和製オーシャン12のようなイメージかなと軽い気持ちで観ました。
ところがどっこい! 重厚かつ精緻な大型犯罪映画でした。
1990年の高村薫の同名のデビュー作品を映画化したものです。彼女は大阪生まれの大阪育ち。大学こそ国際基督教大学だったようですが、卒業後は大阪にある外資系商社勤務だったようです。彼女自身がオフィスからこの大阪に本店のあるこの銀行を眺めながら金塊争奪計画を練っていたというからすごいですね。物語とはいえここまで精緻な計画が描かれると案外彼女は本気だったのじゃないかと思ってしまいます。
舞台は大阪。独特の人間臭い混沌とした空気が実に上手く描写されていました。淀川の川の匂いまでが映画館に広がってくる感じでした。大阪らしい風景といえば通天閣、道頓堀と思っていましたが、淀川を挟んだ吹田市の一角でしょうか、実に大阪らしい匂いが立ち込める風景を活写してくれました。この映像だけでも感激してしまいました。
その大阪を舞台に、敷居の低い大阪の市民社会からもはみ出た過去と現在をもつ男たちが集まり、絡まりあって複雑で危険な図を描いていきます。
学生時代から左翼過激派の物資調達を繰り返し、盗みのエキスパートとなった幸田(妻夫木聡)、その学生時代に知り合った運送会社のトラック運転手北川(浅野忠信)、北川の弟でギャンブル依存症で自殺願望の北川春樹(溝端淳平)、公安からも祖国北朝鮮からも追われる元北朝鮮工作員で爆薬のエキスパートモモ(東方神起のチャンミン)。この危ない4人に、犯罪経験はないが大きな借金を抱えたシステムエンジニアの野田(桐谷健太)と元エレベーター技師のじいちゃん(西田敏行)が加わります。二人とも地下階に金塊が眠っている銀行のITシステムとエレベーター・システムに詳しいのです。リーダー北川の金塊争奪計画の6人の面子が揃いました。
日本映画もここまでの作品が生み出せるのか・・と感動いたしました。
緻密な計画も、次々予想不可のハプニングが起こって、ハラハラドキドキの金塊強奪ストーリーでした。原題の小説に沿ってリアルに徹した作りになっています。それに加えて、それぞれの抱える人生や運命も丁寧に描かれていて、一粒で二度美味しい映画です。
妻夫木とチャンミンの間にぞくっとする同性愛っぽいシーンもでてきます。ただチャンミン目当ての韓流スター大好きおばさまには、この血の気の多い井筒作品は刺激が強すぎるのではないかと思います。