外山慈比古という御茶ノ水女子大学の名誉教授が、「乱読のセレンディピティ」という本を書いておられました。
読んではいませんが、本を読むきっかけに、人との出会い、身の回りに起こった偶然の重なりから、必然のような本と出会っていくというような内容と想像しています。
セレンディピティという意味には思いがけない出会いという意味があります。 クリスマス・シーズンになるとジョン・キューザック主演の映画「セレンディピティ」を観たくなってしまいます。
さて、映画 「ストックホルムでワルツを」にまつわる私の小さなセレンディピティの話です。
簿記を習った先生が、最近、ジャズピアノを始めたとおっしゃっていました。ジャズピアノといえば、ビル・エバンスなのだそうです。
大阪に遊びに行ったとき、たまたま本屋で1枚1000円のジャズのCDがあって、名前を聞いていたビル・エバンスのCDを2枚買いました。そのうちの1枚が、ワルツ・フォー・デビイでした。
風呂場にある、防水のCDプレーヤーの中身を、最近まで聴きまくっていたファドのSomg of the Seaから、Waltz for Debbyに変えました。
最近、ふらっと寄った赤坂のボロンテール(ジャズ・バー)で、モニカ・ゼタールンドのアルバム・ジャケットを見ました。そして、この映画の話を聞いて、ヒューマントラスト有楽町の映画館に観に来ました。
そこで、恥ずかしながら、映画を観て初めて、スエーデンのジャズの歌手モニカが、ビル・エバンスのスタンダード・ナンバー「ワルツ・フォー・デビイ」のカバーを熱望し手作りのデモ・テープを直接ビル・エバンスに送って採用され、米国に渡って、ビル・エバンスのピアノをバックに共演が実現し、彼女の名前が全世界に広がったんだということを知りました。
成功から、失敗の浮き沈みを繰り返した彼女の物語の中で、どん底から彼女が手繰り寄せた、それこそ彼女にとっても思いがけないビル・エバンスとのセレンデピティから、夢の共演が実現したシーンは感動的でした。
そうした映画の話が、ボロンテールで彼女のレコードジャケットを見ることにつながり、簿記の先生のジャズピアノのお手本のビル・エバンスにつながるのですから、これぞセレンディピティでしょう。
モニカ・ゼタールンド(1937-2005)役のエッダ・マグナソンも歌手で、驚くほどモニカに似た風貌の持ち主です。12月20日(土)、21(日)に、ブルーノート東京で来日公演が予定されています。