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読書「小夜しぐれ_みをつくし料理帖5」高田郁

f0090954_07454632.jpgこのシリーズ、1冊が4編の短編で構成されています。

それぞれの編に澪が工夫する料理が出てきて、大抵、「つるや」の店主種市が口に入れた途端丸い目をきゅーと細めて「こいつぁいけねぇよぅ、お澪坊」という大絶賛の決まり文句がぽんぽん飛び出します。

このシリーズ4作目の「小夜しぐれ」には、「迷い蟹-浅蜊の御神酒蒸し」、「夢宵桜-菜の花尽くし」、本の題名の「小夜しぐれ-寿ぎ膳(ことほぎぜん)」、それと「嘉祥(かじょう)-ひとくち宝珠」の4編が収められていました。

「迷い蟹-浅蜊の御神酒蒸し」には、「つるや」の店主「種市」が、店名としている20年前に17歳で亡くなった一人娘「つる」の過去と年頃の娘が何故自殺したのかという事情が語られた編でした。とっくに縁切りになった元女房のお連(つるの産みの母親)が金に困って種市にせびりにやってきます。怒りにまかせて履物もそのまま裸足で追い返した種市でしたが、その履物を取りに来たお連は澪に昔のお連の男で、おつるを借金のカタとして金貸しの爺に引き渡して「つる」の自殺を招いた「錦吾」という男の所在を告げます。そのことを小耳にはさんだ種市は包丁を片手に錦吾を探し当てましたが・・・・。

「夢宵桜-菜の花尽くし」は、澪が、幼馴染「野江」(あさひ太夫)がいる吉原きっての大見世の「翁屋」の楼主から上客を招いての花見で使う仕出しを頼まれ、菜の花尽くしの料理に腕を振るう話でした。何を準備しようか迷う澪でしたが、あさひ太夫の野江ちゃんに食べてもらう料理を作るということで腹が決まりました。室内で用意された花見の宴席で公方さまの御落胤とされる坊主姿の客が酔って、幻の花魁とされる「あさひ太夫」の姿を観たいと騒ぎはじめます。しゃなりしゃなりと登場した「あさひ太夫」が歌舞伎でいうところの大見得を切る場面(家康が詠んだという花見の和歌を披露します)があり、酔った大虎の客もおとなしくなりました。教養深い旭日昇天「あさひ太夫」の姿を「澪」と一緒に読者の私もしっかり目撃させてもらいました。

「小夜しぐれ-寿ぎ膳(ことほぎぜん)」では、御典医の永田源斉に入れあげていた日本橋「伊勢屋」のおきゃんな一人娘美緒(こちらも、「みお」です)が、親から店の番頭との結婚を迫られ、家を飛び出して「つるや」に匿ってくれと泣きわめくところから話が始まりました。紆余曲折があって、結局、親の言う通り番頭との結婚を承諾することになりました。そして「澪」に婚礼の饗膳の依頼が舞込みました。このエピソードの中に、天満一兆案の御料さんで今は澪と共に暮らし「つるや」で働いている「芳」の一人息子「佐兵衛」の姿を「芳」も「澪」も見かけます。人ごみに紛れて、まだ、再会はかないませんでしたが。 朝ドラ「ひよっこ」で有村架純が演じている谷田部みね子の行方知れずのお父さんのイメージですね。今後の「再開」シーンを楽しみにしています。どちらとも。

「嘉祥(かじょう)-ひとくち宝珠」には、澪の想い人「小松原」が、その偽名ではなく、御膳奉行「小野寺数馬」として登場していました。前作で澪の身辺調査で登場した母に替わって、おせっかいで6人目の子を孕んでいる小野寺数馬の妹「早帆」が、三十路を過ぎても嫁取りをしない兄のために、「なんとか、兄が町人(澪のことです)と夫婦になれる道を探す」ことを決意します。小野寺は澪の好きな菓子「煎り豆」を使って、公方さまより、大名、小普請が菓子を賜る「嘉祥」という儀式での菓子を工夫する物語でした。 次作では、この「早帆」が「澪」の身辺に登場し一騒動が持ち上がる面白いことになりそうな予感です。

いろいろな局面で、迷いの多い「澪」ですが、小松原(実は小野寺)のアドバイスを反芻しています。

「あれこれと考えだせば、道は枝分かれする一方だ。良いか、道はひとつきりだ。」

この言葉を思い出すたび、心の重石が外れる「澪」なのです。

さて、長男君にとりあえずこれまで読んだシリーズ5冊を送ってあげようと思ったら、私の妻さんがこのシリーズ1巻目を読み始めていました。送れるのは半年くらい先になるかもしれません。別に急ぐことでもないので、まっいいか!

