっただけに残念です。去年、優勝していたら、去年の世界代表に選抜されたであろう能智亜衣美(了徳寺学園職)が大荒れトーナメントを制し、2年ぶり2度目の選抜体重別制覇を決めました。

70kg級はグランドスラム大会2連勝中でもっか絶好調の大野陽子(コマツ)が圧倒的な強さを発揮し、全試合一本勝ちで初優勝を飾りました。決勝ではブダペスト世界選手権金メダリスト新井千鶴(三井住友海上)を豪快な右一本背負投「一本」で畳に沈め、勢いの違いを見せつけました。

78kg級は新勢力の髙山莉加(三井住友海上)が圧勝Vで、三つ巴の優勝争い予想を覆しました。1回戦から決勝まで、すべて世界選手権代表選考対象選手とマッチアップする極めて厳しい配置からのスタートだったが、梅木真美(ALSOK)を浮腰と横四方固の合技「一本」、準決勝は佐藤瑠香(コマツ)に腕緘を極めながらの縦四方固「一本」、そして決勝は第1シードの濱田尚里(自衛隊体育学校)から大外返「技有」に大外刈「技有」と連取する凄まじい強さで合技「一本」。他をまったく寄せ付けないまま、初の選抜体重別優勝に辿り着きました。 国際試合での実績不足から世界代表派遣の切符を手にすることは難しいでしょうが、東京五輪に向けて頼もしい選手が台頭してきました。

最重量級の勝者は最年少の素根輝(南筑高3年)でした。決勝では世界無差別選手権の覇者・朝比奈沙羅(パーク24)と激戦、12月のグランドスラム東京決勝ではあっという間に3つの「指導」を奪われて敗れたこの難敵相手に一矢報いました。 一時は「指導」2つをリードされるピンチに陥ったが、試合時間8分に迫ろうかというところから担ぎ技を連続して仕掛けて逆襲。立て続けに3つの「指導」をもぎ取って逆転勝ちしました。 これまで3戦して一度も勝てなかった世界チャンピオンの朝比奈を総試合時間11分56秒の直接対決で退けて選抜体重別2連覇を果たしました。大いなる手ごたえをつかんだ勝利になったことでしょう。

各階級の入賞者は次の通りです。

48kg級
優 勝:山﨑珠美(自衛隊体育学校)
準優勝:遠藤宏美(ALSOK)

52kg級
優 勝:角田夏実(了徳寺学園職)
準優勝:志々目愛(了徳寺学園職)

57kg級
優 勝:玉置桃(三井住友海上)
準優勝:舟久保遥香(三井住友海上)

63kg級
優 勝:能智亜衣美(了徳寺学園職)
準優勝:荒木穂乃佳(兵庫県警察)

70kg級
優 勝:大野陽子(コマツ)
準優勝:新井千鶴(三井住友海上)

78kg級
優 勝:髙山莉加(三井住友海上)
準優勝:濵田尚里(自衛隊体育学校)

78kg超級
優 勝:素根輝(南筑高3年)
準優勝:朝比奈沙羅(パーク24)

2枠目および最重量級代表は4月22日の皇后盃全日本女子柔道選手権終了後に決定されますが、 バクー世界柔道選手権(9月20日~27日、アゼルバイジャン・バクー)の女子日本代表が以下のように発表されました。

48kg級 渡名喜風南(パーク24)
52kg級 志々目愛(了徳寺学園職)
57kg級 芳田司(コマツ)
63kg級 田代未来(コマツ)
70kg級 大野陽子(コマツ)
78kg級 濵田尚里(自衛隊体育学校)

2枠のうちの1つは52㎏級で使われそうですが、この選抜で優勝の角田夏実を選ぶか、台頭著しい阿部詩を選ぶか悩ましいですね。もう1枠は78㎏超級で、朝比奈、素根でしょう。


# by zoompac | 2018-04-09 09:15 | スポーツ | Comments(0)

映画「ブラックパンサー」_テクノロジーとスピリチャルの配合が絶妙なアフリカの国王のヒーロー誕生秘話!

