銀座プランタン隣接の丸の内TOEIで観ました。
日本とトルコの友好関係の礎となったエルトゥールル号遭難事件を題材に、日本・トルコ合作で映画化したヒューマンドラマでした。
主演女優の忽那汐里は「くつなしおり」と読むんですね。 オーストラリア出身の23歳ですね。さすがに流暢な英語を話しているなと思いました。
合作成立には日本、トルコ双方の政治的思惑が働いたようです。
去年の春に「『海難1890』を成功させる会」の最高顧問には安倍首相が就きました。ちょうど同じころ国会で、有事には自衛隊海外派遣への国会関与を強化し、救助のための派遣を優先し国会には事後承認でという考えを出していましたよ。
在外邦人の救出に当たっての自衛隊員の安全確保ということで紛糾していたように記憶しています。
この映画は胡散臭くもあるのですが、確かに有事とは平時と異なる対応が必要だということにも一理あると思わされました。
映画でも、イラクがイランに攻撃を仕掛け、在イラクの外国人が海外に避難するという状況の中、空路の安全が保障されないという理由で日本航空がテヘランに邦人救出用の飛行機を飛ばせないと断っていましたし、自衛隊も国会の承認に時間が掛かるという理由で救援機をテヘランに飛ばせないという問題を観客に突き付けていたような気がします。
平和のぬるま湯にどっぷり浸かりすぎて、国外が決して平和ではなく、むしろ欧州といえども有事に近い緊張状態に変わりつつある昨今、いざというとき海外の邦人救出にどう対応するのか真剣に考える時期が来ているのかもしれません。
最近では2011年のリビア動乱の折の日本企業人4人の脱出に際して、有事に国民を守れない日本という問題が取沙汰されていました。
映画は1890年の和歌山県沖のオスマントルコ船の座礁事故の折の地元住民の献身的な救助活動の恩返しのような形で、1985年のイラン・イラク戦争勃発時の日本人救出にトルコ機が貢献したという筋立てでした。
ちょっと短絡的な感じは否めませんが、それでも知らなかった日本とトルコに関わる2つのエピソードは興味深かったです。
和歌山沖の遭難救助シーンも迫力がありました。 夏川結衣が体が冷たくなっているトルコ船員を裸になって温めるシーンがあったのですが、ちゃんと見せろよとここだけは突っ込みをいれたくなりましたけどね。
1890年9月、オスマン帝国の親善訪日使節団を乗せた軍艦エルトゥールル号が和歌山県沖で座礁し、乗組員618人が荒れ狂う海へと投げ出されます。500人以上もの犠牲者が出る中、地元住民の懸命な救助活動によって69人の命が救われ、トルコへ帰還できました。この事件をきっかけに、日本とトルコの間に厚い友情が結ばれることになります。
そして1985年、イラン・イラク戦争で緊張が高まるテヘランに日本人215人が取り残され、日航も自衛隊も救援機を飛ばせない窮地に日本大使館はトルコに救出を依頼するのです。
100年越しの恩返しということで、トルコ航空の会議室に熟練パイロットが集められます。 イラクからの無差別攻撃開始の期限通知が24時間内に迫るなか、総裁が日本人救出にいってもいいパイロットを募ったところ全員が手を挙げました。 友愛精神に満ちたトルコ人パイロットの勇気は、日本航空とえらい違いですね。
内野聖陽が、エルトゥールル号乗組員の介抱に奔走する医師役で主演でした。ヒロイン役の忽那汐里はそれぞれの時代に生きる女性を1人2役で演じていました。メガホンをとったのは田中光敏監督です。