待望のNHK土曜時代劇「みをつくし料理帖」は本日夕方6時5分から8回に渡って放送開始です。楽しみですわい!

by zoompac | 2017-05-13 07:52 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「今朝の春_みをつくし料理帖4」高田郁

f0090954_07052467.jpgこのシリーズ、1冊が4編の短編で構成されています。

それぞれの編に澪が工夫する料理が出てきて、大抵、「つるや」の店主種市が口に入れた途端丸い目をきゅーと細めて「こいつぁいけねぇよぅ、お澪坊」という大絶賛の決まり文句が飛び出します。

このシリーズ4作目の「今朝の春」は、「花嫁御料-ははきぎ飯」、「友待つ雪-里の白雪」、「寒紅-ひょっとこ温寿司」、それと表題の「今朝の春-寒鰆の昆布締め」の4編が収められていました。

「花嫁御料-ははきぎ飯」は、澪の想い人小松原の母が「つるや」にやってきます。 嫁とりに興味を示さない息子に「みお」という謎の女がいるらしいことを嗅ぎつけて調査にやってきたのです。 紆余曲折があって結局小松原の母は澪をいたく気に入るのですが、嫁とりの対象としては身分の違いで話にならないことを澪に告げます。 澪は諦めようと自分に言い聞かしますが・・・、恋の病は理屈で収まりません。

「友待つ雪-里の白雪」では、戯作者清右ヱ門がこともあろうに、吉原の伝説の花魁「あさひ太夫」(澪の幼馴染の野江)の正体暴露物語を手がけます。運の強い「旭日昇天」の異名を持つことから、江戸でも屈指の御用商人3人が競って身請け銭を積み上げたことから他の客を取る必要がなく楼主が幻の花魁という噂を流したものですから、この戯作は評判を呼ぶに違いありません。 版元も情報収集に援助の金を惜しみません。 澪は清右ヱ門と蕪料理で賭けに出ます。清右ヱ門のお気に入りの料理であれば、あさひ太夫の戯作を書くのを止めて欲しいというのです。大阪の大きな水害で野江と共に孤児になった澪の身の上話と今も変わらぬ友情を知って清右ヱ門は、戯作を書くのを止めることにしました。 それだけでなく、澪に料理で成功し、あさひ太夫をお前が身請けしろと発破をかけます。良い噺でした。気に入りました。

「寒紅-ひょっとこ温寿司」これは、澪と元天満一兆庵の御寮人芳(孤児になった澪の育て親)が住んでいる長屋のおりょう(「つるや」でお運びさんをやっている)とその夫で大工の伊佐三と訳ありで口の効けない太一の物語でした。

「今朝の春-寒鰆の昆布締め」元天満一兆庵の跡取り息子で江戸店を任されていた佐兵衛はあることから夜逃げをして行方不明です。江戸一番といわれる「登龍楼」との料理勝負には気乗りしないお澪でしたが、佐兵衛を探し出すきっかけになればとその勝負を受けることにします。 「寒鰆の昆布締め」で勝負に出たお澪でしたが、軍配は鰆の卵でカラスミを造った登龍楼に上がりました。
「勝つことのみに拘っていた者が敗れたなら、それまでの精進は当人にとっての無駄。ただ無心に精進を重ねたならその精進は己の糧となる。」と小松原の掛けてくれた言葉を胸の内で繰り返す澪でした。

長男君の誕生日が5月の真ん中にやってきます。前回漫画「あんどーなつ」を贈ったら、いたく気に入ったようで不足の巻も自腹で取り揃えて読んだようです。このみをつくし料理帖シリーズは全巻揃えると10冊か11冊になるのですが、とりあえず5巻目の「小夜しぐれ」まで読んで誕生日プレゼントとして送ってみようと思います。

長男君が、今、大阪の居酒屋で料理を作っていることと、高校までは東京暮らしだったので、上方と江戸の食文化の違いのエピソードがテンコ盛りのこの小説をきっと気に入ってくれると思っています。 今週の土曜日からTVドラマも始まりますしね。

by zoompac | 2017-05-11 07:06 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「エリザベート ハプスブルグ家最後の皇女(上)」塚本哲也 _オーストリア視点の全ヨーロッパ史

f0090954_05565764.jpg第24回(1993年) 大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品です。(2017年から選考に一般読者の投票も加わり正式名称が大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞と改められることになりました。単に大宅賞と縮めて呼ばれることも多いようです。)

著者塚本哲也氏は、毎日新聞のウィーン、後にプラハの特派員であり、1963年、「エリーザベト・ペツネック」なる人物の訃報記事に目を留めたところから、この大宅賞受賞ノンフィクション物語の構想が上がりました。

実は、私がこの本に興味を持つことになったきっかけは、昨年の塚本哲也氏の訃報(享年87歳)と共に掲載された同氏の代表作であるこの作品の紹介記事でした。訃報繋がりですね。

単にエリザベートの波乱万丈の一生というより、その背景の第一次世界大戦前夜から第二次世界大戦終結の壮大なヨーロッパ史のうねりを記者の目でしっかり腑分けして見せてくれています。

