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読書 「月の満ち欠け」佐藤正午_直木賞ノミネートされてもいい作品だと思うのだけど・・・

f0090954_05553211.jpg佐藤正午といえば、宝くじにあたってしまったことから運命が大きく狂いだす女の物語を書いた「身の上話」が面白かったです。2009年9月12日に感想分をブログにアップしています。http://zoompac.exblog.jp/11917149/
後の2013年に戸田恵梨香主演の「書店員ミチルの身の上話」ってタイトルのNHKドラマになりました。

その著者が5年ぶりに出した「鳩の撃退法」って作品で選考委員の筒井康隆等に激賞され山田風太郎賞を受賞していました。

読もう読もうと思いながら、上下二巻というプレッシャーから積読の月日が経ち、2017年4月に本屋でこの手頃な厚さの一冊本を見つけて喜び勇んで読み始めました。

やはり面白い、引き込まれていきました。

この小説の目次をみると、13章の物語が、5編に分類されていて、その5編は、午前11時から午後1時までの2時間の間に組み込まれています。

この小説の大きな時間軸は、小山内堅(つよし)という初老の男が東京駅のホテルの2階にあるカフェで一組の母娘と対面している午前11時から午後1時過ぎまでの2時間余りなのです。

小山内は八戸から上京してきたのですが、有名な女優の母親ではなく彼女の7歳の娘「るり」に会うためでした。

小山内の娘「瑠璃」は15年前、18歳のとき交通事故で亡くなっており、この7歳の「るり」はその「瑠璃」の生まれ変わりだと言うのです。

何かの書評でこの小説は人形の中から人形が出てくるマトリョーシカのようだって表現が使われていたと記憶しているのですが、東京駅のカフェにいる女優緑坂ゆいの7歳の娘の「るり」、そして15年前18歳で亡くなった小山内の娘の「瑠璃」、さらに小山内瑠璃の前世の正木瑠璃の人生にも触れていくのです。

三角(みすみ)という当時学生の恋人だった20歳台後半(29歳?)の人妻正木瑠璃が死んだ年に小山内瑠璃が生まれ、小山内瑠璃が死んだ年に希美という名の娘が産まれています。希美は本来「瑠璃」という名を持つはずでした。そして正木瑠璃の夫はその希美の両親の経営する会社というか店で働いていたのです。おそらく、「るり」は希美の生まれ変わりでしょうね。

事の始まりはこの三角と人妻正木瑠璃の恋物語からです。この恋の記憶が生まれ変わった瑠璃に引き継がれていくのです。

三角の恋人の瑠璃は、三角にかつてこう語っています。「神は、最初の男女に、種子を残して樹木のように死んでいく道と月の満ち欠けのように死んでも何回も生まれ変わる道を与えた」と。 そして彼女は「月のように死ぬ」という言葉を残して電車に撥ねられて亡くなるのです。

これ以上話すと完全にネタバレになってしまうし記憶もやや曖昧なので、ここらで止めておきますが、希美を含めて4人の瑠璃に纏わる不思議な物語に二組の恋物語が仕組まれています。(ここまででもずいぶんなネタバレになっています。平にご容赦!)

次から次へ瑠璃が出てきますが、「瑠璃も玻璃も照らせば光る」という言葉に導かれた瑠璃の恋物語だけに気を取られていると主人公小山内同様足を掬われてしまいますよ。小山内は気づきましたけどね。

希代の大嘘つき作者の詐術にまんまと騙されて楽しい読書タイムをお過ごしください。いくつもの人生を俯瞰(ふかん)して、語る時間と視点を変えてモザイク状に物語が巧緻に綴(つづ)られています。

伏線が多くてフラッシュバックの時間も人間関係も複雑ですが、大雑把に読んでも、素敵な二つ恋物語が浮き出てきます。楽しめます。一粒で二度おいしいってやつですね。

それにしても、小学校に今年入学した孫娘が、突然、前世の記憶を蘇らせ、黛ジュンの「夕月」とかはもったらどうしましょう。

まだ直木賞にノミネートもされていないうちから予想するのも変ですが、この作品はノミネートされると思いますし、ノミネートされたら受賞の可能性も高いと思います。完成度の高い小説です。

と思って、「直木賞のすべて」って非公式直木賞応援HPを開けてみましたが、一般読者が直木賞を予想する作家・作品リストの中に佐藤正午の「月の満ち欠け」は無かったですね。何かの間違いであればいいのですが。

一両日中に直木賞ノミネート作品が発表されると思います。 今、伊東潤の「城をひとつ」を読んでいますが、伊東潤氏にもそろそろ「直木賞をひとつ」となって欲しいです。

追伸

今朝、「直木賞のすべて」に直木賞候補が発表されていました。 伊藤潤氏の作品はノミネートされていませんでしたが、佐藤正午氏の「月の満ち欠け」はノミネート作品の中に入っていましたね。本命だと思いますよ。



by zoompac | 2017-06-20 05:56 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

「オランダ紀行 街道をゆく35」司馬遼太郎_日本の近代化に大きな影響を与えた小さな国オランダ!

f0090954_05592463.jpg日本に大きな影響を与えた国といえば、中国と米国です。その次に大きな影響を与えた国が実はオランダなのだということがこの司馬遼太郎の「オランダ紀行」によって納得させられます。

明治維新の後の文明開化で、あれほどの短期間に西洋の技術や文化を取り入れることができたのも「蘭学」によって、日本人が医学、天文学、植物学、兵学、化学、さらには絵画まで書物で基礎知識をすでに吸収していたからに他なりません。

ドイツ人ですがオランダ商館の医員としてやってきたシーボルトや日本で初めての洋式病院を長崎に建てたポンぺ等の「生きた実学」の功績もありましたが、オランダからの書物を通じて学ぶという「蘭学」の貢献が大きかったということです。

戦国期にポルトガル人(イエズス会)やスペイン人(フランシスコ会)が日本にやってきて、きりしたん(カトリック)をひろめたことはよく知られています。
やがて布教の裏に両国の領土的野心が見え隠れしていることがわかって、禁教になり、それが昂じて江戸日本は鎖国をしたことも周知のとおりです。

