アレクサンダー・ペイン監督の作品は、「アバウト・シュミット」(’02)、「サイドウェイ」(’04)、「ファミリー・ツリー」(’11)と観ていますが、どれも好きです。
「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」は、モンタナ州ビリングスに住む家族の話で、100万ドルが当たったと信じ込み約1500キロ離れたネブラスカ州(彼の生まれ育った故郷でもあるのです)のリンカーンまで受け取りに行こうとする父と、インチキと知りながらもそのたびに付き添う息子の絆を描いたロード・ムービーでした。
全編モノクロで、父を助手席に乗せ、アメリカの広大な原野をひたすら走ります。ドラマティックな事件は何一つ起きません。 夢見る父に、現実の厳しさをわかっている息子のかみ合わなさが哀しくもユーモラスでした。
寄り道とサイレントを愛するアレクサンダー・ペインの美学が体感できるいい映画でした。 頑固な老父役ブルース・ダーンの絶妙なボケっぷりもよかったし、女性関係も仕事もうまくいかない次男が父の故郷で自分の知らない昔の父を母との恋敵の女性から聞かされるエピソードもよかったです。
ボケた父の夢は賞金でトラックを買うことでした。次男は父の願いをかなえてあげます。 夢が実現した父の目の輝きを見ることで幸せを感じる息子の姿にはこの映画を観る者の心をなごませる温かさがありました。