何と何とピルグリム1巻から2巻の113ページにきて、やっと”私”が暗号名”ピグリム”と名乗って、正体不明のテロリスト”サラセン”のワクチンの効かない天然痘菌拡散阻止に動き始めます。
手ががりは、アフガンの地で、誘拐した人間を使って人体実験をした地から交わした2回の電話だけです。
臨場感あふれる描写がすばらしい小説です。
世界を舞台にしており、イスラマバード、カブール、イスタンブール、ボドルって地名が出てくるたびに、グーグルで呼び出して地図の確認をしています。
勧善懲悪の話ではなく、テロリスト「サラセン」の側から、何故彼がそういう決断をするにいたったのかという背景が緻密に描かれています。彼を取り巻く事情が、家族、イスラム社会文化にまで渡って、深く書き込まれているのです。
だからでしょうか、日本人人質事件がTVニュースをにぎわす中ではありますが、この小説の世界の「サラセン」には妙に感情移入できてしまうのです。
サラセンのテロの準備も、入念に時間をかけて、緻密に描かれ、将来起ころうとする事件に向かって、彼の視点から捉えた目論みがよくわかります。
その一方で、サラセンの足跡を追いかけて、テロを阻止しようとする”私”ことピグリムの視点からの描かれ方も、微に入り細に入り書きこまれており、違った視点で同じテロ事件が臨場感豊かに描きこまれていることに感心させられます。
この小説は素晴らしい。 面白い。
早く3巻を読みたくもあり、読み終わった後の(祭りの後の)喪失感が怖くもあり、複雑な心境です。