銀座シネ・スイッチの劇場で、ボックス・ティッシュの貸し出しをやっていました。号泣必死なのかと心を構えて観ましたがそれほど涙はたくさん出ませんでした。
でも、いい映画でした。
1970年代のカリフォルニア州の西ハリウッドでのお話です。シンガーを夢見ながらもゲイバーでショーダンサーとして日銭を稼ぐルディ(アラン・カミング)。 正義を信じながらも、ゲイであることを隠して生きる弁護士のポール(ギャレット・ディラハント)。 母がドラッグ依存症で、彼女の愛情を受けずに育ったダウン症の少年マルコ(アイザック・レイヴァ)。 チョコレートドーナツはマルコ少年の大好物です。原題はAny Day Nowとなっていました。
母親が薬物服用で刑務所に拘留されたため施設に預けられそうになったマルコ少年を引き取りたいルディは、彼のパートナーのポールの弁護士としての専門知識に助けられながら、その夢を実現させようとします。
ポールの家にルディとマルコも住み、マルコの通う学校の手続きも済ませ、ルディの歌をデモテープを作って売り込み、3人で幸せな家庭を築き始め、夢は叶うかにみえました。
あることをきっかけにポールとルディがゲイのカップルであることが周囲に知られてからは、ポールは弁護士の職を失ってしまい、裁判所でマルコを引き取るときの二人の関係を従兄弟同士と偽っていたことからマルコも家庭局に連れて行かれてしまいます。
ゲイに対する偏見のある連中の圧力もあり、ポールとルディのマルコに対する無償の愛に法の判定は無情な結果となります。
この法廷論争の中にいろいろ胸に響く科白が山盛りでした。
この世の片隅で静かに過ごしたかった3人に余計な干渉をして、無残にマルコの幸せな生活(それをチョコレートドーナツという映画の題名で象徴していたと思います)をもぎとってしまいます。その結果としての悲劇の後、この裁判にかかわった関係者に送ったポールからその悲劇が伝えられます。その手紙から、彼の静かな怒りが観客としての私にもじんわり伝わってきました。