会社法の第2編の株式会社の第4章をみますと、そこには「機関」という項目があります。第1節~第11節に渡って、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計監査人、監査当委員会、指名委員会等及び執行役と株式会社の各機関の定義、権限、義務等が規定されています。その機関の1つに、「会計参与」が含まれています。
会計参与を設置するかしないかは全くの任意かと思っていましたが、第327条の取締役会等の設置義務の条文の第2項に、「取締役会設置会社は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社についてはこの限りでない。」と規定されているのを発見しました。
この条文を裏返せば、「非公開会社の取締役会設置会社で監査役を置かない会社は、会計参与を設置しなければならない。」とも読めますね。
会計参与って会社の決算のお手伝いをする仕事のようですが、顧問税理士の仕事と何が違うのでしょうか。
会計参与の義務として、決算取締役会等への出席の他、会社執行部にコンプライアンスに係る重大な事実あった場合とか、決算報告書類作成あたって取締役と意見が異なったときには株主総会で報告しなければならないと規定されています。株主総会に提出する財務報告資料を会社に代わって作成するというのはいわば業務執行ですから、独立性と客観性が確保されているとはいい難い立場で、カドが立つ相当無理のある義務が課せられていますね。
現実問題、中小企業会社で税理士さんに決算報告書作成や税金の計算の手伝いをお願いしている会社で、どのくらいの割合の会社がこの会計参与という機関設計をしているのかイメージがわきませんでしたので、ネットで調べてみました。会計参与設置会社の数については憶測の域を出ないようですが、かなり限定的な数になるようです。
この会計参与という機関は、税理士協会の肝煎りで、会社法の機関の1つとして参入したいきさつ等を紹介した記事がありました。
会社さんにも顧問税理士さんも、会計参与を設置したときのメリットが明確でないことが、導入する数の少なさに反映されているようです。
税理士さんの中にも、頼まれても断るって意見を持っている方が少なくないようです。
会計参与の選任も他の機関同様、株主総会決議という建付けになっています。
旗を振った税理士協会も実態調査のためアンケートを実施しているようですが、回答結果もあまりぱっとしないようです。
全国400万という中小企業に「会計参与」という機関が、商法から独立した会社法(2006年施行)の目玉として紹介されてもう10年が経ちました。(税理士協会が)笛吹けど、誰も(期待したほど多くの会社が)踊らずって「会計参与」のお話でした。
会社法を開いて、監査役や監査役会、また監査役がその執行を監査することになっている取締役、取締役会の権利・義務等の項目をチェックする度に、何故か、取締役、取締役会と監査役、監査役会の間にこの会計監査って機関の条文が入り込んでいて、しかも、前の条文を準用することの多い会社法の便覧を複雑なものにしています。たとえば、第345条の会計参与等の選任等についての意見の陳述の条文に、株主総会における会計参与の選任若しくは解任又は辞任についての意見陳述の権利が規定されていますが、その条文の第4項に、その陳述権が監査役にも準用されると記してあります。この会社法条文は、会計参与等の等に監査役も含まれるということを理解していないと探すことができませんね。