柚月裕子氏の前作の「孤狼の血」の映画化が決定しました。2018年春公開予定だそうです。
役所広司と松坂桃李の広島弁の炸裂が今から楽しみです。
原作の「孤狼の血」は、警察小説×仁義なき戦いって感じの迫力ある悪徳警官小説で、2015年の第154回直木賞にノミネートされた作品です。
その彼女の「慈雨」って小説を読みました。
警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子と四国八十八ヶ所のお遍路の旅に出ます。そして42年の警察官人生を振り返る巡礼の旅の途中で神場は、幼女殺害事件の発生を知り動揺します。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った幼女殺害事件に酷似していたのです。
当時は、DNA技術が未発達な時代で、神場は逮捕された犯人の目撃情報が事件解決後に出てきたことで冤罪を疑いましたが、警察組織の論理によって再捜査を拒まれ、その命に不本意ながら従ったのです。
お遍路の旅を続けながら、かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、深い傷と悔恨を残した過去と向き合い始め、新たに起こった事件と16年前の事件は同一犯によるものではないかと疑い始めるのです・・・
なかなか上手い着想の小説でした。お遍路の先の宿や地元の人たちの親切、お寺の特徴やお土産物を描きながら、フラッシュバックで過去の事件、彼と彼の妻と娘の訳あり過去の出来事等が明らかにされていきます。
秀逸な作品で、映画化やドラマ化されやすい筋立てだと思います。ただ前作の「孤狼の血」の迫力に慣らされた読者としてはちょいと物足りなさを感じました。パイコーだんだん大辛から中辛に格下げしたかのような刺激度低下という意味合いで。
それにしても柚月裕子さんは美人作家さんですね。そのまま映画出演できるんじゃないですか。
経歴には、「岩手県出身、山形県在住。本好きの両親の影響で、子供の頃より読書に親しむ。中学1年生の時に「シャーロック・ホームズ」を全て読み尽くし、複数の出版社の翻訳を読み比べて、ニュアンスの違いを味わう。21歳で結婚。子育てに専念する日々を経て、山形市で毎月開かれている「小説家(ライター)になろう講座」に通い始める。」とありました。
「小説家(ライター)になろう講座」の講師が志水辰夫氏だってことにも驚きでした。山形って小説家に向いた環境なのでしょうか。藤沢周平、井上ひさし、飯嶋和一、佐藤賢一、小川糸、長岡弘樹、奥泉光、丸谷才一等々、私の好きな作家さんの多くが山形出身です。漫画家のラズウェル細木もそうですね。