読んでいるうちに望外の拾いものをした感じで読書の喜びもひとしおでした。

言うまでもないことだと思いますが、このハプスブルグ家最後の皇女として描かれているエリザベート(エリーザベト・ペツネック)は、宝塚歌劇団の「エリザベート~愛と死の輪舞(ロンド)」で有名なシシィの愛称で知られる皇帝フランツ・ヨーゼフの妃のエリザベートではありません。 その皇后エリザベートと皇帝フランツ・ヨーゼフの間に生まれたオーストリア=ハンガリー帝国皇太子ルドルフの1人娘のエリザベート(母はステファニー妃)がこの作品で語られるハプスブルグ家最後の皇女エリザベートです。 すなわちシシィの孫娘になります。

そのエリザベートの父親である皇太子ルドルフは愛人と情死したことで有名でその事件は、シャルル・ポワイエ主演の「うたかたの恋」という1930年のフランス映画になっています。この事件はその地名からマイヤーリング事件と呼ばれ、後の1957年にはオードリー・ヘップバーン(ルドルフの愛人男爵令嬢マリー・フォン・ヴェッツェラ役)とメル・ファーラー(ルドルフ役)の共演でアメリカ映画「マイヤーリング」としてリメイクされました。

ハプスブルク家は近世ドイツにおける最高の名家で、長きにわたって神聖ローマ帝国皇帝、オーストリア帝国皇帝として中部ヨーロッパに君臨しました。

「戦争は他家に任せておけ。幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ」という家訓に現れていますが、近隣の諸侯と姻戚関係を結んで発展し、勢力を拡大し、ドイツ諸侯の中でも抜きんでた存在となり、1273年ついに神聖ローマ帝国の皇帝に選出されます。

以来、着々と版図を広げ、オーストリア、ボヘミア、ハンガリー、北イタリア、スペイン等を傘下とする広大な領土を持つ帝国となります。

戦争よりも婚姻を手段とする領土拡大の一例は、女帝マリア・テレジアの娘マリー・アントワネットがフランスのルイ16世の妃となったり、かのナポレオンも妃をハプスブルグ家から迎えたりしていることでも有名ですね。

繰り返しになりますが、この本には、第一次世界大戦(1914~1918)と第二次世界大戦(1939年~1945年)の二つの大嵐を切り抜けて1963年に亡くなったエリザベート・ペネツク個人の伝記物語というよりも、むしろ滅び逝くハプスブルク家(オーストリア=ハンガリー帝国)、あるいはハプスブルク家滅亡後のオーストリアの視点から当時の欧州のパワーバランスと台頭するナチズムの脅威が描かれていました。

私の読んだ上巻では、1963年のエリザベートの訃報から、1889年のエリザベートの父親ルドルフのマイヤーリングの森での心中事件に飛び、そこからさらに遡って1883年にエリザベートが誕生する下りと、オーストリア皇太子のルドルフを取巻く欧州の勢力図が丁寧に説明されていました。そしてその勢力図の塗り替わりが、波乱万丈のエリザベートの人生と共に、第一次大戦後崩壊したドイツ帝国の後を継いだワイマール共和国(1919~1933)がヒトラー独裁政権を生んだ1933年まで描かれて、下巻へ続くことになっています。

エリザベートが誕生した頃、ドイツは鉄血宰相ビスマルクが縦横無尽の活躍でプロイセンを中心にほぼ統一されたドイツ帝国が覇を唱えていました。

ドイツを国とするならプロイセンは都道府県名のようなものです。その意味ではこの頃のオーストリアも国というより都道府県と考えた方が無難です。ハプスブルグ家・オーストリアの皇太子ルドルフに対して、ホーエンツォレルン家・プロイセンの皇太子はウィルヘルム2世でした。後にドイツ皇帝となるウィルヘルム2世はプロイセン王子フリードリヒ(フリードリヒ3世)とイギリス王女ヴィクトリアの長男としてベルリンに生まれました。

後にヒトラー政権はナチスドイツを第三帝国と呼ぶようになりますが、その意味では、この鉄血宰相ビスマルクやウィルヘルム2世が活躍したプロイセン王国がドイツ諸邦を統一したドイツ帝国(1871年 - 1918年)が「第二帝国」です。ちなみに「第一帝国」は神聖ローマ帝国(962年 - 1806年)のことです。

ウィルヘルム2世は、ずっとドイツ帝国の建設者であるビスマルクを尊敬していましたが、皇帝即位後には親政に邪魔な存在としてビスマルクを排除します。さらに、外交では一貫して帝国主義政策を推進し、海軍力を増強して新たな植民地の獲得を狙ったことから、イギリスやフランス、ロシアなど他の帝国主義国と対立を深め、最終的に第一次世界大戦を招くことになりました。