ところが遅れてやってきたオランダ人(1600年にリーフデ号でウィリアム・アダムス=三浦按針が今の大分県臼杵市に漂着、ちなみにウィリアム・アダムスは英国人)は、きりしたん(旧教)に抵抗した新教のひとびとであり、きりしたんと違って仏僧を悪魔と呼ぶこともなく寺社を焼いたりする物騒な意欲もなく、ときに国土をかすめとろうとする気配もありませんでした。

宗教を前面に出さず商売にしか興味をしめさなかったため、幕府は制限下での交易をゆるしました。1600年の漂着の9年後に、オランダ国王の親書をたずさえた特使が駿府で徳川家康に謁見して国交が開かれたのです。 ちなみに当時はポルトガル人・スペイン人を南蛮人、オランダ人を紅毛人と区別していました。

ただし、幕府は紅毛人を長崎の出島に閉じ込め、彼らの日本での自由行動を抑制しました。 漂着した三浦按針や八重洲に住んだヤン=ヨーステンは別格でしたが。

その外国の窓口を出島に押し込めた流れを変えたのが、荻生徂徠の思想の影響を受けた開明的な8代将軍吉宗です。サツマイモの普及に努めた儒者青木昆陽は、吉宗の命で初歩オランダ語を学びました。さらに吉宗は1720年にそれまで禁止されていた洋書を読むことを解禁したのです。

そのことでオランダの外科技術等を通詞を通じて学ぼうとする輩が増えてきます。閉ざされた鎖国日本にあって、当時の文化人の知識吸収力には驚くべきものがありました。

その知識吸収力は1771年の杉田玄白や前野良沢等による「解体新書(ターヘル・アナトミア)」の翻訳、さらには「蘭学事始」に繋がり、緒方洪庵の「適塾」の発展に繋がっていくのです。

大阪の適塾は西洋医学を看板にしていましたが、その実体は医学校というより語学校だったと司馬遼太郎氏は言っています。

その適塾の初期の生徒に長州藩の村医者の息子の村田蔵六(後の大村益次郎)がいました。火吹きだるまとあだ名されるほどの顔立ちでしたがシーボルトの娘のイネとはねんごろになったりします。蘭語の実力を買われ伊予宇和島藩に招かれ士分に取り立てられます。やがて幕府からも正式に兵学に関する書物の翻訳の仕事を依頼され働いていた時、桂小五郎(木戸孝允)からスカウトされ、長州藩の軍の洋式化プロジェクト長に抜擢されます。戊辰戦争にあっては、新政府軍の総司令官になりました。

軍人としての訓練を一度も受けていないこの人物が、明治維新における唯一の軍略家でありえたのは、オランダの兵学書からさまざまに想像したおかげだったと思われます。

蘭学と旺盛な想像力で異文化を摂取することが行われたのは、この時代の日本だけだったのではないかと司馬氏は語っていました。

村田蔵六が、ひたすらその蘭学を駆使して、軍制、戦略、兵器について書かれた洋書を翻訳することで西洋の当時の最新技術を学び、やがてその知識を活かしを討幕の実質的な最高司令官として江戸を荒らすことなく上野戦争に勝利したことは司馬遼太郎氏の「花神」に詳しく書かれています。

村田蔵六の後輩として適塾で学んだ福沢諭吉は、咸臨丸で太平洋を横断しました。

ちなみに世に埋もれていた杉田玄白の「蘭学事始」の内容に感動し、自費で刊行し世に広めたのが福沢諭吉でした。

「蘭学事始」は、玄白が「解体新書」翻訳当時のことを回想した読物です。 諭吉は玄白の次の言葉に滂沱の涙を流したそうです。

「誠に濾舵(ろかじ)なき大海に乗り出だせしが如く、茫洋として寄るべきかたなく、ただあきれにあきれていたるまでなり」

たとえば、オランダ語の辞書から目の上にはえた毛=眉というオランダ語(ウエインブラーウ。英語のeyebrow)一語を知るのに一日以上かかった苦労話等のエピソードも「蘭学事始め」に紹介されているようです。

福沢諭吉や勝海舟をアメリカに運んだ咸臨丸はオランダ製で、ゼーラント州にあるライン川のほとりのキンデルダイクの造船所でつくられました。

その場所を司馬遼太郎氏は訪ねます。そして函館五稜郭のモデルになったようなナールデンの星型の城郭都市も。そしてスペインからの独立の拠点となった大学の街ライデンも。

ちなみに函館の五稜郭を設計したのは武田斐三郎成彰という伊予出身の者でやはり緒方洪庵の適塾で学んでいます。彼はむろん西洋の要塞をみたことがなく、あくまでも書物でみたものに想像をまじえながら作図をしたにちがいないと司馬氏は想像していました。

コロッケやビール、さらにコーヒー等の言葉もオランダの影響だということも併せて楽しく読ませてもらいました。 さらにオランダ語の影響を受けた言葉には、船のマスト、外科医のメス、ブリキ、ガラス、カバンに、今年の春から孫嬢がぴかぴかの1年生として背にしたランドセル等があります。ランドセルはもちろん彼女の祖父からのお祝い品です。

by zoompac | 2017-06-16 06:01 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「慈雨」柚月裕子_定年退職警官の四国お遍路旅小説

f0090954_08055770.jpg柚月裕子氏の前作の「孤狼の血」の映画化が決定しました。2018年春公開予定だそうです。

役所広司と松坂桃李の広島弁の炸裂が今から楽しみです。

原作の「孤狼の血」は、警察小説×仁義なき戦いって感じの迫力ある悪徳警官小説で、2015年の第154回直木賞にノミネートされた作品です。

その彼女の「慈雨」って小説を読みました。

警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子と四国八十八ヶ所のお遍路の旅に出ます。そして42年の警察官人生を振り返る巡礼の旅の途中で神場は、幼女殺害事件の発生を知り動揺します。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った幼女殺害事件に酷似していたのです。

