自分のサウンドを求め、ついにセンチメンタルなスイング・ジャズの巨匠として成功したグレン・ミラーの生涯を描いた傑作音楽映画でした。
仕事にあぶれたトロンボーン奏者グレン・ミラー(ジェームス・スチュアート)は、新しい独自の音楽を模索しながら金欠病に悩まされていました。
そんな中、ベン・ポラック楽団のオーディションに合格し、運が開けてきます。その演奏旅行の途中で女友だちのヘレン(J・アリソン)と再会し、結婚します。
彼の名曲「ムーンライト・セレナーデ」「真珠の首飾り」「イン・ザ・ムード」「茶色の小瓶」等がその糟糠の妻ヘレンとの思い出に触発されて生まれたというエピソードも楽しい映画でした。
やがて第二次世界大戦が勃発し、グレンは空軍に志願し、軍人として演奏を続けることになります。戦債及び兵員募集のための演奏を続け、次いでヨーロッパ戦線へ慰問旅行に出かけることになります。伝統的な軍隊音楽をスイング・ジャズに変え、それがまた若き米兵の行進にぴったりあっていたところは思わず笑ってしまいました。
今、読んでいる深緑野分の「戦場のコックたち」の一場面にも、フランス・ノルマンディー地方にある野戦基地へグレン・ミラー楽団が慰問演奏会に来るエピソードがあって読んでいて楽しかったです。 補給兵と地元の女の子が「イン・ザ・ムード」や「ムーン・ライト・セレナーデ」で踊る風景が目に浮かぶようでした。
ルイ・アームストロングやベン・ポラックは本人が出演していて、それぞれに素晴らしい演奏を披露しています。
ジェームス・スチュアートもジェーン・アリスンもよかったけれど、何よりもこの1954年の米国映画の主役は、ミラー・サウンドを中心とした当時の音楽の数々でした。