f0090954_08420788.jpgこちらは4月から小6に上がる孫君のリクエストで観に行きました。@109シネマズ木場。

2016年公開の「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」でマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に初登場した新たなヒーロー、ブラックパンサーを主役に描くアクション映画でした。

ブラックパンサーはコミック界初の黒人ヒーローとして1966年に登場していたらしいのですが、公民権法上差別が撤廃されたものの人種差別を巡る問題が先鋭化された当時の状況を映して映画化は見送られてきました。

1966年のアメコミデビュー数か月後には「ブラックパンサー党」を名乗る黒人解放運動の過激派組織が誕生したそうですが短命でした。1967年に解散してしまいました。

今なお黒人青年への暴行・射殺事件が相次ぐアメリカですが、初の黒人混血大統領オバマの誕生に加えて、実社会のIT化が進んできたことで、アフリカのワカンダという架空の国が持つテクノロジー描写が荒唐無稽な設定でなくなってきた背景も手伝ってか、このブラックパンサーがいよいよ映画で活躍することになりました。

世界からひっそり隠れているアフリカの超文明国ワカンダの若き国王ティ・チャラが、漆黒のスーツと鋭い爪を武器に戦うブラックパンサーとして登場します。その誕生秘話から始まる物語になっていました。

もともとこの地に落下した巨大隕石に絶大なパワーを秘めた鉱石「ヴィブラニウム」が含まれていたことからワカンダは、その恩恵にあずかり目覚しい発展を遂げてきました。そのヴィブラニウムが悪用されることを防ぐため、ブラックパンサーは守護者のような役割をもっていました。

また代々の国王の下で、世界各国にスパイを放ち、その秘密を守り通してきましたが、ティ・チャラの父である先代の国王は、その鉱石「ヴィブラニウム」を世界の平和のため有効活用を訴えかけようと国連会議に出席しましたが、そこで暗殺されてしまったのです。そのいきさつは2016年公開の「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」で語られています。

今回の映画では、ワカンダ国が世界に放ったスパイの子孫(ティ・チャラの父の弟の息子)が野望を持ってティ・チャラの前に現れます。彼はティ・チャラに対し、ワカンダ国の王位継承権を主張します。彼は鉱石「ヴィブラニウム」をパワーを悪用して、ワカンダ国から世界制覇を目指すことを企んでいました。

悪役と正義のヒーローのわかりやすい構図のストーリーになっていました。

ホモ・サピエンスが最初に降臨したアフリカ大陸を思い起こしながら、テクノロジーとスピリチャルの一見相反するものが融合する摩訶不思議な世界を楽しむことができました。

秘密のベールを脱いだブラックパンサーの今後の活躍に期待です。孫君と末永く鑑賞できるシリーズになってくれると嬉しいです。

# by zoompac | 2018-04-06 08:46 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画「リメンバーミー」_メキシコ少年ミゲルの大好きな「リメンバーミー」の歌が時を越え家族を結ぶ物語!

f0090954_11381788.jpgもうすぐ小2に上がる孫嬢にせがまれて、子守の役目で観た映画でしたが、意外とよかったです。109シネマズ木場で観ました。

できれば字幕版で吹き替え無しのアカデミー歌曲賞(主題歌)受賞音楽を聴きたかったのですが、吹き替え版もそれなりに楽しめました。

私たちが生れる前から何世代も繋がっている「家族の絆」が描かれており、孫と観るにはうってつけの映画でした。この映画にはストーリーの展開に意外性があり、よかったです。

私にとってのメキシコと言えば麻薬戦争もの(「ノーカントリー」や「ボーダーライン」等)ってイメージが定着していましたが、そのイメージを覆すような陽気で楽しいメキシコらしさが溢れる映画でした。

日本のお盆のようなメキシコの「死者の日」って祭礼がカラフルで印象的でした。確か「007 スペクター」のオープニングシーンにもその死者の日のパレードが使われていたように記憶しています。

とにかくメキシコ文化あふれる楽しい作品になっていました。登場するガイコツモキュートで笑えました。あの世とこの世を結ぶ死者の世界の入管所は米国とメキシコの国境の入管所をもじっているようでこれも笑えました。

