元高校球児たちが再び甲子園を目指す「マスターズ甲子園」を題材に描いた重松清の小説「アゲイン」を原作として、大森寿美男が監督、脚本を手掛け、中井貴一主演で映画化したものです。NHKの「あさが来た」で主役をはった「波留」や「まれ」に出演の門脇麦や、柳葉敏郎もいい演技をしていました。
埼玉県の川越市に住む46歳の坂町晴彦(中井貴一)のもとに、高校時代にともに甲子園を目指したチームメイトの娘・美枝(波留)が訪ねてきます。
美枝は、神戸大の学生で、ゼミの先生が「マスターズ甲子園」の世話人である関係からボランティアとして出場に興味のありそうな人を勧誘する仕事をしていることを告げます。
話が進むにつれ、それは表の理由で、東日本大震災で亡くなった父の遺品から、出さずにしまいこんであった「一球入魂」とだけ書かれた27年分の年賀状の束を見つけ、その宛先である晴彦に会いに来たのでした。
そして、美枝がボランティアとして働いている「マスターズ甲子園」に誘われた晴彦は、気乗りしないままかつての野球部員たちと再会をし、甲子園の磁力に吸い寄せられるようにして「マスターズ甲子園」への予選会に参加する仕儀となります。
「一球入魂」という言葉を年賀状に綴りながらその年賀状を元野球のチームメイトに出せないまま逝ってしまった父の高校時代に何があったのか、そんなささやかな疑問が、美枝と同じ目線で、明らかにされていく様がミステリータッチです。真相と信じていた事件を胸に秘めていた晴彦でしたが、その事件は晴彦も知らない複雑な事情を抱えていたのです。
この映画は、2015年の1月17日の公開でした。ちょうどこの頃、「バンクーバーの朝日」という戦前のカナダ、バンクーバーに実在した日系人野球チームの物語の映画(2014年12月20日公開)と「KANO 海の向こうの甲子園」というこれも戦前の1931年に台湾の嘉義農林学校が台湾代表として全国高校野球選手権@甲子園で準決勝を果たした実話の物語の映画(2015年1月24日公開)に前後を挟まれての公開でした。
「バンクーバーの朝日」と「KANO 海の向こうの甲子園」は観て感動する作品でした。この「アゲイン 28年目の甲子園」も気になっていて、観ようと思いながら、日程調整が困難で見逃した作品でした。
私にとって、時期的に集中した異なる野球3部作映画の中で見逃してしまった心残りの一品でしたが、このたびWOWOWの番組でキャッチアップすることができました。 すっきりしました。
泣かせの職人重松清の真骨頂が味わえる作品でした。