日本推理作家協会賞受賞作を含む「傍聞き(かたえぎき)」を読んだ時も感じましたが、人間の深層心理に潜む人の性をうまく料理してミステリーの風味をつけるのが巧みな作家です。
今年の週刊文春ミステリーベスト10の第1位、このミステリーがすごいの2位(「このミス」1位は法月倫太郎の「ノックス・マシン」、ちなみにそれは週刊文春では第3位)に選ばれたのがこの「教場」です。
啓作学校が舞台の連作短編集です。風間公親というどんな生徒の心情をも見抜く白髪の教官が強烈なインパクトをもっています。年齢も動機も職歴も違う学生たちが挫折に直面し、篩(ふるい)にかけられていくさまの心理描写がちょっと怖い小説です。
プロットの密度の濃さは、昔、エドガー・アラン・ポー作品集を読んだときの印象に似ています。
この作者は寡作なのですが、この「教場」の警察学校教官「風間公親」の物語はシリーズ化される可能性もありですね。