高畑勲監督が新しい表現方法に挑み、迷いに迷って、まとめあげに予想以上の時間がかかってしまい、当初の計画より大幅に遅れての封切りとなったいわくつきの作品です。
最初は、宮崎駿監督のジブリ作品「風立ちぬ」より早く公開される予定でしたが、「風立ちぬ」と同時の8月公開予定となり、それにも間に合わず、結局11月23日の公開となってしまいました。
かぐや姫の声の「朝倉あき」がよかったです。それに媼役の宮本信子もよかったし、翁役はなんと故地井武男さんでした。声は2011年8月頃録ってその声に基づいて画を描くプレスコ(プレスコアリング)という方法だったようです。それにしても地井武男さんは映画の完成を待つことなく2012年6月に他界されました。合掌。
画はデッサンの線を強調されたシーンが印象的でした。疾風怒濤の走りに怒りと悲しみが象徴されて迫力がありました。声のキャストも豪華な顔ぶれでしたし、久石譲さんの音楽もよかったし、何よりも何よりも、主題歌「いのちの記憶」の作詞・作曲・唄の二階堂和美さんの歌声が素晴らしかったです。レコーディングのときはお腹が大きかったそうです。生まれてくる子供と月からやってきたかぐや姫への想いが重なった詩を素晴らしい声で丁寧に歌い上げてくれるメロディーが心に染み込んできます。
二階堂さんは、実家がお寺さんだったようです。広島在住のシンガー・ソング・ライターでありながらお坊さんでもあるという異色の経歴の持ち主です。
かぐや姫が竹から生まれて、月に帰っていくという物語を通して、人として生まれてくる命の芽吹き、喜び、驚き、健やかな成長、そして別れ、悲しみ、怒り、とまどい、想い、空想、そして死 ・・・・という人生の走馬灯を見せられたような感じがしました。
今年はジブリから1年に2作宮崎駿監督(72歳)の「風立ちぬ」と高畑勲監督(78歳)の「かぐや姫の物語」の2作品が公開となった記念すべきジブリイヤーとなりました。今から25年前の「となりのトトロ」(宮崎)と「火垂るの墓」(高畑)の二本立て興行以来のことです。