当時は、DNA技術が未発達な時代で、神場は逮捕された犯人の目撃情報が事件解決後に出てきたことで冤罪を疑いましたが、警察組織の論理によって再捜査を拒まれ、その命に不本意ながら従ったのです。

お遍路の旅を続けながら、かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、深い傷と悔恨を残した過去と向き合い始め、新たに起こった事件と16年前の事件は同一犯によるものではないかと疑い始めるのです・・・

なかなか上手い着想の小説でした。お遍路の先の宿や地元の人たちの親切、お寺の特徴やお土産物を描きながら、フラッシュバックで過去の事件、彼と彼の妻と娘の訳あり過去の出来事等が明らかにされていきます。

秀逸な作品で、映画化やドラマ化されやすい筋立てだと思います。ただ前作の「孤狼の血」の迫力に慣らされた読者としてはちょいと物足りなさを感じました。パイコーだんだん大辛から中辛に格下げしたかのような刺激度低下という意味合いで。

それにしても柚月裕子さんは美人作家さんですね。そのまま映画出演できるんじゃないですか。f0090954_08091749.jpg

経歴には、「岩手県出身、山形県在住。本好きの両親の影響で、子供の頃より読書に親しむ。中学1年生の時に「シャーロック・ホームズ」を全て読み尽くし、複数の出版社の翻訳を読み比べて、ニュアンスの違いを味わう。21歳で結婚。子育てに専念する日々を経て、山形市で毎月開かれている「小説家(ライター)になろう講座」に通い始める。」とありました。

「小説家(ライター)になろう講座」の講師が志水辰夫氏だってことにも驚きでした。山形って小説家に向いた環境なのでしょうか。藤沢周平、井上ひさし、飯嶋和一、佐藤賢一、小川糸、長岡弘樹、奥泉光、丸谷才一等々、私の好きな作家さんの多くが山形出身です。漫画家のラズウェル細木もそうですね。


by zoompac | 2017-06-08 08:10 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「エリザベート ハプスブルグ家最後の皇女(下)」塚本哲也

f0090954_05494658.jpgこの物語の主人公エリザベートは1883年に、ハプスブルグ家最後の皇帝フランツ・ヨーゼフの孫娘として生まれました。日本では鹿鳴館が開館し、憲法起草のため欧州への調査旅行から伊藤博文が帰ってきた年です。(大日本帝国憲法は1889年公布、1890年施行です) アジアではフランスがヴェトナムを植民地化し、清仏戦争が始まった年です。 ドイツではダイムラーが自動車を発明した年となっています。

彼女は、1963年に生涯を閉じます。

彼女の生きた80年は波乱万丈でした。

1914年~1918年の第一次世界大戦では、ドイツ・オーストリア・オスマン帝国・ブルガリアからなる中央同盟国(同盟国とも称する)と、三国協商を形成していたイギリス・フランス・ロシアを中心とする連合国(協商国とも称する)の2つの陣営に分かれ、日本、イタリア、アメリカ合衆国も後に連合国側に立ち参戦しました。

1918年に、敗戦国となったオーストリア・ハンガリー帝国が、ハンガリーやチェコスロバキア等が民族主義政府として独立したため解体の憂き目にあい、ハプスブルク家も崩壊してしまいます。このときドイツのホーエンツォレルン家も滅亡しました。

その後1930年頃ヒトラーのナチスが台頭し、1933年に政権を掌握するとワイマール共和国を廃止し国家元首なる総統の地位につきます。やがてヨーロッパにおける地続きの領土がドイツ民族を養うために必要だとの主張から、ドイツ民族居住地域の併合政策を推しすすめることになります。手始めに行われたのが、1938年のドイツによるオーストリアの軍事的恫喝による無血併合 (アンシュルス)でした。

1939年にドイツは不倶戴天の敵とされていたソ連と不可侵条約を結び、ポーランドの首都ワルシャワへ進撃し第二次世界大戦の勃発となります。この電撃戦でワルシャワは一夜にして廃墟となりました。ソ連のスターリンはこのとき明らかにヒトラーの共犯者でした。 ヒトラーが1年半のうちにオーストリア、チェコスロバキア、ポーランドの中欧三国を入手したのに対して、バルト三国のリトアニア、ラトヴィア、エストニアに迫って軍事基地を確保し、さらにフィンランドにも襲い掛かってソ連・フィンランド戦争を始める始末でした。

1941年にフランスを降伏させたヒトラーは、突然独ソ不可侵条約を破ってソ連攻撃を開始します。このときの前線に立たされた主力がオーストリア軍だったそうです。 特に1942~43のスターリングラードでの凄絶な戦いで多くの死傷者を出してしまいました。 ドイツ軍85万人ソ連軍120万人死んだといわれています。 中でもドイツ軍の敗色濃くなったスターリングラードからの撤退時には、寒さや雪に強いということで選ばれたオーストリア出身の兵士が20万余ともいわれる犠牲を出したようです。 補給を断ち切られほぼ野ざらし状況で雪に埋もれて亡くなりました。 ナポレオンがロシアの冬将軍に敗れて撤退する悲惨な場面を彷彿させます。

1945年にドイツが遂に降伏するのですが、ウィーンは米英仏ソの4か国の占領軍の共同統治下に置かれてしまいます。オーストリアも戦争当事者だと主張するソ連とオーストリアはナチスドイツの被害国だとする米英仏に意見が対立し、その後ドイツは東西に分割され、前門の狼ヒトラーの後は後門の虎と化したスターリンが、ポーランドやハンガリーを武力と恫喝で共産主義化していきました。 オーストリアはなんとか分割は免れたものの、オーストリア・ハンガリー帝国という観点からは鉄のカーテンによって見事に分割されてしまったのです。

ナチス・ヒトラーも相当な脅威でしたが、ソ連のスターリンもヒトラーに勝るとも劣らない独裁者ぶりでした。

オーストリアの処分問題は、1945年から10年経った1955年にスイスのごとく中立を守るということで決着をみるのですが、その間、ウィーンにあったエリザベートの館はフランス代表団に接収されてしまいました。

