体重無差別で争う柔道の全日本選手権は29日、東京・日本武道館で世界選手権(9月・バクー、アゼルバイジャン)男子100キロ超級の代表最終選考会を兼ねて行われ、2016年リオデジャネイロ五輪男子100キロ超級銀メダリストで25歳の原沢久喜(日本中央競馬会)が、決勝で3連覇を狙った王子谷剛志(旭化成)に延長の末に反則勝ちし、3年ぶり2度目の優勝を果たしました。
優勝の瞬間の原沢の涙が、リオ五輪後の体調不良から結果が出せなかった時期の苦しさを物語っていました。試合当日も決して本調子ではなかったようです。延長戦にもつれ込む接戦を我慢を制しながら勝ち上がってのライバル対決での決着に思わずこぼれた涙でした。歓喜の涙といった趣はなく、ここまで復活できたという感慨から出た涙だったと思います。
原沢対王子谷の同年代同士の学生時代からのライバル対決となった決勝は9分16秒に及ぶ技の打ち合いの大熱戦でした。技による決着を見たかったのですが、両選手とも疲労困憊の状況でした。原沢も試合後に体力は使い果たしていたが気持ちだけで闘ったと述べていました。前に出る気迫の攻撃を続け、王子谷から指導を3つ引き出し決着しました。 王子谷は試合後、最後は脱水状態に陥ってしまったと語っていました。それほどの激戦でした。
世界選手権代表には2年連続の原沢に続き、3位に入った21歳の小川雄勢(明大)が初めて選ばれました。もう1つの枠は60㎏級の永山竜樹でした。王子谷はアジア選手権@ジャカルタの100㎏級超級の代表に選出されました。
12年覇者で32歳の寝業師・加藤博剛(千葉県警)も3位と大健闘でした。準決勝、延長戦で原沢の内股を喰らって破れましたが、決着がついた後、加藤も原沢も精根尽きて立ち上がれず、審判から立つように促されていたシーンも印象的でした。
昨年まで3年連続4強入りの七戸龍(九州電力)は準々決勝で原沢に敗れ、今回は5位でした。
全国10ブロックの予選を勝ち抜いた精鋭43名(推薦選手3名を含む)が参加した今大会では初出場者が25人でした。武道館の畳に辿り着いたベテランに伸び盛りの若手とそれぞれが思い切った試合を繰り広げ、素晴らしい投げ技が続出した大会でした。
その演出に一役買ったのが、昨年世界王者で推薦枠から出場した60キロ級の高藤直寿、73キロ級の橋本壮市(ともにパーク24)の参戦でした。二人とも初戦の2回戦で敗退しましたが、その意気や良しでした。
現役高校生2人の挑戦も注目されました。
昨夏のインターハイ90kg級の覇者・村尾三四郎(桐蔭学園高3年)は1回戦から登場。近藤拓也(北信越・嶺南東特別支援学校教)戦を「指導3」の反則で下して見事全日本選手権初勝利を果たしましたが、続く2回戦は昨年高校カテゴリで激戦を繰り広げた100kg級の山口貴也(九州・日本大1年)に払腰「一本」で屈しました。
3月の全国高校選手権個人無差別を圧勝で制した中野寛太(天理高3年)はこれも伸び盛りの山下魁輝(国士舘大2年)と出色の技の打ちあいを展開しました。総試合時間9分を越える大接戦の末寝技で屈してこちらは初勝利には手が届きませんでした。
今大会から試合時間を4分に短縮し、「有効」を残す以外は国際柔道連盟(IJF)のルールに沿って行われました。