ドイツ人のナチスドイツに対する歴史認識を大きく変えたとされる1963年のアウシュビッツ裁判を題材に、真実を求めて奔走する若き検事の闘いを描いたドラマでした。
1958年、フランクフルト。終戦から10年以上が過ぎ、西ドイツでは多くの人々が戦争の記憶を忘れかけていた。
忘れかけていたというより、若い世代の人々の多くがアウシュビッツで行われたことを知らされていなかったと言った方が正しいかもしれません。
日本に比べてドイツは自国民による戦争責任の問い方が厳しいと言われていますが、この映画を観るとフランクフルト・アウシェビッツ裁判の前の50年代から60年代のドイツではナチス犯罪の記憶が失われかけてたという時代の気分が伝わってきました。 臭いものに蓋をして、きちんとけじめのある事実を歴史の時間に教えようとしない日本の教育制度を見せつけられているかのような相似性を見出すことができました。
そんな折、かつてアウシュビッツ強制収容所で親衛隊員だった男が、規則に違反して教師になっていることが判明します。
旧ナチの残党は過去を隠し平然と市民生活に溶け込んでいたのです。
新米検事のヨハンは、正義感が強く、上司の制止も顧みずジャーナリストのグルニカやユダヤ人のシモンと共に調査を開始します。
様々な圧力にさらされながらも、収容所を生き延びた人々の証言や実証をもとに、ナチスドイツが犯した罪を明らかにしていくのです。
主役ヨハンに「ゲーテの恋 君に捧ぐ『若きウェルテルの悩み』」のアレクサンダー・フェーリングが、ヨハンの恋人役には「ハンナ・アーレント」の若き日を演じたフリーデリーケ・ベヒトが抜擢されていました。
ヨハンらはイスラエルのモサドと協力しながら、ナチ親衛隊でユダヤ人の強制収容所の責任者アドルフ・アイヒマンを捕らえますが、彼はイスラエルで裁判にかけられることになります。こちらの話は、映画「ハンナ・アーレント」に詳しく語られています。
ヨハンらは人体実験を行ったと言われるもう一人の大物ヨーゼフ・メンゲレ医師を追いますが、ドイツの歴史認識を大きく変えた収容所でホロコーストに関わった元ナチの高官22人を裁いた1963年のフランクフルト・アウシェビッツ裁判には「死の天使」との異名をとった彼の姿はありませんでした。 メンゲレは南米に逃亡し1979年にブラジルで溺死しました。
「ハンナ・アーレント」では、ハンナ・アーレントが一部ユダヤ人の指導者にも責任ありと糾弾していましたが、この映画でも多くの罪はナチス時代にごく普通のドイツ人によってなされたということがほのめかされていました。 裁かれたのは22人でしたが、容疑者は8000人に及びました。
戦後70年を意識してか、ドイツのヒトラー関連の映画公開が続きますね。 TOHOシネマズシャンテでヒトラー暗殺 13分の誤算が先週金曜日から公開となっています。