他民族共存ともいわれたハプスブルク家のオーストリアでは絵画、音楽、文学、哲学が大いに栄えました。ハプスブルク家が滅亡した後のウィーンで文化的な業績が途絶えてしまったようにみえるのは淋しい限りです。 ロシア革命後のロシアと同じ印象です。

エリザベートが誕生した頃のウィーンは確かに世界の文化の中心でした。ヨハン・シュトラウス、マーラー、ブルックナーといった音楽家、画家のクリムト、ココシュカ、建築家のグロビウス、作家のツヴァイク、シュニッツラーのような人たちが活躍していました。


by zoompac | 2017-05-31 05:50 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「不発弾」 相場英雄

f0090954_06011216.jpgこの手の実在の政治家とか財界の大物のモデルを登場させた小説は、私にとっては、山崎豊子の「沈まぬ太陽」以来ですね。
日本航空の経営を題材とした「沈まぬ太陽」の場合は、少なくとも現役を引退した後の政治家とか財界の人がモデルでしたが、この小説には現役バリバリの政治家や財界人のモデルが登場しているのでびっくりです。

今の日本の企業不祥事に係る問題の根幹を、1986年12月から1991年2月までの4年3か月(51ヶ月)のバブル期に本業そっちのけで財テク狂奏曲で浮かれた企業人等が、その後のバブル崩壊で莫大な損害を被り、その穴埋めに頭を抱える姿と、そうした企業に先の1万円より目先の100円という類の金融デリバティブ商品提案で暗躍する外資系投資銀行の姿がわかりやすく描かれていました。

そういえば、ちょうど1990年前後ですね、デリバティブという名のブラックボックスのような金融派生商品が外資系投資銀行によって日本の金融機関や大手法人企業に紹介されたのは。

私が働いていた米系商業銀行も、証券業務に近い投資銀行系の色合いが強いデリバティブ商品を扱う部署が儲け頭となり、銀行内の文化が変わり、やがて合併を繰り返す変遷をたどることになりました。

デリバティブ商品もプレミアム(ヘッジ代とか保険代)を払ってリスクヘッジに使えば安全なのですが、反対に売り手に回ってプレミアム稼ぎなんかをやっていると、相場がおとなしいうちはいいのですが乱調になりあるトリガーポイントをヒットすれば大変です。売って稼いだプレミアム代もすっ飛ばすような損害を被ることになります。そのデリバティブの売りポジションが認識されそのリスクは荒れ狂う相場に左右される歯止めの効かないものになってしまうのです。

小説「沈まぬ太陽」の中で、日航が、長めのドル買い為替予約をばんばん入れて、うまくいけば利益確定し、うまくいかなければ(損失になれば)それを認識せず先に延ばして飛行機の購入ドル代金にそのままぶつけるような取引の手法が紹介されていました。

日本の会計に時価会計が取り入れられていなかったために横行した不正取引となった一例ですが、時価会計適用でなかったことこそが損失隠しの温床だったことをこの小説は示唆しています。時価会計で投資の運用損を適時認識しなくてよい会計制度は、財テクの資金運用に失敗した企業に、執行猶予を与えました。企業はその執行猶予の時間の間になんとか損失補填をしようとデリバティブ商品を使って丁半博打のようなことをやったりさらにその執行猶予期間を延長しようと躍起になったのです。

たとえば、100億円で購入した株や債券などが、バブルの破裂で今市場で売れば60億くらいでしか売れなくなったと仮定します。

時価会計だと今事業年度末に有価証券価額を100億から60億にし、40億円の有価証券運用損を認識しなくてはなりませんが、取得原価会計だと実際に売却するまで損の認識は不要で、そういう意味では現在分類付けが厳格に行われる満期保有目的有価証券との区別も曖昧でした。

こうした企業の帳簿の有価証券の中に潜む運用損を補うために外資系が日本のバブルの敗戦処理に売りまくったのが、ストラドルオプションの売りです。株でも為替でも使えるのですが、たとえば為替でいうと現在1ドル110円とした場合むこう3ヶ月のあいだ95円と125円のレンジ内に相場が収まればオプション料は丸々売り手のものとなります。ただレンジから相場が飛び出ると、たとえば上抜けしてオプション行使日に1ドル130円になったとしても150円になったとしても120円でオプション契約した金額のドルを売らなければならないのです。手元にドルがなければ、行使日の直物相場で130円ないし150円でドルを為替市場で買って、オプションを買った契約先に120円で売る羽目になって、損失補填どころか、損失が雪だるま式に増えてしまいます。

財テク失敗の損失補填の手法が、いろいろな派生を生み、しまいにはデフォールトスワップのようなアメリカの住宅ローン問題にまで発展していきましたが、OやTが頭文字の日本の大手企業が海外企業M&Aで行ったことも、純粋な事業目的の買収ではなくて、損失補填のための隠れ蓑であったような書かれ方でした。

そして、Tが上場廃止にならないのも、Tの闇将軍との異名を持つY氏の存在を匂わせていました。T社の原子力関連の買収だけでなく、日本郵政グループの海外買収絡みでも巨額の損失を出した元凶とされるY氏は東京証券取引所のトップでもあります。

まあ、フィクションですから信ぴょう性はさておいて、現首相のA氏も、いろいろ損失補填で暗躍した連中や、財界に広範囲のネットワークをもっていることも、アベノミクスと呼ばれるバブルの再燃に躍起になっている背景として説得力のある書きっぷりになっていました。

この相場英雄のペンによる小説「不発弾」は、日本経済の根幹に巣食う問題点、損失補填のための様々な手法が問題を解決するどころか問題の規模を大きくしたことをわかりやすく絵解きしてくれています。小説としてはイマイチですが、小説の手法をとった日本経済の解説書としてはなかなか興味深い内容でした。

by zoompac | 2017-05-30 06:01 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「小夜しぐれ_みをつくし料理帖5」高田郁

f0090954_07454632.jpgこのシリーズ、1冊が4編の短編で構成されています。

それぞれの編に澪が工夫する料理が出てきて、大抵、「つるや」の店主種市が口に入れた途端丸い目をきゅーと細めて「こいつぁいけねぇよぅ、お澪坊」という大絶賛の決まり文句がぽんぽん飛び出します。

