柔道GS東京2016で印象に残った選手の第3弾は、角田夏実(了徳寺学園職員)です。
彼女は、講道館杯の初優勝に続いて、柔道グランドスラム東京でも初出場ながら初優勝という快挙を達成しました。
角田は寝技、とりわけ関節技が得意で、巴投げや谷落としで崩し、そこから腕挫ぎ十字固めに極めるのが必殺のパターンです。手足が長くかまきりのように日本人選手を瞬殺していましたが、パワフルな外国人選手にも通用する強さを実証してくれましたね。
昨年6月に痛めた右ひざを手術しましたが、今年3月に復帰してからは目覚ましい活躍で快進撃が続いています。あれよあれよという間のIJFワールド柔道ツアー初優勝まで達成してしまいました。
講道館杯や柔道グランドスラムの戦い方を観ていると、立技での決め手に欠くのですが、よほど強い握力をしているようで組み手争いにも強いし立技の受けも反応よくこなしています。立技得意の阿部詩の投げもうまく封じていました。
寝業師角田は、この柔道グランドスラム東京でも、得意の寝技を武器に勝ち上がり(決勝を含め、3試合が腕ひしぎ十字固めでの1本勝ち) お兄ちゃん一二三のお株を奪うような切れ味鋭い投げ技での一本勝ちで勝ち上がってきた新鋭阿部詩を腕ひしぎ十字固めでし止めてしまいました。
阿部が寝技を嫌がって立ち上がっているのに阿部の片腕に両手両足を蛇のように絡みついて執拗な関節技です。逆さ吊りのような恰好なのですが、畳につけた額をテコのようにして全体重を相手の関節を逆方向にかけて体を捻じるという恐ろしい技でした。 写真を観ると立っている阿部詩の腕が完全に決まって逆方向に曲がっているところがわかります。 この瞬間阿部がすかさずしゃがんで「参った!」と手で畳を二度たたき、ジ・エンドでした。 立技得意の阿部詩が寝技のスペシャリスト角田夏実の危険な名人芸に絡めとられた瞬間でした。
遅咲きの24歳の寝業師カマキリ角田夏実の今後の快進撃から目が離せません。怖いもの見たさって感が強いのですが。彼女の寝技にはサンボや柔術(七帝柔道にある寝技?)の技も取り入れられているそうです。
蛇とかカマキリとか、怖いもの見たさとか、ひどいことを言っていますが、試合が終わった後の角田夏実の顔は意外にスッキリ顔の美人さんでした。
こうした異色のスペシャリストが北京とリオ五輪の銅メダリストで昨年の世界選手権金メダリストの中村美里にどの程度通用するのか、その対戦が楽しみです。 中村美里が引退せずに東京五輪を目指してくれたらの話ですが。