生者の国サンタ・セシリアという町でミゲルの家族は代々靴職人の店を営んでいます。町はメキシコの陽気な音楽で溢れていますが、ミゲルの一家は音楽を固く禁じています。

ひいひいおばあちゃんの夫(すなわち、ひいひいおじいちゃん)がミュージシャンで家族を捨て、音楽の道にのめり込んだということらしいのです。「死者の日」の祭りに飾る先祖の写真の中でそのおじいちゃんの写真だけは破り取られていました。

音楽の大好きなミゲルは、音楽禁止の家訓があるにもかかわらず、この町が生んだ今は亡き伝説の歌手「エルネスト・デラクレス」のような歌手になることを夢見ています。彼の大好きな曲はデラクレスの大ヒット曲「リメンバー・ミー」です。

顔のないひいひいおじいちゃんが片手にしたギターがデラクレスのギターと同じものだったことを偶然知ったミゲルは、自分がデラクレスの子孫ではないかと思い、死者の日にデラクレスが祭られた廟に忍び込み彼の遺品のギターに触れます。ミゲルはコンテストに出たかったのですが、ギターがなかったのです。

そのデラクレスの遺品に触れた瞬間、ミゲルは死者の国に迷い込みます。色彩溢れる夢のような場所ですが、日の出までに生者の国に戻らなければ彼の体は消滅してしまいます。

生者の国に戻る方法は、先祖に会い赦しを乞うのです。ミゲルはそうしましたが、先祖たちはことごとく音楽禁止を絶対条件にして譲りません。

ということでミゲルは、彼がひいひいおじいちゃんと信じるデラクレスを訪ね彼に赦しを乞おうと思い立ち、デラクレスを知っているというヘクターと冒険の旅に出るのでした。

ミゲルの前には思わぬ真実が待ち受けていました。そして彼の大好きな「リメンバーミー」の歌の誕生秘話にもぐっときました。ひいおばあちゃんのココの皺だらけの顔の描写も秀逸でした。ちなみにこの映画の原題はCOCOです。

映画の後、孫嬢に、おじいちゃんが死んだ後も「Remenber me!」と言おうとしましたが止めました。そこは忖度してほしいところです。

# by zoompac | 2018-04-05 11:41 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画「ウィンストン・チャーチル_ヒトラーから世界を救った男」

f0090954_12154316.jpg4月1日からオープンのTOHOシネマズ日比谷@東京ミッドタウン4Fで観ました。広くてゆったりしていますが、エスカレーターで4階に上がるのに階ごとにぐるっと半周歩かないと上昇エスカレーターに乗れないのが少々不便でした。

名優ゲイリー・オールドマンがイギリスの政治家ウィンストン・チャーチルを演じ、第90回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した歴史ドラマです。この映画で日本人初のアカデミー・メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したカズこと辻一弘氏のメイクアップもさることながら、ゲイリー・オールドマンの「なりきり」ぶりが凄かったです。

雄弁家として有名なチャーチルは生まれつきの優れた演説家ではありませんでした。「S」を正確に発音できない吃音障害をもっていたのです。空気が抜けて擦れたようなチャーチル独特の発音もマスターしたゲイリー・オールドマンが「We shall never surrender!」と叫ぶシーンには鳥肌がたちました。

当時65歳のロートルのチャーチルが英国首相に任命された1940年5月10日からこの映画の幕が開きます。

時系列にみると、この首相就任の5月10日から、ドイツとの戦いを宣言する演説をした5月28日までの18日間の物語です。

その間、3つの演説をします。この3本の演説を要としてこの映画を観ることもできます。

5月13日に首相として初めて議会下院に立ちます。このときの演説には19世紀のイタリア統一運動の英傑ジュゼッペ・ガルバルディの名言「血、労苦、涙、汗(blood、toil、tears and sweat)」が引用されていました。首相として彼は「血、労苦、涙と汗」以外に提供するものは持ち合わせていないと述べ、大きく立ちはだかる独裁者ヒトラーに敢然と立ち向かう決意を表明していました。Victory at all cost!と結びました。 VictoryとSurvaivalという言葉を連呼していたのが印象的でした。