このシリーズ4作目の「小夜しぐれ」には、「迷い蟹-浅蜊の御神酒蒸し」、「夢宵桜-菜の花尽くし」、本の題名の「小夜しぐれ-寿ぎ膳(ことほぎぜん)」、それと「嘉祥(かじょう)-ひとくち宝珠」の4編が収められていました。

「迷い蟹-浅蜊の御神酒蒸し」には、「つるや」の店主「種市」が、店名としている20年前に17歳で亡くなった一人娘「つる」の過去と年頃の娘が何故自殺したのかという事情が語られた編でした。とっくに縁切りになった元女房のお連(つるの産みの母親)が金に困って種市にせびりにやってきます。怒りにまかせて履物もそのまま裸足で追い返した種市でしたが、その履物を取りに来たお連は澪に昔のお連の男で、おつるを借金のカタとして金貸しの爺に引き渡して「つる」の自殺を招いた「錦吾」という男の所在を告げます。そのことを小耳にはさんだ種市は包丁を片手に錦吾を探し当てましたが・・・・。

「夢宵桜-菜の花尽くし」は、澪が、幼馴染「野江」(あさひ太夫)がいる吉原きっての大見世の「翁屋」の楼主から上客を招いての花見で使う仕出しを頼まれ、菜の花尽くしの料理に腕を振るう話でした。何を準備しようか迷う澪でしたが、あさひ太夫の野江ちゃんに食べてもらう料理を作るということで腹が決まりました。室内で用意された花見の宴席で公方さまの御落胤とされる坊主姿の客が酔って、幻の花魁とされる「あさひ太夫」の姿を観たいと騒ぎはじめます。しゃなりしゃなりと登場した「あさひ太夫」が歌舞伎でいうところの大見得を切る場面(家康が詠んだという花見の和歌を披露します)があり、酔った大虎の客もおとなしくなりました。教養深い旭日昇天「あさひ太夫」の姿を「澪」と一緒に読者の私もしっかり目撃させてもらいました。

「小夜しぐれ-寿ぎ膳(ことほぎぜん)」では、御典医の永田源斉に入れあげていた日本橋「伊勢屋」のおきゃんな一人娘美緒(こちらも、「みお」です)が、親から店の番頭との結婚を迫られ、家を飛び出して「つるや」に匿ってくれと泣きわめくところから話が始まりました。紆余曲折があって、結局、親の言う通り番頭との結婚を承諾することになりました。そして「澪」に婚礼の饗膳の依頼が舞込みました。このエピソードの中に、天満一兆案の御料さんで今は澪と共に暮らし「つるや」で働いている「芳」の一人息子「佐兵衛」の姿を「芳」も「澪」も見かけます。人ごみに紛れて、まだ、再会はかないませんでしたが。 朝ドラ「ひよっこ」で有村架純が演じている谷田部みね子の行方知れずのお父さんのイメージですね。今後の「再開」シーンを楽しみにしています。どちらとも。

「嘉祥(かじょう)-ひとくち宝珠」には、澪の想い人「小松原」が、その偽名ではなく、御膳奉行「小野寺数馬」として登場していました。前作で澪の身辺調査で登場した母に替わって、おせっかいで6人目の子を孕んでいる小野寺数馬の妹「早帆」が、三十路を過ぎても嫁取りをしない兄のために、「なんとか、兄が町人(澪のことです)と夫婦になれる道を探す」ことを決意します。小野寺は澪の好きな菓子「煎り豆」を使って、公方さまより、大名、小普請が菓子を賜る「嘉祥」という儀式での菓子を工夫する物語でした。 次作では、この「早帆」が「澪」の身辺に登場し一騒動が持ち上がる面白いことになりそうな予感です。

いろいろな局面で、迷いの多い「澪」ですが、小松原(実は小野寺)のアドバイスを反芻しています。

「あれこれと考えだせば、道は枝分かれする一方だ。良いか、道はひとつきりだ。」

この言葉を思い出すたび、心の重石が外れる「澪」なのです。

さて、長男君にとりあえずこれまで読んだシリーズ5冊を送ってあげようと思ったら、私の妻さんがこのシリーズ1巻目を読み始めていました。送れるのは半年くらい先になるかもしれません。別に急ぐことでもないので、まっいいか!

待望のNHK土曜時代劇「みをつくし料理帖」は本日夕方6時5分から8回に渡って放送開始です。楽しみですわい!

by zoompac | 2017-05-13 07:52 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「今朝の春_みをつくし料理帖4」高田郁

f0090954_07052467.jpgこのシリーズ、1冊が4編の短編で構成されています。

それぞれの編に澪が工夫する料理が出てきて、大抵、「つるや」の店主種市が口に入れた途端丸い目をきゅーと細めて「こいつぁいけねぇよぅ、お澪坊」という大絶賛の決まり文句が飛び出します。

このシリーズ4作目の「今朝の春」は、「花嫁御料-ははきぎ飯」、「友待つ雪-里の白雪」、「寒紅-ひょっとこ温寿司」、それと表題の「今朝の春-寒鰆の昆布締め」の4編が収められていました。

「花嫁御料-ははきぎ飯」は、澪の想い人小松原の母が「つるや」にやってきます。 嫁とりに興味を示さない息子に「みお」という謎の女がいるらしいことを嗅ぎつけて調査にやってきたのです。 紆余曲折があって結局小松原の母は澪をいたく気に入るのですが、嫁とりの対象としては身分の違いで話にならないことを澪に告げます。 澪は諦めようと自分に言い聞かしますが・・・、恋の病は理屈で収まりません。

