柔道GS東京2016の女子63㎏級にはリオ五輪金メダリスト・トルステニャクが参戦し、リオ五輪代表の田代未来が欠場の中、その五輪代表後継者の座をを3人の女子大生が狙うことになりました。
講道館杯連覇の能智亜衣美(筑波大3年)は「自分が強ければライバルは関係ない」、'12グランドスラム東京を高校2年生で制した津金恵(筑波大3年)は「もう一度頂点に立ちたい」と言い、'14世界ジュニアを制し早くから注目された嶺井美穂(桐蔭横浜大学1年) も初のグランドスラム制覇を狙うという塩梅です。
そのリオ五輪女王トルステニャクのいるブロックに放りこまれたのは2014年、2015年の同大会では初戦敗退だった嶺井美穂でした。
女子63キロ級のホープとして、嶺井美穂は、神奈川・桐蔭学園高時代から注目されていましたが、今年1年はケガに泣きました。「右肩二頭筋腱(けん)損傷」で1月に手術。1カ月間入院し、トレーニングを再開したのは4月でした。 畳に復帰して乱取りを始めたのは9月で、11月の講道館杯を復帰戦としていました。 決勝で能智亜衣美に指導1の差で敗れ2位でしたが、好成績で12月の柔道グランドスラム東京への代表4人の1人に選ばれました。
柔道GS東京での嶺井は、初戦でクルサコワ(オーストラリア)に一本勝ち(内股)し、2回戦でもトレンブレイ(カナダ)に一本勝ち(上四方固)で駒を進め、調子を上げた、続く準々決勝で、リオデジャネイロ五輪の金メダリスト・トルステニャク(ソロベニア)を迎え撃つことになったのです。試合開始からトップスピードで女王をぐらつかせる等果敢な攻めで遂に有効(大内刈)を奪い、その後ブルドーザーのような馬力で繰り出す五輪女王の怒涛の攻めを見事に躱して逃げ切り勝利するという快挙を成し遂げました。
その後の準決勝では、津金を破って上がってきたピノ(フランス)に苦戦するも、延長戦GS(ゴールデン・スコア)の末、得意の大外刈り返しで有効をとって勝利を収めました。ピノの飛びつき大外刈りは強烈で嶺井危うしという体制から体をひねって逆に大外返しを喰らわしたのです。この体幹の強さには驚きました。
決勝は準々決勝で能智を破ってあがってきたウンタ―ワーザシャー(オーストリア)と対戦でした。有効(小外刈)をとられ残念ながら優勝は逃してしまいました。
講道館2016といい、この柔道GS東京2016でも、嶺井は相変わらずのシルバー・コレクターでしたね。
彼女は、全国中学大会では3年連続で2位、2015年のシニアの海外大会も出場した2大会で2位デビューでシルバーコレクターってあだ名されていました。
どんな状況でも冷静で、五輪女王トルステニャクを破る大金星のときにもアルカイックスマイルを静かに顔に浮かべていました。喜怒哀楽を抑え込むということに関しては19歳にしてすでに女王の風格さえ感じられます。能面嶺井美穂がさらなる飛躍して真の女王としての微笑を早く見れることに期待したいと思います。
リオ五輪候補の座をケガで棒に振った嶺井がが復活のきっかけをつかんだのは確かでしょう。ライバル能美、津金と切磋琢磨して目指すは五輪の金メダルですね。 嶺井は東京の大舞台で「シルバーコレクター」返上に向けて確かなⅠ歩を踏み出しました。