次いで、19日に国民向けラジオ放送演説をします。ここでは国民に「勇敢な戦士たれ!」と鼓舞しています。

そして「We shall never surrender!」と叫び議会の賛同を歓呼の嵐で迎えた5月28日の演説です。(ちなみにチャーチルがこの演説に先立って地下鉄に乗って庶民の声を聴くシーンは完全なるフィクションです。)

結果として1940年の5月28日のここからイギリスがナチス・ドイツに勝利する1945年5月8日までには約5年かかりました。

しかし世界にとっての分岐点となる大きな決断は1940年の5月から6月にかけての1ヶ月のあいだになされたのです。

歴史にIfはありませんが、イギリスがヒトラーと和睦するという選択をしていたらと思うと、ぞっとしますね。四面楚歌に見えたチャーチルの決意と勇気が彼の武器である言葉で演説で以後5年の独裁者国家との戦いに国民を総動員していきました。

この映画の原題は「Darkest Hour」です。最も困難な挑戦に直面したチャーチル自身がこの時期を表現した言葉に由来しています。彼はこの後の6月のスピーチでは、「their finest hour」という言葉を使い「のちの人から彼らの最も輝ける時だったと言われるようにしよう」と言っています。

‘Let us therefore brace ourselves to our duties, and so bear ourselves that, if the British Empire and its Commonwealth last for a thousand years, men will still say, “This was their finest hour.” ’

この映画は去年の秋日本でも公開されたクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」の裏ストーリーとして観ることもできます。

チャーチルの鶴の一声で「ダイナモ作戦」と銘打って、1940年5月24日から6月4日にかけて、フランスのダンケルク(Dunkirk)に包囲されたイギリス派遣軍とフランス軍約35万人を軍艦の他に民間の漁船やヨット、はしけを含む、あらゆる船舶を総動員して救出することに成功します。しかしその一方でカレーで包囲されていたイギリス軍部隊にはできるだけドイツ軍を引き付ける役目を課し全滅やむなしとした苦渋の選択だったエピソードもしっかり描いていました。

その他、チャーチルを支えた女性2人の視点を通してのチャーチル像を描いたという切り口でこの映画を鑑賞するのも一興です。56年連れ添った彼の妻クレメンティーン(「イングリッシュ・ペイシェント」の主演女優のクリスティン・スコット・トーマス)はチャーチルの心の友であり、良心であり、よき批評家ぶりを発揮していました。

そしてチャーチルの個人秘書エリザベス・クレイトン(TVドラマ「ダウントン・アビー」のレディ・ローズ・マクレアを演じているリリー・ジェームズ)は、チャーチルと庶民の架け橋のような働きをしていました。映画の冒頭で、チャーチルの口述をタイプすることでまごつきクビになりそうになりますが、後々、チャーチルの異常と思えるこだわりが和らぎ、彼から素晴らしいウィットと思いやりを引き出すシーンがなんとも印象深かったです。

スピーチの威力、影響力について考えを改めさせられる映画でした。人物なりきり映画としては、ダニエル・デイ=ルイスが3度目のアカデミー主演男優賞に輝いた「リンカーン」を彷彿させる映画でもありました。

# by zoompac | 2018-04-04 12:16 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

2018年3月のスポーツ関連記事の総括

総括するほどの数の記事ではありませんでしたね。全部で4本!

さて、いよいよ柔道家達が各階級トップの座を巡って雌雄を決する4月がやってきました。楽しみです。

マラソン
* 女子マラソン界にまたしても新星誕生_22歳の関根花観!
[ 2018-03 -12 10:03 ]

テニス
* 大器大阪なおみが遂にブレイク!BNPパリバ・オープン@米カリフォルニア州インディアンウェルズで優勝!
[ 2018-03 -20 11:54 ]

スキージャンプ
* お待たせ高梨沙羅が遂にW杯単独最多の54勝達成!と思ったら、1日後に55勝にはやくも更新!
[ 2018-03 -26 11:08 ]

総括
* 2018年2月のスポーツ記事_平昌五輪のメダル13個(金メダル4個)!
[ 2018-03 -02 11:45 ]