「友待つ雪-里の白雪」では、戯作者清右ヱ門がこともあろうに、吉原の伝説の花魁「あさひ太夫」(澪の幼馴染の野江)の正体暴露物語を手がけます。運の強い「旭日昇天」の異名を持つことから、江戸でも屈指の御用商人3人が競って身請け銭を積み上げたことから他の客を取る必要がなく楼主が幻の花魁という噂を流したものですから、この戯作は評判を呼ぶに違いありません。 版元も情報収集に援助の金を惜しみません。 澪は清右ヱ門と蕪料理で賭けに出ます。清右ヱ門のお気に入りの料理であれば、あさひ太夫の戯作を書くのを止めて欲しいというのです。大阪の大きな水害で野江と共に孤児になった澪の身の上話と今も変わらぬ友情を知って清右ヱ門は、戯作を書くのを止めることにしました。 それだけでなく、澪に料理で成功し、あさひ太夫をお前が身請けしろと発破をかけます。良い噺でした。気に入りました。

「寒紅-ひょっとこ温寿司」これは、澪と元天満一兆庵の御寮人芳(孤児になった澪の育て親)が住んでいる長屋のおりょう(「つるや」でお運びさんをやっている)とその夫で大工の伊佐三と訳ありで口の効けない太一の物語でした。

「今朝の春-寒鰆の昆布締め」元天満一兆庵の跡取り息子で江戸店を任されていた佐兵衛はあることから夜逃げをして行方不明です。江戸一番といわれる「登龍楼」との料理勝負には気乗りしないお澪でしたが、佐兵衛を探し出すきっかけになればとその勝負を受けることにします。 「寒鰆の昆布締め」で勝負に出たお澪でしたが、軍配は鰆の卵でカラスミを造った登龍楼に上がりました。
「勝つことのみに拘っていた者が敗れたなら、それまでの精進は当人にとっての無駄。ただ無心に精進を重ねたならその精進は己の糧となる。」と小松原の掛けてくれた言葉を胸の内で繰り返す澪でした。

長男君の誕生日が5月の真ん中にやってきます。前回漫画「あんどーなつ」を贈ったら、いたく気に入ったようで不足の巻も自腹で取り揃えて読んだようです。このみをつくし料理帖シリーズは全巻揃えると10冊か11冊になるのですが、とりあえず5巻目の「小夜しぐれ」まで読んで誕生日プレゼントとして送ってみようと思います。

長男君が、今、大阪の居酒屋で料理を作っていることと、高校までは東京暮らしだったので、上方と江戸の食文化の違いのエピソードがテンコ盛りのこの小説をきっと気に入ってくれると思っています。 今週の土曜日からTVドラマも始まりますしね。

by zoompac | 2017-05-11 07:06 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「エリザベート ハプスブルグ家最後の皇女(上)」塚本哲也 _オーストリア視点の全ヨーロッパ史

f0090954_05565764.jpg第24回(1993年) 大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品です。(2017年から選考に一般読者の投票も加わり正式名称が大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞と改められることになりました。単に大宅賞と縮めて呼ばれることも多いようです。)

著者塚本哲也氏は、毎日新聞のウィーン、後にプラハの特派員であり、1963年、「エリーザベト・ペツネック」なる人物の訃報記事に目を留めたところから、この大宅賞受賞ノンフィクション物語の構想が上がりました。

実は、私がこの本に興味を持つことになったきっかけは、昨年の塚本哲也氏の訃報(享年87歳)と共に掲載された同氏の代表作であるこの作品の紹介記事でした。訃報繋がりですね。

単にエリザベートの波乱万丈の一生というより、その背景の第一次世界大戦前夜から第二次世界大戦終結の壮大なヨーロッパ史のうねりを記者の目でしっかり腑分けして見せてくれています。

読んでいるうちに望外の拾いものをした感じで読書の喜びもひとしおでした。

言うまでもないことだと思いますが、このハプスブルグ家最後の皇女として描かれているエリザベート(エリーザベト・ペツネック)は、宝塚歌劇団の「エリザベート~愛と死の輪舞(ロンド)」で有名なシシィの愛称で知られる皇帝フランツ・ヨーゼフの妃のエリザベートではありません。 その皇后エリザベートと皇帝フランツ・ヨーゼフの間に生まれたオーストリア=ハンガリー帝国皇太子ルドルフの1人娘のエリザベート(母はステファニー妃)がこの作品で語られるハプスブルグ家最後の皇女エリザベートです。 すなわちシシィの孫娘になります。

そのエリザベートの父親である皇太子ルドルフは愛人と情死したことで有名でその事件は、シャルル・ポワイエ主演の「うたかたの恋」という1930年のフランス映画になっています。この事件はその地名からマイヤーリング事件と呼ばれ、後の1957年にはオードリー・ヘップバーン(ルドルフの愛人男爵令嬢マリー・フォン・ヴェッツェラ役)とメル・ファーラー(ルドルフ役)の共演でアメリカ映画「マイヤーリング」としてリメイクされました。

ハプスブルク家は近世ドイツにおける最高の名家で、長きにわたって神聖ローマ帝国皇帝、オーストリア帝国皇帝として中部ヨーロッパに君臨しました。

「戦争は他家に任せておけ。幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ」という家訓に現れていますが、近隣の諸侯と姻戚関係を結んで発展し、勢力を拡大し、ドイツ諸侯の中でも抜きんでた存在となり、1273年ついに神聖ローマ帝国の皇帝に選出されます。

以来、着々と版図を広げ、オーストリア、ボヘミア、ハンガリー、北イタリア、スペイン等を傘下とする広大な領土を持つ帝国となります。

戦争よりも婚姻を手段とする領土拡大の一例は、女帝マリア・テレジアの娘マリー・アントワネットがフランスのルイ16世の妃となったり、かのナポレオンも妃をハプスブルグ家から迎えたりしていることでも有名ですね。

繰り返しになりますが、この本には、第一次世界大戦(1914~1918)と第二次世界大戦(1939年~1945年)の二つの大嵐を切り抜けて1963年に亡くなったエリザベート・ペネツク個人の伝記物語というよりも、むしろ滅び逝くハプスブルク家(オーストリア=ハンガリー帝国)、あるいはハプスブルク家滅亡後のオーストリアの視点から当時の欧州のパワーバランスと台頭するナチズムの脅威が描かれていました。

