柔道男子100キロ超級の新星として、注目を浴びた22歳で明治大4年の小川雄勢でしたが、世界柔道選手権@バクー、アゼルバイジャンでは、なんとも気の毒な反則負け(立技からの危険視された関節技)を喫してしまいました。
相手方の選手が下手で小川の技から逃れようとして自ら関節技が決まってしまう方向に逃れた結果だったように見えたのですが、小に川はなんともほろ苦い世界選手権のデビューとなってしまいました。
2人目の代表の座を、6月の全日本を制することで勝ち得た原沢久喜(JRA)はなんとか面目躍如の銅メダルをもぎ取りましたが、絶対王者リネール不在のこの大会では、金メダルを確保して東京五輪代表の最有力候補に名乗りを上げるまでには至りませんでした。
階級トップの座を巡って、原沢と共に26歳でベテランの王子谷剛志(旭化成)や、世界柔道無冠の汚名挽回を図る小川雄勢との三つ巴が続きそうです。次なる戦いは11月23日~25日の柔道グランドスラム大阪です。来年の東京で開催される世界選手権の代表選考にあたって重要な大会となります。
東京五輪に間に合うかどうか微妙ですが、この階級の代表争いに参戦してきそうなさらなる若手が現れました。
それは、1984年ロサンゼルス、88年ソウル五輪95キロ超級金メダリストで2015年に54歳で死去した父の斎藤仁(ひとし)氏の次男で国士舘高校2年の斎藤立(たつる)です。
今年の春の全国選手権と金鷲旗高校柔道大会で、国士舘高校の団体戦2冠達成に大きく貢献しています。インターハイの団体戦では、金鷲旗の大将戦で破った天理の中野寛太(3年)に、決勝の代表選で敗れ三冠を逃しての準優勝でした。
インターハイの100㎏超級の個人戦では、その中野を3回戦で破って優勝しています。
また、9月9日に行われた全日本ジュニアでも、100kg超級の斉藤は大学生選手相手に3戦連続の一本勝ちで勝ち上がり、決勝でライバル中野寛太(天理高2年)と対戦し、左内股で「技有」を奪って優勝を決めました。
1年生でシニア大会デビューとなった昨年の講道館杯では3回戦敗退でしたが、今年の11月3日の講道館杯では虎視眈々と優勝を狙っています。
その講道館杯優勝をひっさげて、11月23日の柔道グランドスラム大阪では、小川、原沢、王子谷の3強で埋まった代表の座の4人目の枠に喰い込み、外国人選手も交えた激戦を制しあわよくば優勝したいと強く思っているようです。
講道館杯で好成績を上げることが、冬季ヨーロッパ国際大会の出場メンバーが選出・決定されることから、若手が世界に羽ばたく登竜門とされているのが講道館杯で、例年、世代交代の萌芽が興味深く観ることができます。
去年は小川雄勢が講道館杯で優勝するや、グランドスラム東京も制し、今年の体重別でも優勝で、あたかも彗星のごとく現れ、世界選手権(9月20日~27日@アゼルバイジャン・バクー)の代表の座に一番乗りを果たしました。
遅れて日本選手権を制した原沢も2人目の枠に入りましたが、王子谷は落選でアジア大会@ジャカルタに回りました。(アジア選手権で反則負けとなった王子谷は結果を残せていません。)
女子52㎏級の阿部詩も去年の講道館杯で優勝し、続く12月のグランドスラム東京、明けて2月のグランドスラムパリで優勝し、4月の選抜体重別で苦手の角田夏実に敗れましたが、世界選手権@バクーの代表の座の1番手に選ばれました。(その世界選手権では鮮烈の金メダルデビューとなりましたので、11月後半のグランドスラム大阪を制すれば、阿部はいち早く2019年の世界選手権@東京の代表に選ばれる可能性があります。)
斎藤立が、去年の小川雄勢や阿部詩と同じような2匹目の泥鰌となるかどうかに注目ですね。2年後の東京五輪に向けて代表資格を大きくアピールできる来年の柔道世界選手権の代表の座を得るための第1歩がこの講道館杯です。
新手の有望株の活躍に期待したいです。
バルセロナオリンピック95kg超級銀メダリストで元世界チャンピオンの小川直也を父に持つ小川雄勢とロスとソウルの五輪連覇の斎藤仁の次男の斎藤立のサラブレッド対決が早ければグランドスラム大阪でみられるかもしれません。楽しみです。
この若手二人に、学生時代からのライバルの原沢と王子谷のベテラン二人がどう立ちはだかるのかにも大いに興味を掻き立てられます。