師走の富士山麓の7区間43.4キロを駆け抜ける「富士山駅伝(全日本大学女子選抜駅伝)」は30日日曜日に22チームの参加で行われました。
10月28日の第36回全日本大学女子駅伝をを連覇した名城大か、その名城大に34秒差で敗れて2位となった大東文化大か、それとも富士山女子駅伝5連覇中の立命館大の三強巴戦が予想されました。
結果は、名城大が2時間23分46秒の大会新記録で初優勝を飾り、全日本と合わせて2冠を達成しました。4区の4年松浦佳南が区間賞で走ると、5区のエース区間で去年大東文化大の3年関谷夏季の後塵を拝した2年加世田梨花が関谷と同タイムながら区間賞、そして6区の4年玉城かんなも区間賞でした。
アンカー区間の7区で鈴木がタスキを受け取ったとき、1年高松智美ムセンビは区間新の走りだったのですが、区間2位での優勝テープでした。区間新記録で区間賞の走りをしたのは大東文化大1年の鈴木優花でした。
6区からアンカー区間7区へタスキが渡ったとき、トップを走る名城大と2位の立命大との差は1分45秒まで開いていました。さらに3位の大東大までは2分11秒の差がありました。
山上りの最終7区(8.3キロ)で、名城大1年の高松智美ムセンビ、立命館大3年眞部亜樹と大東大1年鈴木優花の対決が始まりました。
単独走でたんたんと走る高松に対して、鈴木は2㎞手前で早くも昨年女王の立命大でアンカーとして区間新の区間賞の走りで後続を引き離し優勝テープを切った眞部を躱しました。(写真左が追いついた大東大の鈴木、右が追いつかれた立命大の眞部)
後半の急こう配の登りを考えると無謀な突っ込みとも思えましたが、鈴木の勢いは最後まで落ちませんでした。解説をしていた金哲彦氏もただただ感嘆していました。
大東文化大の1年鈴木優花の区間新は去年立命大の眞部亜樹が樹立した記録を1分以上上回る驚愕の走りでした。区間新を出した高松智美ムセンビより42秒も速い区間新だったのです。
鈴木はトップの名城大高松には1分半の差で逃げ切られてしまいましたが、2位で26秒先行していた眞部には逆に29秒の差をつける圧巻の走りでした。
あくまで私のイメージですが、彼女の力強い脚の運びは、箱根駅伝5区の山の神の柏原竜二というよりも、今年のニューイヤー6位ながら個人種目に特化した練習のため駅伝から撤退したDeNAの上野裕一郎に似ていると思いました。
鈴木は1年生ながら2018年の6月の日本学生個人選手権の5000mで5月の関東学生対校選手権で出した16分13秒29の自己ベストを大幅に上回る15分46秒84という大会新記録で優勝した逸材です。秋田大曲高校では無名の選手でしたが、大東文化大に入って急成長しました。
10月の全日本大学女子駅伝も2区を区間新に9秒に迫る記録の区間賞で12人抜きという鮮烈なデビューに輝きました。
この富士山駅伝でも、突っ込んで入って、中盤粘って、ラストはさらにペースアップという、見事な走りでした。鈴木の後半のペースアップの走りが、私にとっては上野裕一郎の「ケンカ走法」の姿に重なって見えました。
大東大3年エースの関谷夏希もこの1年生エース鈴木優花も駅伝ロード向きですね。そのケンカ走法から鬼気迫る闘争心が見えます。
惜しくも今年はというか今年も2位の大東文化大ですが、他校にとって脅威となる山の女神降臨という感じの鮮烈な走りを鈴木優花が見せてくれました。