有楽町ビックカメラ8階の角川シネマ有楽町で観ました。
以前、勤めていた外資系金融機関のITマネジャーがアルメニア出身のオーストラリア人でした。
そのときは黒海近くに住んでいたアルメニア人のかくも酷なる歴史悲劇を知りませんでした。
この映画には、1915年にオスマントルコ帝国で起こったアルメニア人をめぐる多くの日本人が知らない悲劇が描かれていました。
第一次世界大戦前のアルメニア人の人口は約180万人と言われていますが、そのうち100万人~150万人がオスマントルコにによって民族根絶を狙った集団殺害(ジェノサイド)されたとされ、欧米ではアルメニア人はユダヤ人同様、離散の民と呼ばれています。
「愛より強く」でベルリン国際映画祭金熊賞、「そして、私たちは愛に帰る」でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞しているドイツの若き名匠ファティ・アキンが、100年前のオスマン帝国で150万人のアルメニア人が犠牲になったと言われている歴史的事件を背景とし、1人の男が離れ離れになった家族に会うためにたどった地球半周分の旅路を描いたドラマでした。
1915年の第1次世界大戦中、オスマン帝国のマルディンの地で鍛冶職人として働いていたアルメニア人の主人公ナザレットはある日突然、トルコ兵によって妻や娘と引き離され、砂漠に強制連行されます。激しい暴行を受け、声を失ったものの奇跡的に生き延びたナザレットは、生き別れた家族に会うため灼熱の砂漠を歩き、海を越えトルコからレバノン、そしてキューバからアメリカへと執念の移動を続けます。やがて8年の歳月が流れ、地球を半周したナザレットは遠くアメリカのノースダコタへと娘の姿と影を求めてたどり着くのです。 行く先々に漂流民アルメニア人のコミュニティがあり、彼の旅を助ける連帯の強さも驚きでした。
ナザレットに代表される歴史に抹殺された無数のアルメニア人の悲劇の声なき声を聞かされたように感じた映画でした。