# by zoompac | 2018-04-03 10:27 | スポーツ | Comments(0)

2018年3月の読書と映画の総括

読書(5冊)
* 読書「ミレニアム5 復讐の炎を吐く女(下)」
[ 2018-03 -05 12:20 ]
* 読書 ギリシア人の物語Ⅰ_遠くを見る目を持ち、制度を活用し、的確に準備を進め、サラミスの海戦でペルシア軍を破ったアテネの英雄テミストクレスが書き込まれた巻!
[ 2018-03 -09 09:47 ]
* 読書 「翔ぶが如く六巻」 司馬遼太郎_西南の役の前哨戦となった神風連の乱での鎮台兵の弱さが、後の西郷軍の判断を狂わせた!
[ 2018-03 -19 12:05 ]
* 読書 「0から学ぶ「日本史」講義 古代史篇 出口治明_知識の整理に役立つ本でした!
[ 2018-03 -23 10:26 ]
* 読書 「オリジン 上」 ダン・ブラウン_科学と宗教の対決の行方を占う相変わらずの蘊蓄満載の観光案内小説スペイン版!
[ 2018-03 -27 10:53 ]

最近の海外小説は、リスベット・サランデルシリーズのミレニアム4でAIが、ミレニアム5で遺伝子が、ダン・ブラウンのラングドンシリーズでAIと「宗教と科学」がテーマになっています。AI、遺伝学、宗教、科学等がテーマにされることが多くなったいるようです。

出口治明氏の「0から学ぶ「日本史」講義 古代史篇 は、あまり期待していなかったのですが目からウロコの掘り出しものでした。前半の地球誕生からの話にはびっくりしました。サピエンス全史も是非読んでみたいという気にさせてもらいました。歴史にはいろいろな切り口があるってことを気づかせてくれた良書でした。

塩野七生氏の「ギリシア人の物語Ⅰ」も大変興味深く読まさせていただきました。塩野七生氏の最後の労作(と本人がおっしゃっていました)に、読者の1人として出会えたことがまことに幸せです。

映画(10本)
* 映画「グレイテスト・ショーマン」_伝説の興行主P.T.バーナムの半生を描いたミュージカル映画!
[ 2018-03 -06 11:06 ]
* 映画「ミッドナイトバス」_トンネルを行き来する長距離バス運転手の生活のバランスが大きく傾く物語!
[ 2018-03 -07 09:10 ]
* シェイプ・オブ・ウォーター_刮目に値するサリー・ホーキンスの演技!
[ 2018-03 -08 13:37 ]
* 映画「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」_楽園のイメージが覆されるほど過酷なゴーギャンの顛末でした!
[ 2018-03 -13 08:50 ]
* 映画「ゴッホ 最期の手紙」_実写から始めて動く油絵へとアニメーション化した世にも珍しき映画作品!
[ 2018-03 -14 08:28 ]
* 映画「空海 Ku-Kai 美しき王妃の謎」_1200年前の長安の化け猫騒動 楊貴妃の死の謎に迫る空海と白楽天の妖魔界探偵コンビ!」
[ 2018-03 -15 12:31 ]
* 映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」_多くを求めない妻モードと不器用な夫が育てた夫婦愛が絵画作品の暖かさに象徴されていました。
[ 2018-03 -16 09:43 ]
* 映画「北の桜守」_樺太から引き揚げ苦労して息子を育て上げた母の物語
[ 2018-03 -22 10:14 ]
* 映画 300(スリーハンドレッド)_ギリシア、テルモピューレの地で20万のペルシア軍を迎え撃ったレオニダス王と300人のスパルタ戦士の物語
[ 2018-03 -28 12:39 ]
* 映画 「ボーダーライン」_主役のエミリー・ブラントの演技に括目!
[ 2018-03 -29 07:47 ]

サリー・ホーキンス主演の「シェイプ・オブ・ウォーター」と「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」の2本を観ました。アカデミー作品賞、監督賞に輝いた「シェイプ・オブ・ウォーター」より私はカナダの女流フォークアートの人気画家の半生を描いた「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」の方が印象に残りました。フェリーニの「道」を彷彿させる味わい深い作品だったと思いますし、サリー・ホーキンスとイーサン・ホークの演技がよかったです。

「シェイプ・オブ・ウォーター」は「グレイテスト・ショーマン」と同様、少数派としての存在には少数派なりの居場所があるって切り口から同じテーマを扱った作品だと思いました。多様性の中の小さな主張が丁寧に掬い取られるのも最近の映画の潮流のようです。大国のごり押しが脅威を増している風潮に対する反動かもしれません。

総括
* 2018年2月の読書と映画の総括
[ 2018-03 -01 12:09 ]

# by zoompac | 2018-04-02 13:08 | Comments(0)

映画 「ボーダーライン」_主役のエミリー・ブラントの演技に括目!