その第一次世界大戦でドイツ帝国はオーストリア=ハンガリー、オスマン=トルコ、ブルガリアと同盟を結んでイギリス、フランス、ロシアを相手に4年以上にわたって消耗戦・総力戦で戦うことになったのです。敗戦によって国民の不満が爆発し、ウィルヘルム二世は退位し、帝政は崩壊し、ドイツは1919年に発足して1933年に崩壊するワイマール共和国という共和制に移行します。

その民主的な共和制の中から、ヒトラーを党首とするナチストという妖怪を生み出すことになるいきさつもこの上巻でカバーしています。

情死したこと有名なルドルフですが、当時の欧州情勢の分析や外交能力は優れていたようです。彼はジャーナリズム関係の友達が多く欧州全域にわたって広い情報網をもっていました。反ドイツ主義の先鋒でトラと呼ばれたフランスのクレマンソーとも親交がありました。

民族主義的なドイツのウィルヘルム2世とは犬猿の仲で、ウィルヘルム2世の母親の英国王女ヴィクトリアも自分の息子よりむしろルドルフをかわいがっていたようです。

ルドルフは、民族排他主義的なドイツを嫌い、ハプスブルグ国家オーストリアは、さまざまな人種、民族(ドイツ人、スラヴ人、ハンガリー人、ポーランド人)が1つの統合された指導部の下で一緒になった連合国家にすべきとの理念に燃えていました。今の欧州連合の発想と同じです。そうした自由主義的な意味合いで西ヨーロッパの英国やフランス等の民主主義国家とうまくやっていきたいと願っていたのです。

ところが、ドイツを仮想敵国視する彼の考えは、父親のオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に受け入れられず鋭く対立してしまいます。

皇帝だった父だけには遺書を残さず34歳の若さで愛人と心中を遂げてしまったルドルフの死の裏には、父親の確執と何よりハプスブルグ家崩壊への不安と焦りと失望感の深さが見え隠れしているようでした。

人によっては、第一次世界大戦の遠因をウィルヘルム2世への牽制となっていたルドルフの欠如をあげる程の有望な人物でした。ルドルフが生きていればドイツが第一次大戦を引き起こしたにせよオーストリアがドイツと同盟を組むことはなかったと思われていたからです。

ルドルフは妹によく、「ハプスブルグ家が滅ぶとすればスラヴ民族主義のためでなく、ドイツ民族主義によってだろうね」と話していたそうです。

この上巻には、呪われたハプスブルグ家のエピソードも満載でした。

1867年、皇弟フェルディナンド・マキシミリアンが、フランスの皇帝ナポレオン3世によってメキシコ皇帝に担ぎ出されたが、独立運動が起こって35歳で銃殺

22年後の1889年のエリザベートの父親ルドルフのマイヤーリングの森での心中事件

その約10年後の1898年には祖母シシィがスイスのレマン湖で暗殺(この悲劇が、死神の登場する宝塚歌劇団の「エリザベート~愛と死の輪舞(ロンド)」のテーマになっているようです。)

その2年前の1896年に、皇帝継承者となったフランツ・ヨーゼフ皇帝の三番目の弟カール・ルードリッヒが聖地巡礼先のパレスティナで赤痢にかかって死亡

そして、1914年夏、第一次大戦のきっかけとなったのがそのカールの息子で皇位継承者のフランツ・フェルナンドのバルカン半島のサラエヴォでの暗殺

その他、ヒトラーが1913年まで7年間、17歳から24歳までウィーンに暮らし、その間2度美術学校の入学試験に落第したエピソードも、そしてそれが彼自身の著書「わが闘争」に体験談として書かれていることも紹介してくれています。 同じころロシアの革命家トロツキーやスターリンもウィーンにいました。後にスターリンと大喧嘩するユーゴスラビアのチトー大統領もクロアチアから錠前工として古き良き時代のウィーンの空気を吸った1人でした。

この本の欧州勢力図の説明は、オーストリア=ハンガリー帝国の視点で語られていました。 ドイツ(プロシア)とロシアの二大勢力に挟まれた中欧、東欧の事情にもしっかり目が行き届いておりウィーンを中心とした一流のヨーロッパ史となっていました。


by zoompac | 2017-05-09 05:57 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「想い雲_みをつくし料理帖3」高田郁

f0090954_06023845.jpg天満一兆庵の江戸店を任されていた若旦那佐兵衛が、吉原通いに明け暮れ、莫大な借財を作って店を手放し、消息を絶ったという話しが、実は富三という天満一兆庵の奉公人が店の金を使い込んだあげく、佐兵衛をだましてありもしない女郎殺しにでっち上げて逃亡させたことがわかるエピソードが盛り込まれていました。

上方と江戸の料理比較で、暑気払いとくれば江戸では泥鰌汁、上方では鱧(ハモ)だと紹介されていました。

鱧はやっかいな魚で、血も表面の滑りにも毒があるそうで、それは鰻(ウナギ)も同じだそうです。傷のある手で触ってその毒が入ると腫れるそうです。
鱧が鰻よりさらに厄介なのは、身の中に小枝のように張り巡らされた骨です。この骨切りという作業は熟練が必要です。

