冒頭の史枝の自転車で風を切って走るさわやかな導入シーンから、この映画の主役は夏川結衣なんだと意識させてもらった映画でした。
第1作で熟年離婚、第2作で無縁社会をテーマとして扱ってその家庭問題の元凶は橋爪功が演じる平田周造でした。
この第3作での問題を起こすのは、平田家長男幸之助(西村まさ彦)と嫁の史枝(夏川結衣)です。幸之助の居丈だけな言葉に三世代同居の専業主婦の史枝が家出してしまうのです。
ある日、史枝が二階で掃除の途中ついウトウトしていた隙に空き巣に入られコツコツ貯めていたへそくりを盗まれてしまう事件が起きます。
仕事から戻ってきた幸之助に、身の無事を心配されるでもなく、「俺があくせく働いているのにお前は昼寝とはいい身分だ」とか「俺の稼いだ金でへそくりをしていたのか」とか身もふたもない暴言を投げつけられました。あまりの心ない言葉に情けなくなるやらやりきれない気持ちが抑えられずに史枝は家を飛び出してしまいました。
今まで平田家の家事一切を支え、獅子奮迅の働きをしていた心棒のような史枝が抜けたから、平田家は大変なことになってしまいます。富子(吉行和子)もぎっくり腰になってしまい、掃除、洗濯、朝昼晩の食事の準備などを周造や幸之助等の男だけでやらなくてはならなくなりボヤ騒ぎを起こすなど大混乱となります。
結局、弟庄太(妻夫木聡)に説得されて、幸之助が史枝を迎えに行って、一件落着となるのですが、働き方改革が問題になる中で主婦の家事労働に光をあてたユニークな切り口のドラマに仕上がっていました。
この映画を観た後の主婦たちが、「Me Too!」とこれまで腹にしまっていた不満を爆発させる・・・そんな共感を日本社会に呼ぶ映画かもしれません。 つらい家族の問題を支えてくれる妻への感謝はきちんと言葉や態度で示さなければならないですね。
中嶋朋子、林家正蔵、蒼井優、風吹ジュン、徳永ゆうきら、シリーズおなじみのメンバーも顔を揃えていました。それに第2作で周造の行き倒れになって亡くなった友を演じた小林稔二が周造の友達で医者という役で出演していました。