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2006年の「プラダを着た悪魔2」でアン・ハサウエイ演じる新入りの先輩秘書役や2011年の「砂漠でサーモン・フィッシング」の主役のエミリー・ブラントもよかったけれど、この2015年の「ボーダーライン」でFBI捜査官役を演じている彼女は素晴らしかったです。ベニチオ・デル・トロとの掛け合いの見事な演技のおかげで、「ボーダーライン」が緊張感溢れる引き締まった映画になっていました。

米国とメキシコの国境沿いから麻薬王を追跡する殺し屋(映画の邦題「ボーダーライン」の原題の「Sicario」とはスペイン語で「殺し屋」という意味です)を主要メンバーに加えたCIAを中心としたとんでもない目的をもったメキシコ内への潜入捜査に、エミリー・ブラント演じるFBI捜査官のケイトが巻き込まれていくお話でした。

メキシコのある町の無法ぶりは、そのモデルとされた市の市長からこの映画にクレームがついたほどおぞましいものでした。

それにしてもベニチオ・デル・トロの存在感もすごいです。これにジョシュ・ブローリンが加わっているのです。中年のワルと渋みの極みって二人の間で、エミリー・ブラントの恐怖に打ち震える正義感発揮ぶりがいやはや参ってしまうほどによかったです。

久しぶりにいい映画を観させてもらいました。

と、エミリー・ブラントを持ち上げたところで、いいニュースと悪いニュースです。

いいニュースは、この映画「ボーダー・ライン」はシリーズ化される予定です。

今年6月米国で第二作目の「ソルダード(原題) / Soldado」が公開予定です。

悪いニュースは、ベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンの渋オヤジコンビは健在なのですが、キャスティングの中にエミリー・ブラントの名がなかったことです。

とりあえず、第三作までシーリーズとして計画されているようです。エミリー・ブラントのいない「ボーダー・ライン」なんてと思いつつも、あのベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンの渋オヤジコンビの出演する映画はやはり外せないな~んて!

# by zoompac | 2018-03-29 07:47 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画 300(スリーハンドレッド)_ギリシア、テルモピューレの地で20万のペルシア軍を迎え撃ったレオニダス王と300人のスパルタ戦士の物語

f0090954_12354563.jpg塩野七生の「ギリシア人の物語 Ⅰ」を読んでいるとき、これぞスパルタ人という「テルモピューレでのレオニダス(王)と300人の戦士」の記述に出くわしました。

彼女が「映画でのレオニダスは若すぎ」と語っていたのが気になって早速、Tsutaya DiscasでDVDを取り寄せて観てみました。それがこの映画「300(スリーハンドレッド)」です。

紀元前480年のギリシアの地にペルシアが遠征してきたときの戦争ですから、今から2500年前のお話です。今でも「300」で通じてしまうってすごいですね。

テルモピュレーで「王たちの王」と呼ばれた39歳のペルシア王「クセルクセス」が率いるペルシア軍20万を迎え撃つのは60歳(だから塩野七生氏は映画のジェラルド・バトラー演じるレオニダスが若すぎると言ったのです)のスパルタ王レオニダスとスパルタ式に幼少の頃から戦闘のプロとして鍛え上げられた兵士300人でした。

このレオニダスが率いる300人は、映画でも紹介されていましたが、いずれも息子がいる父親でした。たとえ戦場で死んでも家系断絶の心配のない兵士だけ選ばれたのです。スパルタでは戦士たるもの、少年の頃から、敵に背を見せるなという一事を叩きこまれて育っています。彼らにとっての戦闘は、勝つか、それとも死かという二択しかなかったのです。