吉原での八朔の鱧料理に、鱧を捌いた経験のない江戸の料理人がお手上げで、澪に白羽の矢が当たるエピソードを面白く読みました。

「つる屋」の下足番ふきの弟の健坊の「登龍楼」の藪入りですが、姉と一緒に暮らしたい健坊が藪入り明けに「登龍楼」に戻らず行方不明になるエピソードが語られる「こんがり焼き柿」もなかなかの人情噺でした。

短編として1つ1つ完結の章もありますが、各章で少しづつ書き足して串刺し的に物語を進めている話題もあります。 お芳の息子の佐兵衛の行方や澪の思い人の小松原との恋の行方等です。

澪が次第に心を寄せ来店を待ち遠しく思う謎の侍小松原の正体も、どうやら浪人ではなく公方様の食膳を掌る(つかさどる)御膳奉行らしいことがわかってきました。

少しづつですが、薄皮を剥ぐように、底流にある物語の展開も見え始めてきました。


by zoompac | 2017-05-08 06:03 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「ツバキ文具店」 小川糸

f0090954_12323895.jpg今年の本屋大賞ノミネート作品10冊のうち、第4位の小説です。(1位「蜜蜂と遠雷」恩田陸、2位「みかづき」森絵都、3位「罪の声」塩田武士)

その小川糸の原作小説と同名のドラマを金曜日のNHKドラマ10で放映中です。

主人公の鳩子(通称ポッポちゃん)を多部未華子が演じています。

ポッポちゃんは、古都鎌倉にある「ツバキ文具店」で祖母にひらがな、漢字、習字等、文字に関するあらゆることを厳しく仕込まれ育ちました。自分を捨てた母のことは、顔すら知りません。

祖母に反発して、高校2年になってガングロヤンキーに転身します。デザイン系の専門学校に入ってガングロは卒業しましたが、専門学校を卒業すると鎌倉を飛び出してしまいました。確執を残したまま先代(祖母)が亡くなり8年ぶりに帰郷します。思いがけず代書屋を継ぐことになり、周りの人に支えられながらさまざまな手紙の代書に取り組むことになるというお話です。

落語の「代書」は大笑いですが(2016年NHK新人賞受賞の桂雀太の「代書」が絶品です。彼も落語の「枕」でこのNHKドラマに触れていました。)、この「ツバキ文具店」の代書屋も面白いですよ。

筆、ペン、インク、紙等に関する蘊蓄満載です。それに、「ツバキ文具店」への代書の依頼が相当変わっているのです。

「伝えたい思いありませんか? その手紙、あなたに代わって書きます」という呼びかけに、舞い込んできた依頼は、

「ペットの死に対するお悔やみ状」、「離婚のお知らせ」、「借金依頼への断りの手紙」、鏡文字を使った「絶縁状」、「天国からのラブレター」等々です。

小説の頁の間に、それらの代筆手紙の写真が掲載されてなかなか面白い趣向が凝らされています。 依頼への応え方も見事です。

四苦八苦、苦労して仕事をこなしていると、やがて海外に住む祖母の元文通相手のお孫さんから、鳩子へ祖母の手紙が渡されることになります。そこにはポッポちゃんの知らない祖母の孫鳩子への愛情、思いやりにあふれた文章が綴られていました。鳩子にとって悔いの残ることですが、後の祭りです。 孝行したいときに、祖母は無しです。

そんな折、いい言葉に出会います。

「亡くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいい。」「誰かにおんぶしてもらったら、今度は誰かをおんぶしてあげればいい。」

妻に先立たれた幼い娘持ちの小さなレストラン経営者の言葉は、鳩子の胸に刺さり、実質的なプロポーズの言葉となりました。

この本のもう一つの効用は、鎌倉の四季の風物詩に触れながらの美味しい食べ物情報です。地元の人目線です。

たとえば、光泉のいなりずし、鳥一のコロッケ、荻原精肉店のローストビーフ、ベルグフェルドのソーセージ、麩帆の麩まんじゅう、つるやの鰻、オクシモロンのカレー等々です。 冒頭に鎌倉のイラストマップがあって小説を読みながら頭の中で寺巡りや食べ歩きを疑似体験できます。

言葉の重み、大事さは、原田マハのスピーチライターの小説「本日はお日柄もよく」でも学びましたが、この「ツバキ文具店」からも感じました。

「言葉は残るのだ。相手がその手紙を読んでしまったらもう後戻りはできない。」

by zoompac | 2017-04-28 12:33 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

小説「みおつくし料理帖2_花散らしの雨」高田郁

f0090954_05560165.jpg付け火で全焼となった「つるや」は神田明神昌平橋付近から、武家屋敷の多い元飯田町、九段坂の俎橋(まないたばし)付近にその場所を移しました。

