「ルーム」は、今年の第88回アカデミー賞で作品賞ほか4部門にノミネートされ、息子とともに生きようとする母を熱演した「ショート・ターム」のブリー・ラーソンが、主演女優賞を初ノミネートで受賞したことで有名ですね。
私もそれで公開初日の金曜日観てまいりました@TOHOシネマズ日劇(マリオン11階)。
最近、わが国でも世間を騒がせている誘拐監禁事件ですが、欧米でも多いそうです。
この映画は、アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」が原作ですが、オーストリアで実際に起こった監禁事件を下敷きにしたものです。
犯罪サスペンスの要素もあるのですが、監禁からのハラハラの脱出シーンをクライマックスにもってくるのではなく、そこを中継点とし、前半をどこにあるのかもわからない狭い部屋での生活を強いられている母子の特異な日常(実は監禁幽閉生活なのですが、そこで育ったので屈託のない息子ジャックの表情が印象的です。)、後半では、自由を取り戻したはずの母親の試練と生まれて5歳まで「ルーム」の外界を知らずに育った幼いジャックが本当の世界を発見していく姿が印象的に描かれていました。
脱出できてよかったよかった! ではなく、脱出前と脱出後で上手く挟んでくれたひねり技の効いた物語になっていました。
5歳のジャックが初めて部屋以外の外の世界を目撃したときの表情が衝撃的でした。 あの表情を出すのに3日かけたそうです。
今年のアカデミー賞の主演男優賞はレオ様でなくて、このジャックを演じた天才少年ジェイコブ・トレンブレイ君ではないかと思ってしまいましたよ。
幽閉監禁されたママと、そこで生まれ育った息子の濃密な母子の世界と、脱出・救出後の膨大なモノと情報と煩雑な人間関係に溢れかえった世界の対比が鮮烈でした。 私たちが住んでいるこの世界が、果たして本当に解放された世界なのかという痛烈な皮肉を突きつけられたような感想を持ったのは私だけではないと思います。
救出後のママは精神的に参ってしまいますが、ジャックが戸惑いながらも高い適応力を示すところが救いとなって観客にも希望の光を与えてくれます。 ママはジャックに二度救われるのです。 この意味は映画を観ればわかると思います。
ママ役のブリ―・ラーソンとしては三度かもしれませんね。 受賞理由に彼女が子役の演技を引き出したという謳い文句が喧伝されていましたが、私には5歳児のリアルな演技に助けられての主演女優賞受賞とみえました。