2017年上半期(1月~6月) に観た38本の映画の中から私の選んだベスト3は、アカデミー賞6部門受賞作品の「ラ・ラ・ランド」、アカデミー作品賞受賞の「ムーンライト」、そして複雑なアジアの匂いを感じさせてくれた 「バンコック・ナイツ」でした。
2017年下半期(7月~12月)には39本の映画を観ましたが、私の一押し3本は「否定と肯定」、「ドリーム」、「ダンケルク」です。
世界的に独裁者の出現待望の傾向が高まっているといっては言い過ぎかもしれませんが、ドイツ、オーストリア、チェコスロバキア等で難民受け入れ拒否とか排他的な色彩が濃くなりつつある右傾化の中で、言葉の持つ暴力、詭弁が事実を捻じ曲げてしまうかのような恐ろしさを感じた映画がレイチェル・ワイズ主演の「否定と肯定」でした。
ホロコースト否定論者とユダヤ人歴史学者が法廷で争う映画でしたが、事実をないがしろにするかのような否定論者の法廷での言葉の操作に圧倒されました。
否定論者役を演じたのは名優ティモシー・スポールでしたが、彼の熱演に何故かトランプ大統領の姿が重なってみえました。 意見や立場が異なる組織が発する情報を「フェイク」と決めつけ「自分こそ正しい」とアピールする姿勢に共通点を見出したのだと思います。
同じような印象を持った映画にジェシカ・チャスティン主演の銃規制に関するロビイストの活動を描いた「女神の見えざる手」がありました。 銃規制に反対する陣営の主張も楽には退けることのできない難しさがよく描かれていたと思います。 自分のことは自分で守る(だから銃規制に反対だ)という内向きの考え方はアメリカ・ファーストに象徴される考え方でまた米国有権者の多くが支持しているという事実でもあります。 この銃規制と核抑止の問題における類似性を考えると暗鬱な気持ちにさせられます。それだけに「女神の見えざる手」のラストシーンに溜飲を下げました。
年末に観たポールニューマン主演の医療過誤を扱った法廷もの映画「評決」(1982、シドニー・ルメット監督) も裁判という(政治力や金の力で情報格差が存在するゲームといった側面もある)一種のガス抜きの手続きで真相と被害者の困難が光を当てられることなく葬り去られる恐怖を感じさせられました。 人間の良識の強さと危うさについて考えさせられました。
「ドリーム」は戦中、戦後を通じて当時のソ連との宇宙開発競争でしのぎを削っていたNASAとその前身機関で働く優秀な黒人女性の物語でした。白人男性社会のイメージが強い「アポロ計画」を支えていた黒人理系女子3人に焦点を当てその知られざる活躍が丹念に描かれていました。 食事もトイレも白人と区別された時代から、彼女たちは航空宇宙学の発展に確かに貢献し、能力があれば夢がかなうアメリカンドリームのよき時代を駆け抜けました。
宇宙飛行士の1人が彼女達の1人が計算した結果を信じ宇宙へ飛び立つ姿には震えがくるほどの感動がありました。 久々みたにケビン・コスナーの渋い演技もよかったです。
彼女たちの隠れた忍耐と努力と貢献が世界中に知ってもらえる媒体としての映画の力を素直に讃えたいと思った作品でした。
第二次世界大戦のフランス北部でドイツ軍に包囲された40万人もの英国軍とその他連合軍の撤退作戦を1週間(防波堤)、1日(海)、1時間(空)といった異なる時間帯と場所のドラマとして描き、それらを収束させて立体的にその作戦を描くことに成功した「ダンケルク」もいい映画でした。
来年3月に公開予定の無冠の名優・ゲーリー・オールドマン主演の「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」にもこのダンケルクの戦いが出てくるはずです。
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170706 DVD映画「会議は踊る」_ナポレオン失脚後のウィーン会議!
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170714 NHKBS映画「鷲は舞い降りた」_ターゲットはチャーチル英首相!
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170930 映画 「三度目の殺人」_役所広司の怪演と素晴らしい画像に圧倒された映画!
[ 2017-09 -30 06:48 ]
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