
ニューヨークブルックリンを舞台として27歳の見習いダンサーフランシスの生活の断片を紡いだ「フランシス・ハ」で脚本と主演女優を手掛けたのグレタ・ガーウィグが、今度は監督デビュー作として自身の出身地でもある米カリフォルニア州サクラメントを舞台に、自伝的要素を盛り込みながら描いた青春映画でした。
時代はまだ携帯電話が普及していない2002年のカリフォルニア州のサクラメントです。閉塞感漂う片田舎の町でカトリック系の女子高に通い、親からもらった名前を潔しとせず自らを「レディ・バード(Lady Bird)」と呼ぶ17歳のクリスティンが、高校生活最後の年を迎え、友人やボーイフレンド、家族、そして自分の将来について悩み、揺れ動く様子を、みずみずしくユーモアたっぷりに描いた映画でした。
主人公クリスティンを「ブルックリン」「つぐない」でアカデミー賞候補にもなった若手実力派のシアーシャ・ローナン(この作品でゴールデン・グローブ賞の主演女優賞獲得とアカデミー賞主演女優賞ノミネート)、娘の将来を案じる母親マリオン役をテレビや舞台で活躍するベテラン女優のローリー・メトカーフ(アカデミー賞助演女優賞ノミネート)が演じていました。
さらに、レディ・バードの2人の恋人役に若手注目株のルーカス・ヘッジズ(「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でアカデミー賞助演男優賞ノミネート、「スリー・ビルボード」にも立て看板のレンタル屋さんの若社長で出演)とティモシー・シャラメ(「君の名で僕を呼んで」で主演男優賞ノミネート)を配したのはさすがの若手?(35歳)の女性監督といったところでしょうか。(第90回アカデミー賞の主演、助演女優賞に加え、作品賞、脚本賞、8年ぶり史上5人目の女性の監督賞等5部門にノミネートされました。)
2017年9月の封切り以来、口コミで話題になり、全米4館から1557館まで拡大公開され5週連続トップテン入りを果たしたシンデレラ作品です。
観方にもよりますが、クリスティンの父(トレイシー・レッツ)から言わせれば、頑固一徹の似たもの母娘なのです。ニューヨークに憧れ、外に向けて羽ばたきたい高校最終学年の娘と、それを身の程知らずの蛮行と心配して娘を宥める母との間に口論が尽きません。親離れしたがる娘と心配する母の母娘物語としての一面も強く印象に残りました。
親からもらった名前を捨ててまで、自分をレデイ・バードと呼び、人にもその名で紹介して悦に入っているちょっとイタイ感じのクリスティンでしたが、この「レディ・バード」というのはマザーグースに「レディバード、レディバード、お家へ飛んで帰りましょ」という一節からヒントを得たようです。
といっても、ここでいうレディバードはむしろ母親が子供たちを心配して無事を確かめるため家に帰るという内容なので、家から飛び立ちたいクリスティンとは無関係のネーミングでした。たぶん、クリスティンの幼児期のお気に入りの物語だったのかもしれませんね。
高校生生活の中にも、アメリカ社会の縮図ともいえる貧富、宗教、民族(差別)の問題があって、スクールカーストの複雑さを垣間見ることもできました。 思春期の苛立ちも丁寧に描かれていました。