週刊文春の2012ミステリーベストテンでも2013年度版のこのミステリーがすごいでも国内部門堂々のベスト1に選ばれた作品です。宮部みゆきのソロモンの偽証がそれぞれで2位に入っていました。
刑事出身の広報官三上義信が主人公です。刑事部と警務部の対立の中で自らの立ち位置を模索して苦しみます。組織内の利害関係、上司と部下、マスコミからの圧力、家庭問題で満身創痍になりながら突破口を探ってもがきます。
そして昭和64年に起きたD県史上最悪の翔子ちゃん誘拐事件をめぐり、刑事部と警務部が全面戦争に突入したとき、狭間に落ちた広報官・三上義信が覚醒します。
中間管理職として個人の立ち位置を模索して悩む人は多いと思います。そのような人が楽しめる内容になっています。誘拐事件の実況中継シーンもスピード感、緊迫感があってページをめくる手が早くなってきます。
組織の壁に悩む人すべてが、スカッとさせられる小説ですよ。
キャラクターは違いますが、ぶれない信念の持ち主大森署署長竜崎伸也が活躍する今野敏の隠密捜査シリーズを読んだ後の清涼感がありました。
いかつい顔で鬼瓦との異名を持つ三上の苦悩が深いだけ大いに共感できます。そしてその負荷が重い分そのはじけた反動も大きく思い切りすっきりさせてくれます。
この武闘派、鬼瓦広報官の話もシリーズ化にならないかなぁ。奥さんが元刑事部の同僚で超美人という設定もよかったです。