私の読んだ上巻では、1963年のエリザベートの訃報から、1889年のエリザベートの父親ルドルフのマイヤーリングの森での心中事件に飛び、そこからさらに遡って1883年にエリザベートが誕生する下りと、オーストリア皇太子のルドルフを取巻く欧州の勢力図が丁寧に説明されていました。そしてその勢力図の塗り替わりが、波乱万丈のエリザベートの人生と共に、第一次大戦後崩壊したドイツ帝国の後を継いだワイマール共和国(1919~1933)がヒトラー独裁政権を生んだ1933年まで描かれて、下巻へ続くことになっています。

エリザベートが誕生した頃、ドイツは鉄血宰相ビスマルクが縦横無尽の活躍でプロイセンを中心にほぼ統一されたドイツ帝国が覇を唱えていました。

ドイツを国とするならプロイセンは都道府県名のようなものです。その意味ではこの頃のオーストリアも国というより都道府県と考えた方が無難です。ハプスブルグ家・オーストリアの皇太子ルドルフに対して、ホーエンツォレルン家・プロイセンの皇太子はウィルヘルム2世でした。後にドイツ皇帝となるウィルヘルム2世はプロイセン王子フリードリヒ(フリードリヒ3世)とイギリス王女ヴィクトリアの長男としてベルリンに生まれました。

後にヒトラー政権はナチスドイツを第三帝国と呼ぶようになりますが、その意味では、この鉄血宰相ビスマルクやウィルヘルム2世が活躍したプロイセン王国がドイツ諸邦を統一したドイツ帝国(1871年 - 1918年)が「第二帝国」です。ちなみに「第一帝国」は神聖ローマ帝国(962年 - 1806年)のことです。

ウィルヘルム2世は、ずっとドイツ帝国の建設者であるビスマルクを尊敬していましたが、皇帝即位後には親政に邪魔な存在としてビスマルクを排除します。さらに、外交では一貫して帝国主義政策を推進し、海軍力を増強して新たな植民地の獲得を狙ったことから、イギリスやフランス、ロシアなど他の帝国主義国と対立を深め、最終的に第一次世界大戦を招くことになりました。

その第一次世界大戦でドイツ帝国はオーストリア=ハンガリー、オスマン=トルコ、ブルガリアと同盟を結んでイギリス、フランス、ロシアを相手に4年以上にわたって消耗戦・総力戦で戦うことになったのです。敗戦によって国民の不満が爆発し、ウィルヘルム二世は退位し、帝政は崩壊し、ドイツは1919年に発足して1933年に崩壊するワイマール共和国という共和制に移行します。

その民主的な共和制の中から、ヒトラーを党首とするナチストという妖怪を生み出すことになるいきさつもこの上巻でカバーしています。

情死したこと有名なルドルフですが、当時の欧州情勢の分析や外交能力は優れていたようです。彼はジャーナリズム関係の友達が多く欧州全域にわたって広い情報網をもっていました。反ドイツ主義の先鋒でトラと呼ばれたフランスのクレマンソーとも親交がありました。

民族主義的なドイツのウィルヘルム2世とは犬猿の仲で、ウィルヘルム2世の母親の英国王女ヴィクトリアも自分の息子よりむしろルドルフをかわいがっていたようです。

ルドルフは、民族排他主義的なドイツを嫌い、ハプスブルグ国家オーストリアは、さまざまな人種、民族(ドイツ人、スラヴ人、ハンガリー人、ポーランド人)が1つの統合された指導部の下で一緒になった連合国家にすべきとの理念に燃えていました。今の欧州連合の発想と同じです。そうした自由主義的な意味合いで西ヨーロッパの英国やフランス等の民主主義国家とうまくやっていきたいと願っていたのです。

ところが、ドイツを仮想敵国視する彼の考えは、父親のオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に受け入れられず鋭く対立してしまいます。

皇帝だった父だけには遺書を残さず34歳の若さで愛人と心中を遂げてしまったルドルフの死の裏には、父親の確執と何よりハプスブルグ家崩壊への不安と焦りと失望感の深さが見え隠れしているようでした。

人によっては、第一次世界大戦の遠因をウィルヘルム2世への牽制となっていたルドルフの欠如をあげる程の有望な人物でした。ルドルフが生きていればドイツが第一次大戦を引き起こしたにせよオーストリアがドイツと同盟を組むことはなかったと思われていたからです。

ルドルフは妹によく、「ハプスブルグ家が滅ぶとすればスラヴ民族主義のためでなく、ドイツ民族主義によってだろうね」と話していたそうです。

この上巻には、呪われたハプスブルグ家のエピソードも満載でした。

1867年、皇弟フェルディナンド・マキシミリアンが、フランスの皇帝ナポレオン3世によってメキシコ皇帝に担ぎ出されたが、独立運動が起こって35歳で銃殺

22年後の1889年のエリザベートの父親ルドルフのマイヤーリングの森での心中事件

その約10年後の1898年には祖母シシィがスイスのレマン湖で暗殺(この悲劇が、死神の登場する宝塚歌劇団の「エリザベート~愛と死の輪舞(ロンド)」のテーマになっているようです。)

その2年前の1896年に、皇帝継承者となったフランツ・ヨーゼフ皇帝の三番目の弟カール・ルードリッヒが聖地巡礼先のパレスティナで赤痢にかかって死亡

そして、1914年夏、第一次大戦のきっかけとなったのがそのカールの息子で皇位継承者のフランツ・フェルナンドのバルカン半島のサラエヴォでの暗殺

その他、ヒトラーが1913年まで7年間、17歳から24歳までウィーンに暮らし、その間2度美術学校の入学試験に落第したエピソードも、そしてそれが彼自身の著書「わが闘争」に体験談として書かれていることも紹介してくれています。 同じころロシアの革命家トロツキーやスターリンもウィーンにいました。後にスターリンと大喧嘩するユーゴスラビアのチトー大統領もクロアチアから錠前工として古き良き時代のウィーンの空気を吸った1人でした。

