「ラ・ラ・ランド」の才能溢れる音楽家チームと「レ・ミゼラブル」でも華麗な歌声を披露したヒュー・ジャックマンがタッグを組んで、19世紀半ばのアメリカでショービジネスの原点を築いた伝説のプロデューサーP.T.バーナム(ヒュー・ジャックマン)の半生を描いた壮大なオリジナル・ミュージカル映画でした。
妻への一途な愛を糧に夢を追いかけ、異常体質がゆえに差別や偏見の中で立ち尽くしていた役者たちにエンタテイナーとしてスポットライトの当たる場所を提供し、エポックメイキングなショーを創造したことで知られるバーナムのサクセスストーリーを全9曲のミュージカルナンバーで彩ってくれました。
特に、主題歌の「This is me」は心揺さぶられました。外見や地位に関係なく自分らしく生きようとする様々な個性が前向きな気持ちで物事に向き合う応援歌として聞きました。
髭のないキアラ・セトルが、2018年第90回のアカデミー賞授賞式の会場でも歌ってくれました。多様性共存の社会に対する排他的言動と行動が目に余るトランプ大統領に聞かせてあげたいメッセージがこもった歌でした。
バーナムの妻チャリティを「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(私は彼女の「マリリン七日間の恋」が印象深かったですけどね。)のミシェル・ウィリアムズが演じていました。
バーナムを「人生において夢を見る喜び」の体現者とすれば、妻のチャリティは「生きていくうえで足るを知る」の具現者と捉えることができます。相反する方向性ではありますが、民衆に夢を見せてくれ、パーホーマーにエンタテイナーとして輝く場所を提供してくれる、奇跡的なショーのプロデューサーとして世界に向かっての活動が結局家族愛という狭い壺の中に取り込まれる筋立てというか落としところがやや残念でした。華麗なミュージカルによる気分の高揚と発散というスカートの裾を夫婦愛のワッカが踏んでいたような感じがしました。
二律背反の二者択一テーマ-にせず、妻や二人の子供も、パーフォーマー達も大きな意味での家族としてウィンウィンして共に大きく羽ばたくって簡単な筋にまとめてもらったほうがもっと安心して楽しめた映画だったと思います。
貧しい家に生まれ育ったバーナムと名家の令嬢チャリティのの関係の対極に描かれていたのがバーナムのビジネスパートナーのフィリップ・カーライル(ザック・エフロン)と空中ブランコパーフォーマーのアン・ウィラー(ゼンディア)でした。
身分の違いゆえの秘めやかな恋を自由に発散できる場は空中だけでした。「ヘアスプレー」のザック・エフロンと「スパイダーマンホームカミング」のゼンディアの空中ダンスとそのナンバーが最高にロマンティックでよかったです。「ララランド」のプラネタリウム内部でエマ・ストーン演じるミアが踊りながら宙を舞うシーンを彷彿させました。
良いところ残念なところを差し引きして星三つ★★★といった印象の映画でした。