この辺の会話の妙は、少年野球物語の「バッテリー」の特徴でもありました。天才投手「巧」の投球の力と技の成長という変化の中にキャッチャー豪や巧みの弟、青波等の少年自身の人間としての成長をうまくミックスした会話の感性の鋭さには驚かされたものでした。
新里
火群(ほむら)のごとくも・・面白い時代と場面設定です。14歳に成長した新里林弥は、同い年の上村源吾や山坂和次郎と剣術修行に明け暮れる毎日です。成長期を迎えそれぞれの個性が顔を出し始め、友が急激に大人びて見える時期でもあります。林弥は源吾や和次郎に心配されるほど一途な性格なのですが、そこに現れたのが同い年の剣術の天才、樫井透馬なのです。
この二人を結びつけたのは林弥の兄、結之丞ですが、彼は違う場所で二人の剣術の師だったのですが弟子の二人が出会う前に暗殺されたのです。当代一と呼ばれた剣士だったのですが、刀を抜く間もなく背中を一太刀で惨殺されたのです。
謎の暗殺者と複雑に蠢く藩内の権力争いと無垢な少年の剣士としての急成長のバランスがたまりません。きっと、これ長いシリーズものになりそうな気がします。
葉室麟の「秋月記」も面白かったけど、あさのあつこも負けてはいません。この二人は次の直木賞候補にとっておきましょう。