原作は1978年2月にブロードウェイで舞台化されたアーネスト・トンプソンの同名の戯曲(原題:On Golden Pond)です。父と娘の確執を取り扱った作品ですが、それは実生活におけるヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダの不和を思い起こさせるものでした。彼女は母の死のの真相が自殺だったことを後で知ってから父ヘンリー・フォンダと不仲になっていました。
映画では母エセル(キャサリン・ヘップバーン)に対してはわだかまりのない、父ノーマン(ヘンリー・フォンダ)とは長年打ち解けられない娘チェルシーをジェーン・フォンダが演じました。
この作品は、歳を重ね徐々に父の想いを理解できるようになったジェーンが父親とのわだかまりを解消したいと選び、共演したものです。
ジェーン・フォンダは父親の相手役として大女優のキャサリン・ヘプバーンを口説き落としました。 キャサリンは父を想う娘ジェーンの熱意にほだされたそうです。 数十年の芸歴がありながらも、一度も同じ映画に出演したことのなかったヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーンの大物俳優二人の共演が、本作品で初めて実現することになりました。
公開後本作品は批評家たちから絶賛され、興行的にも予想外の大成功を収めます。1981年度の第54回アカデミー賞では作品賞を含む10部門の候補となり、そのうち主演男優賞、主演女優賞、脚色賞の3部門で受賞した。キャサリン・ヘプバーンが自身の記録を塗り替え史上最多となる4度目の主演女優賞、ヘンリー・フォンダが史上最高齢の76歳での主演男優賞と記録尽くめの受賞になりました。現在もこの二つの記録は破られていません。
本作品で念願の主演男優賞を獲得したものの、ヘンリー・フォンダは授賞式を健康問題で欠席。娘のジェーンが代わりに出席して賞を受け取り、壇上で快哉をあげたことは今も語り草となっています。フォンダは式の5ヶ月後の1982年8月12日に子供たちに見守られながら心臓病で死去し、彼にとって本作品が最後の映画出演となりました。 享年77歳でした。
この「黄昏(たそがれ)原題:On Golden Pond」は1981年製作のアメリカ映画で、湖畔の別荘を舞台に、人生の黄昏を迎えた老夫婦(ヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘップバーン)とその娘(ジェーン・フォンダ)、彼女の結婚相手の連れ子の心の交流を描いています。
結婚相手の連れ子の13歳のビリーとノーマンの仲良さをみて、娘チェルシー(ジェーン・フォンダ)が父親ノーマン(ヘンリー・フォンダ)に心を開いて語りかけます。
「普通の父親と娘のような関係になりたい。パパと仲良くなりたい。」と思いの丈をぶつけるのです。
美しい湖畔の別荘で過ごす、人生の黄昏を迎えた老夫婦。 妻のエセルは未だ矍鑠としているが、夫のノーマンは体調が優れず、そのためかますます気難しくなっていました。
ノーマンの80歳の誕生日に、長年会っていなかった娘のチェルシーが婚約者とその連れ子ビリーを伴って別荘を訪ねてきます。 しかし、ノーマンは娘とその婚約者に冷淡な態度をとってしまい、そんな父親に対し、チェルシーは苛立ちを隠せません。 チェルシーと婚約者はビリーをヨーロッパ旅行の間だけという約束で、彼を老夫婦の下に預けていきます。
結果的には、その13歳のビリー君がカササギとなって、父ノーマンと娘チェルシー(ビリーにとっては継母)の仲直りの懸け橋となったという物語でしたが、実生活でも不和のヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダがこの映画出演をきっかけとして確執を乗り越えたといういわくつきの作品でした。