この本の欧州勢力図の説明は、オーストリア=ハンガリー帝国の視点で語られていました。 ドイツ(プロシア)とロシアの二大勢力に挟まれた中欧、東欧の事情にもしっかり目が行き届いておりウィーンを中心とした一流のヨーロッパ史となっていました。


by zoompac | 2017-05-09 05:57 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「想い雲_みをつくし料理帖3」高田郁

f0090954_06023845.jpg天満一兆庵の江戸店を任されていた若旦那佐兵衛が、吉原通いに明け暮れ、莫大な借財を作って店を手放し、消息を絶ったという話しが、実は富三という天満一兆庵の奉公人が店の金を使い込んだあげく、佐兵衛をだましてありもしない女郎殺しにでっち上げて逃亡させたことがわかるエピソードが盛り込まれていました。

上方と江戸の料理比較で、暑気払いとくれば江戸では泥鰌汁、上方では鱧(ハモ)だと紹介されていました。

鱧はやっかいな魚で、血も表面の滑りにも毒があるそうで、それは鰻(ウナギ)も同じだそうです。傷のある手で触ってその毒が入ると腫れるそうです。
鱧が鰻よりさらに厄介なのは、身の中に小枝のように張り巡らされた骨です。この骨切りという作業は熟練が必要です。

吉原での八朔の鱧料理に、鱧を捌いた経験のない江戸の料理人がお手上げで、澪に白羽の矢が当たるエピソードを面白く読みました。

「つる屋」の下足番ふきの弟の健坊の「登龍楼」の藪入りですが、姉と一緒に暮らしたい健坊が藪入り明けに「登龍楼」に戻らず行方不明になるエピソードが語られる「こんがり焼き柿」もなかなかの人情噺でした。

短編として1つ1つ完結の章もありますが、各章で少しづつ書き足して串刺し的に物語を進めている話題もあります。 お芳の息子の佐兵衛の行方や澪の思い人の小松原との恋の行方等です。

澪が次第に心を寄せ来店を待ち遠しく思う謎の侍小松原の正体も、どうやら浪人ではなく公方様の食膳を掌る(つかさどる)御膳奉行らしいことがわかってきました。

少しづつですが、薄皮を剥ぐように、底流にある物語の展開も見え始めてきました。


by zoompac | 2017-05-08 06:03 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「ツバキ文具店」 小川糸

f0090954_12323895.jpg今年の本屋大賞ノミネート作品10冊のうち、第4位の小説です。(1位「蜜蜂と遠雷」恩田陸、2位「みかづき」森絵都、3位「罪の声」塩田武士)

その小川糸の原作小説と同名のドラマを金曜日のNHKドラマ10で放映中です。

主人公の鳩子(通称ポッポちゃん)を多部未華子が演じています。

ポッポちゃんは、古都鎌倉にある「ツバキ文具店」で祖母にひらがな、漢字、習字等、文字に関するあらゆることを厳しく仕込まれ育ちました。自分を捨てた母のことは、顔すら知りません。

祖母に反発して、高校2年になってガングロヤンキーに転身します。デザイン系の専門学校に入ってガングロは卒業しましたが、専門学校を卒業すると鎌倉を飛び出してしまいました。確執を残したまま先代(祖母)が亡くなり8年ぶりに帰郷します。思いがけず代書屋を継ぐことになり、周りの人に支えられながらさまざまな手紙の代書に取り組むことになるというお話です。

落語の「代書」は大笑いですが(2016年NHK新人賞受賞の桂雀太の「代書」が絶品です。彼も落語の「枕」でこのNHKドラマに触れていました。)、この「ツバキ文具店」の代書屋も面白いですよ。

筆、ペン、インク、紙等に関する蘊蓄満載です。それに、「ツバキ文具店」への代書の依頼が相当変わっているのです。

「伝えたい思いありませんか? その手紙、あなたに代わって書きます」という呼びかけに、舞い込んできた依頼は、

「ペットの死に対するお悔やみ状」、「離婚のお知らせ」、「借金依頼への断りの手紙」、鏡文字を使った「絶縁状」、「天国からのラブレター」等々です。

小説の頁の間に、それらの代筆手紙の写真が掲載されてなかなか面白い趣向が凝らされています。 依頼への応え方も見事です。

四苦八苦、苦労して仕事をこなしていると、やがて海外に住む祖母の元文通相手のお孫さんから、鳩子へ祖母の手紙が渡されることになります。そこにはポッポちゃんの知らない祖母の孫鳩子への愛情、思いやりにあふれた文章が綴られていました。鳩子にとって悔いの残ることですが、後の祭りです。 孝行したいときに、祖母は無しです。

そんな折、いい言葉に出会います。

「亡くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいい。」「誰かにおんぶしてもらったら、今度は誰かをおんぶしてあげればいい。」

妻に先立たれた幼い娘持ちの小さなレストラン経営者の言葉は、鳩子の胸に刺さり、実質的なプロポーズの言葉となりました。

この本のもう一つの効用は、鎌倉の四季の風物詩に触れながらの美味しい食べ物情報です。地元の人目線です。

たとえば、光泉のいなりずし、鳥一のコロッケ、荻原精肉店のローストビーフ、ベルグフェルドのソーセージ、麩帆の麩まんじゅう、つるやの鰻、オクシモロンのカレー等々です。 冒頭に鎌倉のイラストマップがあって小説を読みながら頭の中で寺巡りや食べ歩きを疑似体験できます。

言葉の重み、大事さは、原田マハのスピーチライターの小説「本日はお日柄もよく」でも学びましたが、この「ツバキ文具店」からも感じました。

「言葉は残るのだ。相手がその手紙を読んでしまったらもう後戻りはできない。」

by zoompac | 2017-04-28 12:33 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)
RELEASE INFORMATION NEW ALBUM

[通常盤]「Now On Sale!!」
TOCP-66380/¥2,548(税込)

[DVD付 初回生産限定盤]
「Now On Sale!!」
TOCP-66381/¥3,500(税込)

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