テルモピュレーはテッサリア地方を南下してきたペルシア人にとってアッティカ地方に入ろうとする直前に立ちふさがる難所でした。二つの崖に挟まれた曲がりくねった細い幅の道なのです。

ペルシア王は大軍勢による示威風を吹かせながら、「武器を差し出せば、各自の国への自由な帰国を許す」と勧告します。それに対するレオニダスの応えはたった一言でした。「モンラペ(【武器が欲しければ】取りに来たらよかろう)」。ちなみにこの「モンラペ」という言葉は、後世、スパルタの戦士を代表するような一句になったと塩野女史が言っていました。

結局、スパルタ兵は伝令のため戦線離脱の1人を除いて玉砕してしまいました。

しかし、ペルシア王としては、「ひとつかみの小麦」と揶揄していたギリシア人から経験したことのない屈辱を受けたのです。従えてきたペルシア軍の1割が戦死し、王の近衛軍団で「不死身の男たち」と呼ばれた精鋭たちの多くも殺され、王の弟二人までもがテルモピュレーの戦いで命を落とし、この地を突破するのに1週間もかかってしまいました。

ペルシアの脅威が去った後、テルモピュレーの地には次の詩を刻んだ記念碑が建てられたそうです。「異国の人々よ、ラケダイモン(スパルタ)の人々に伝えられよ。祖国の愛に殉じたわれらは皆この地に眠ることを」

レオニダス軍団の奮戦模様は、是非DVD映画で観てください。できるなら観る前に塩野七生の「ギリシア人の物語 Ⅰ」を読まれたら映画だけではわからない背景知識が得られ一層興味がわくと思います。

映画では腹筋が板チョコのように割れた兵士が集結しています。まだ若いマイケル・ファスベンダーも兵士の1人として出演しています。これが彼の映画初出演かも?

この軍団の腹筋もお見逃しなく! 塩野氏のギリシア人の物語では息子がいる父親軍団のはずが、この映画ではイケメン若者軍団になっていました。史実に比べ若かったのは塩野女史が指摘したレオニダスただ1人ではありませんでした。ちなみにこの映画は2007年の作です。

# by zoompac | 2018-03-28 12:39 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「オリジン 上」 ダン・ブラウン_科学と宗教の対決の行方を占う相変わらずの蘊蓄満載の観光案内小説スペイン版!

f0090954_10500543.jpgダン・ブラウンが『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』『ロスト・シンボル』『インフェルノ』に続いて、宗教象徴学者ロバート・ラングドン(映画ではトム・ハンクスが演じています)を主人公に描く長篇推理小説「ラングドンシリーズ」の5作目となるのが本作『オリジン』です。

上巻を読んだ限りの私の感想ですが、大変興味深い内容です。宗教と科学の対立の歴史も語られており「サピエンス全史」を読んでいるような気分にもなります。(余談ながら、出口治明氏の「0から学ぶ日本史講義」の第1章の日本人の起源の内容も出口版サピエンス史というユニークな内容が語られています。人類の進化がどのようにして始まったのかにまで掘り下げた日本史です。)

神が人間を創造したのか、海から這い出した生物が人間へ進化したのか、そして今遺伝子操作まで可能となった人間の未来は・・・・?

エドモンド・カーシュというスティーブ・ジョブスを彷彿させるコンピュータ科学者・未来学者が登場します。コンピューター科学の方面に進んで輝かしい才能を発揮し、〝預言者〟の異名をとるまでになった男という設定です。

今作のテーマは、人類にとって最も根源的なふたつの問い「われわれはどこから来たのか。そして、どこへ行くのか」。という人類の抱える「人類の起源」と「人類の運命」の謎に、人工知能「ウィンストン」の助けを借りながらラングドンが迫るのです。これ以上のスケールのミステリーはないですよね。

それにラングドンシリーズでお約束の追いつ追われつの観光名所巡りも今回は豪華スペインシリーズです。スペインのビルバオ、マドリード、セビリア、バルセロナを舞台に、ラングドンの前に最強の敵が立ちはだかるという具合です。