新キャラ登場で澪の周りがますます賑やかになります。 13歳の「ふき」という名の娘が口入屋(人材あっせん業)の紹介で手伝いにやってきます。

「つるや」の主人の種市が腰を痛め、澪(みお)と芳も元の「つるや」のあった場所の長屋住まいでしたので通いに時間がかかるためです。

この「ふき}の登場で、ある事件がおきますが、その事件解決に向けての澪の人情あふれる差配と怖いもの知らずの行動には感動させられます。

新しい場所では、有名な偽作者「清右衛門」も常連客として登場します。 食通グルメで口は悪いですが根はいい人です。 「つるや」のライバルの「登龍楼」の常連でもあり、「つるや」と「登龍楼」の間に持ち上がった事件を客観的にみてくれますし、この巻で登場回数の少なくなった小松原に代わって澪の新作料理に辛口コメントを授けてくれています。

口入屋の母で75歳の「りう」も一時「つるや」を手伝うことになります。 75歳の婆さんですが、昔江戸城の大手門の下馬先の茶屋で働いていた経験から侍客のあしらいに長けていて客からも好評です。

江戸城登城のため、馬や籠を下りる「下馬先」という場所があり、下馬評という言葉が、そこで主人を待つ供の者たちが暇つぶしに好き勝手に噂話に興じたことに由来するということを知りました。

元江戸城、今の皇居には下馬先という呼び名はありませんが、馬場先門という地名が残っています。

「りう」は、歯の上下が全部ないのですが、固い煎餅でも何でもばりばり歯茎で食べるため、「ふき」から恐れられています。 でも、優しくよく気の付く一本気なおばあさんです。

上方料理と江戸料理の違いということでは天ぷら油の違いが面白かったですね。 

上方では菜種油を使って素材の味や香りを殺さず色も綺麗に引き出し淡白な味わいを出すのだそうです。 

一方、江戸料理では胡麻油を使います。炒った胡麻から搾り取った油には、独特の濃い香りとコクがあり揚げたときに美味しそうな色めもつくのです。 濃い狐色という江戸っ子好みに仕上がるのです。

澪は上方の昆布出汁と江戸の鰹出汁の合わせ出汁を工夫したのと同じ要領で、菜種油と胡麻油の合わせ油を追求します。

落語「青菜」で暑気払いの酒の隠語として使われていた「柳陰」(やなぎかげ)も登場します。 この小説では井戸で冷やした酒ではなく女性が飲む味醂の焼酎割りとして紹介されていました。

落語「鷺とり」に出てくる雀を捕獲させる餌としての「こぼれ梅(こぼれんめ)」も出てきます。 上方でひな祭りに娘たちが食するおやつで、味醂の搾り粕です。 落語ではこれを雀が食べ酔っぱらったところを捕まえるという噺になっていました。

胡瓜の切り口の模様が徳川の三つ葉葵の御紋に似ていることから「つるや」の料理に出した胡瓜の酢の物が侍客に不評だったというエピソードもありました。

その他、上方で好まれる夏の身の柔らかい蛸が江戸っ子には評判が悪いというエピソードも面白かったです。 江戸では真蛸の旬は冬とされているのですね。

by zoompac | 2017-04-27 05:56 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「Dive‼(下) 森絵都

f0090954_05553621.jpg私のお気に入りのスポーツ(根性?)物語(スポコン小説)の三冊めが決まりました。

あさのあつこの「バッテリー」、佐藤多佳子の「一瞬の風になれ」、そしてこの森絵都の「DIVE‼」です。

それにしても、「高飛び込み」も「板飛び込み」もマイナーなスポーツですよね。

飛込競技は、水泳の競技で、高さのある飛び込み台より水面に落下、空中の演技から着水までの一瞬を競うスポーツです。

弾力性のある1m・3mの飛び込み板より跳ね上がって飛び込む飛び「板飛び込み」と、5m・7.5m・10mの飛び込み台から飛び込む「高飛び込み」競技の二種類があり、更にそれぞれに、2人一組で飛び込むシンクロナイズドダイビングという競技もあります。

飛込競技は勝負が決するまでの時間がもっとも短い競技であり、わずか2秒弱の中に高度な技を行なう採点競技です(高さ10メートルからの飛翔は時速60メートルになりその空中演技の時間はわずか1.4秒です)。水しぶきをあげない入水をノースプラッシュと呼び、高い評価点となります。さらに、唇を弾くような音がするだけで全く水飛沫が上がらない入水を「リップ・クリーン・エントリー」といい、これは最高の入水方法であるとされています。「シュッ!」という感じの音なのですかね。

