昔、白豪主義の最中(1930年頃)、アボリジニー混血の子供を隔離して白人としての教育を施すことが行われていました。母や家族からから強制的に引き裂かれたアボリジニー混血少女が母を訪ねて3000里ではないですが、そんな実話に基づく物語の映画「裸足の1500マイル」が2003年に公開されていたのを思い出しました。
その裸足の1500マイルに比べると、こちらの奇跡の2000マイルは今一つ主人公の動機がはっきりしません。ラクダ4匹と犬1匹も連れて、銃も持って、スポンサーもつけて、いざとなれば命綱の無線機も用意しての旅なのです。何週間に一度はスポンサーがカメラマンを送ってきます。
金持ちの道楽旅というか、いわば文明におんぶに抱っこの反文明へのチャレンジというふうに思えました。
余談ですが、8月28日にTOHOシネマズシャンテで、リース・ウィザースプーン主演の「わたしに会うまでの1600キロ」が公開予定です。 自分探しの長旅映画が大流行ですね。
「奇跡の2000マイル」はラクダと愛犬とともにオーストラリア砂漠3000キロをたった1人で踏破した女性の実話を、「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ主演で映画化したロードムービーです。
思い通りにいかない人生に変化を求め、ひとり都会から砂埃が舞うオーストラリア中央部の町アリス・スプリングスにやってきた女性のがミア・ワシコウスカ演ずるロビンです。
彼女がこの土地に訪れた目的は、砂漠地帯を踏破しインド洋を目指す旅に出ることです。
牧場で働きながらラクダの調教を学び、旅の準備を整えたロビンは、4頭のラクダ、愛犬とともに町から旅へと出発することになります。
スポンサーもつきました。 1日あたり約32キロのペースで歩き、7カ月という日数をかけて達成したその旅の過程で、ロビンはさまざまな出会いや経験を体験することとなるという筋書きです。
彼女が何故このような冒険旅行を思い立ったのかが不明という難はありましたが、4頭のラクダと愛犬とともにオーストラリア大陸の砂漠を横断するミア・ワシコウスカの演技と存在感には圧倒されました。
道中の過酷さは凄まじいものがありました。外気にさらされてゴワゴワの髪と日焼けしたミアの顔が圧巻です。
家もなければ誰と会うこともない砂漠では服を着る必要もないということで時折スッポンポンのミアが目撃できます。ただ強い日差しで焼きただれた肩を見るとやはり服は着た方がいいのではないかと思いましたけどね。
おとぎの国のアリスと、野生児になって砂漠の過酷な一人旅のロビンを演じ分けたミア・ワシコウスカの印象は強く残りました。スタッフもミアにはラクダを始め動物と接する天賦の才能があると驚いていたそうですよ。
ラクダと言えば、オーストラリアの生態系から虎やライオン等の猛禽類が存在しないことは知っていましたが、野生のヒトコブラクダが多数存在することは知りませんでした。ラクダの鳴き声、息遣いまでこの映画でよく分かります。臨場感たっぷりです。 そして発情した野生のラクダは手が付けられないので、近づいてきたら撃ち殺さざるを得ないという自然の中で生きる非情さもよく描けていた映画でした。
裸同然の野生児のような役をこなしたミア・ワシコウスカに拍手を送りたくなる映画でした。 彼女のお母さんはポーランド人ですが、お父さんはオーストラリア人で、生まれはオーストラリアです。