鍵を握るのは、ラングドンの元教え子のエドモンド・カーシュが主催するイベントでプレゼンテーションする予定だった「われわれはどこから来たのか、どこへ行くのか」の答えです。宗教象徴学者ロバート・ラングドンは、そのプレゼンの会場であるスペインのバスク地方ビスカヤ県の県都ビルバオにあるグッゲンハイム美術館を訪れていました。

美術館内では招待客ひとりひとりにガイドがつき、音声で案内してくれた。ラングドンのガイドは「ウィンストン」(物語の途中でこのAIは「ウィンストン・チャーチル」の名前にちなんだ命名であることが分かります。豊富な蓄積データを武器にクイズ番組などに登場したIBMが誇る拡張知能「ワトソン」を彷彿させます。ラングドン探偵の助手はワトソンではなくウィンストンです。)と名乗るカーシュが作り出した人工知能であり、ほかの招待客のガイドも一手に担当していました(驚きの個別対応です)。

カーシュはそのプレゼンの最重要部分(人類にとって最も根源的なふたつの問いに答えるものであり宗教を根底から揺るがすもの)を語り始めようとするまさにそのとき暗殺されてしまいます。カーシュの前口上は次の通りでした。

「宗教の時代は終わりを告げ、科学の時代が幕をあげようとしています。」「そして、今夜、人類はその未来に向けて大きく前進することになります。」

その模様は世界じゅうに配信されており、視聴者の数は二百万を超えてなお増えつづけていたのです。カーシュ本人がスポットライトを浴びて登場し、招待客は総立ちで拍手喝采を送り、ラングドンもそれに加わっていましたた。その刹那です。銃声がドーム内に響き渡り、カーシュは額を撃ち抜かれて絶命しました。

目の前で友人を殺されたラングドンは深い悲しみと怒りを覚え、犯人を見つけ出してカーシュの発見を自分が代わりに世界に伝えたいと決意するのです。

そんなラングドンに美術館館長のアンブラが協力を申し出ます。アンブラは美貌の女性で、カーシュのイベントの準備をずっと手伝っていました。彼女によるとカーシュのプレゼンテーション映像にアクセスするには、カーシュのスマートフォンに四十七文字(誰かの詩の冒頭箇所)のパスワードを打ちこむ必要がありました。

カーシュ暗殺は、宗教界によるものか? もしくは、スペイン王宮が関わっているのか? そうした、誰も信用できない中で、ラングドンとアンブラは逃亡しながら、人工知能ウィンストンの助けを借りてカーシュの残した謎に迫ることになるというところで上巻が終わっていました。

上巻の最後にラングドンとアンブラがたどり着いたのは、バルセロナのアントニ・ガウディのカサ・ミラの最上階のガウディ美術館です。美術館休館の2年間限定でカーシュが借り入れていたという設定になっていました。相変わらずの宗教・美術に加えて今回は先端科学の蘊蓄テンコ盛りとなっています。

付け足しになりますが、グッゲンハイム美術館の館長アンブラはスペイン国王太子と婚約中です。彼女はバスク出身の無神論者です。バスク地方と言えばフランシスコ・フランコがナチス・ドイツやイタリアに依頼して攻撃してもらったゲルニカ(ピカソの絵でも)や反フランコ運動で有名です。

上巻の途中で明らかになりますがカーシュの暗殺者の手のひらにはフランコの紋章が刷り込まれていることが判明します。VICTORYの文字を重ね合わせた図案です。フランコは国粋主義者、独裁主義者として有名でしたがカトリック至上主義者でもありました。ということで、どうやらラングドン達の前に立ちふさがるのは、スペイン政府やカトリック教会の上層部に今だ潜んでいるフランコ主義者の一派のようです。

ナチスの鉤十字を彷彿させるVICTORの紋章の登場に思わず身震いしながら、下巻での展開を楽しみに読んでいきたいと思います。 

# by zoompac | 2018-03-27 10:53 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)
RELEASE INFORMATION NEW ALBUM

[通常盤]「Now On Sale!!」
TOCP-66380/¥2,548(税込)

[DVD付 初回生産限定盤]
「Now On Sale!!」
TOCP-66381/¥3,500(税込)

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WMP HIGH LOW
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