私は、この「飛び込み」に対して、スポーツというより、街中の建物間の「綱渡り」と同様の「見世物」の類のようなイメージを持っていました。

昔、題名を思い出せないのですが、映画でこの飛び込みを「見世物」としてやっていたシーンがありました。たぶん10mよりも高かったのではないかと思います。 飛び込みする人の目線で下のプールが映されていたのですが、プールがとても小さく見え、空中にダイヴした後横風が吹いたらプールの外へ落下するのではないかと感じるほどプールが小さく見えました。

競技としての10mの高飛び込みも、入水角度が乱れたりすると危険だということをこの小説「Dive‼」から学びました。 クリフ・ダイヴィングで海に飛び込むときは、頭からではなく脚から入水しているのもそうした理由があってのことなのですね。

この「飛び込み」は、オリンピック競技になっています。近代オリンピックでは1904年のセントルイスオリンピックからオリンピック競技の仲間入りを果たしています。

日本人としてのオリンピックへの出場は1920年アントワープオリンピック男子明白高飛込に出場した内田正練が最初です。1936年ベルリンオリンピックで男子飛板飛込の柴原恒雄と女子高飛込の大沢礼子の4位が最高で、2017年現在今だメダルを獲得できていません。

選手数の少なさや指導者の手薄、練習環境の不備など選手育成に厳しい状況も、この「Dive‼」から見てとれました。

戦前のベルリン五輪で日本飛び込み界の最高到達点で、後にも先にもこの4位を上回るオリンピックの成績がないというのも寂しいですね。

オリンピックでの入賞に限って言えば、去年の2016年のリオ五輪で板橋美波(17歳、JSS宝塚、リオ五輪当時は16歳)が、10m高飛び込みに出場し、8位でアトランタオリンピックでの元渕幸以来となる入賞を果たしました。

元渕幸は、1996年のアトランタオリンピックで、3m飛び板飛び込みで6位入賞し、女子飛び込みとしては60年ぶりの入賞という快挙でした。

男子としては、1992年のバルセロナ五輪で金戸恵太が8位入賞を果たしています。 ちなみに彼のお父さんは金戸俊介で1960年のローマ、1964年の東京オリンピックに出場しています。

金戸恵太は、88年のソウル、92年のバルセロナ、96年のアトランタの3大会に出場しています。92年のバルセロナで8位入賞した時、父俊介は日本選手団コーチを務めていました。

この「DIVE‼」は2008年に映画化されており、3人の中学生に、林遣都、池松壮亮、溝端淳平、コーチが瀬戸朝香です。

現在は金戸ダイビングクラブ(旧ミキハウスダイビングクラブ)で若手の育成に当たっている金戸恵太が、映画『DIVE!!』では撮影前の合宿時から選手役を演じた俳優のダイビング指導をし、劇中でも川口コーチ役として出演しています。

そして、この金戸恵太の次女が中学生ながら今年の2月に初のシニア大会となる飛び板飛び込み(3メートル)で、女子高飛び込みでリオデジャネイロ五輪8位入賞で現在の日本人エース板橋美波(17歳、JSS宝塚)の4連覇を阻む快挙で頂点に立った東京五輪期待の星金戸凛(りん)です。

金戸一家のダイビング競技は彼女の祖父と父だけではありません、彼女の祖母も母もオリンピック選手なのです。 そして彼女のお母さんが金戸恵太と結婚したアトランタ五輪の入賞者元渕幸です。

三世代続く飛び込み一家のサラブレッド金戸凛が、健在の祖父・祖母に、共に五輪入賞の実績を持つ父母に、いや日本国民に、4位入賞よりさらにその上のメダルをもたらせてくれる東京五輪まで残り3年半を切りました。

今年の7月のブダペストの世界選手権は、16歳の池江璃花子とか400個人メドレーで日本新を出した21歳の大橋悠依だけが注目選手ではありませんよ。金戸凛は出場しませんが、飛び込みで17歳の板橋美波も日本代表に選ばれています。

by zoompac | 2017-04-25 05:56 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

小説 「八朔の雪_みおつくし料理帖(1)」高田郁

f0090954_07295682.jpg2010年の8月に読んで、読後のブログも書いていましたが、5月13日(土)から黒木華主演で八回TVドラマ「みをつくし料理帖」をNHKで放映する機会に合わせて再読しました。

大阪出身の女料理人が江戸で悩み、成長しやがて活躍しはじめる話です。

江戸と上方の食べ物文化の違いがいろいろ学べたり、再確認できたりして楽しいです。

例えば、

・上方で好まれる土手鍋(白味噌)の牡蠣、それに対し小ぶりで味の濃い深川牡蠣は焼殻牡蠣、牡蠣の口が開いたところに醤油と燗冷ましの酒を回し入れる
・俵形の上方風の握り飯VS三角おむすび
・上方の昆布出汁(だし)と江戸の鰹出汁
・江戸では一本箸で食べる心太_「お澪坊、心太は一本箸で食うもんだろう?」 澪は、ええっという顔になった。箸は二本揃って一膳。一本箸というと、弔いの席で死人に供える枕飯に挿すものを想像してしまう澪である。
・「酢醤油?」声が裏返っていた。心太に酢と醤油をかけるというのは澪には衝撃だった。大阪では物心ついた時から黒砂糖を煮詰めてトロリとさせたのをひんやりした心太にかけて食べるのが暑い夏の一番のご馳走なのだ。
・脂の乗った戻り鰹を味わい深いと評価する上方、猫跨ぎといって見向きもしない江戸

