今回の世界柔道2017@ブダペストは日本代表のサッカー選手同様、世代交代の印象を強くしました。男子4個、女子3個、合計7個の金メダルのうち、初出場初優勝が5個です。
その初出場初優勝の顔ぶれは、女子48㎏級の帝京大4年の渡名喜風南(となき・ふうな、22歳)、女子52㎏級の志々目愛(了徳寺学園職、23歳)、男子66㎏級の阿部一二三(日本体育大学2年、20歳)、男子73㎏級の橋本壮市(パーク24、26歳)にこのウルフ・アロン(東海大4年、21歳)です。 ベテランの橋本壮市を除いて4人が23歳以下の新進気鋭です。というか、他の2人の金メダリストも男子60㎏級の高藤直寿が24歳、女子70㎏級の新井千鶴も23歳でした。
ウルフ・アロンは6歳の時に講道館にある春日柔道クラブで始めました。このとき同クラブの1学年上にいたのがベイカー茉秋です。彼らは共に文京区立第一中学で柔道を続け、やがて二人とも東海大浦安高校に進学します。ウルフが1年~2年時、ベイカー茉秋が2年~3年のときの2012年に高校団体戦三冠(3月、7月、8月)を達成しています。
その後は東海大に進んだベイカー茉秋の後を追って東海大に進んだウルフ・アロンは、大学生ながら、2015、16年の講道館杯を2連覇。今年4月の全日本選抜体重別選手権でも2連覇を達成し、男子100㎏級の2017年の世界選手権@ブダペストの代表の座を掴みました。
2017年のリオ五輪の男子で階級は違えど90㎏級の1年先輩のベイカー茉秋の金メダルが大きな刺激になっていることは間違いありません。
そして、奇しくも、ウルフ・アロンとこの世界選手権の決勝で対戦したのは、リオ五輪でベイカー茉秋と90㎏級の決勝を戦ったヴァルラーム・リパルテリアニ(ジョージア)でした。 体重調整をあきらめて階級を100㎏級に上げてきたみたいですね。
ウルフ・アロンは目の残像に焼き付くくらいベイカー茉秋とリパルテリアニのVTRを観ていたそうです。
リパルテリアニは内股が効きにくい相手で、リオ五輪でベイカー茉秋が仕留めた技も大内刈りでした。相手もそこはウルフ・アロンの得意技が大内刈りと知って対策はしてきていました。試合の途中仕掛けるウルフの内股が功を奏しません。逆に指導2つもらって不利な形でGSの延長戦に入りました。
延長戦に入って30秒くらいでしょうか、大内刈り警戒の相手にウルフは内股に入ります。警戒を後方への技と読んでいた相手があわてますがいったんしのぎます。そして矢継ぎ早に再度ウルフが内股に入りますが、これはフェイントでした。相手が体重を前に移して防ごうとしたところを内股から切り返した大内刈りで相手を倒し技ありで決着をつけました。
ジョージアのリパルテリアニ(28歳)は、2016年のリオ五輪90㎏級と2017年の世界柔道@ブダペストで、講道館の春日柔道クラブ出身の(お父さんが共にアメリカ人、お母さんが日本人の)日本代表の先輩・後輩に同じ技で敗れたことになります。 恐るべし大内刈り! 恐るべし春日柔道クラブ。
ちなみに、今回、審判のジャッジに泣かされて銀メダルとなった女子78㎏超級の朝比奈沙羅も20歳のベイカー茉秋やウルフ・アロン同様東海大学生です。そして彼女も春日柔道クラブ出身で、ウルフ・アロンより1年後輩でした。
2020東京五輪に向けて、春日柔道クラブ出身の逸材が揃いましたね。