澪は迷って悩みます。

「何とかしたい、と。何とかしなくては、と。」そう思いながら、彼女には出口が見えないのです。

「最初は、上方の味を押し通して、拒まれた。江戸には江戸の味がある、そう思い、合わせる努力をした。自分の作るものを人が旨い、旨いと食べてくれることに喜びを感じる一方でどうしても自分自身、納得できない料理がある。」

ある人から「料理の基本がなっていない。」と言われます。

そこで、出汁について学び、そして工夫を重ねます。

昆布出汁の旨みはまろやかで甘い。口に入れると全体にふんわり広がる。逆に鰹出汁の旨みは鋭くて、舌の上に集まって来る感じ。片や広がり、片や集まる・・・で、澪は合わせ出汁を思いつきます。

「ええ?、江戸の茶碗蒸しは玉子を使わないのですか?」

天性の味覚の持ち主「澪」は、ミシェラン番付のような料理番付で関脇の初星を獲得します。その料理が「とろとろ茶碗蒸し」でした。

澪が生まれ育った大阪は、商人の町であって、武士の数が極端に少ない。そして商いの前でひとは押しなべて平等でした。料理番付で評判をとった「茶碗蒸し」を食べたいある藩の留守居役がお忍びで食べたいので人払い(今、店で食べている連中を追い出せということ)をせよとねじ込まれます。

「茶碗蒸しに入れる鰻を背開きにするところ、うっかり上方流に腹から捌いてしまいました。お武家さまにそんな縁起の悪いものをお出ししては大変!」

その他、おぼろ昆布や粕汁に対するエピソードも面白く読みました。

「江戸にはおぼろ昆布がない。大阪に居た頃、心斎橋に昆布屋が何軒もあって、そこの店先で昆布を削る光景をよく目にした。削られた昆布はふわふわと舞う天女の羽衣のようだった。」

「何事にも始末を身上とする大阪育ち。粕汁は船場煮と並んで、冬場、大阪の寒い台所で奉公人ががごくたまに主(あるじ)のお相伴に与れる(あずかれる)ご馳走なんです。」

発売当時、書店の店員さんの評判がよい作品でした。口コミで広がり大人気のシリーズ読物(全10巻)になりました。そして、今年の5月13日土曜日(夕方6時5分スタート)から連続8回のTVドラマの原作となります。脚本は「ちりとてちん」の藤本有紀、出演は、黒木華、森山未來、永山絢斗、成海璃子、小日向文世、安田成美等です。

by zoompac | 2017-04-23 07:30 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「騎士団長殺し 第2部遷ろうメタファー編」村上春樹

f0090954_05393388.jpg第2部に入ったら、大きなダレ場がやってきます。

まるで、アリス・イン・ワンダーランドで不思議の国に迷い込んだような、そして落語の「地獄八景亡者戯」でのあの世に迷い込むような展開が私にとっては大きなダレ場と思えて仕方ありませんでした。

ただ、本の副題にあるイデアとメタファーにみちた冒険の描写になっているようなので、しぶしぶ読み進めました。後で戻り読みをするのも嫌なので・・・・。

と、思っていたら、第59章の「死が二人を分かつまでは」でちゃんとまとめてくれていました。 行方不明となった秋川まりえが何処にいたのかという種明かしが語られているのですが、その時間帯に非現実世界を彷徨っていた「私」のこともダイジェストで説明が加えられていました。

55章の「今が時だ」~55章の「それは明らかに原理に反したことだ」は読み飛ばしても大丈夫だったと思いました。

ただ、落語の「地獄八景亡者戯」の三途川の渡しのような男に川を渡るのを手伝ってもらうシーンが後々重要なポイントになるかもしれないとも思えます。

その渡し守が「白いスバルフォレスターの顔のない男」に似ていたことやそこで渡し賃として秋川まりえが携帯に付けていた「ペンギンのフィギュア」(私が非現実世界に入り込んだとき拾ったもの)を取られたこと等が気になります。 (「白いスバルフォレスターの顔のない男」が私に肖像画を描いてもらうとすれば、そのときの報酬がその「ペンギンのフィギュア」になりそうなのです。)

この第2部では、第1部の冒頭でタネ明かしされた、「その当時、私と妻は結婚生活をいったん解消しており、正式な離婚届に署名捺印もしたのだが、そのあといろいろあって、結局もう一度結婚生活をやり直すことになった。」という一文に沿った形でストーリーを着地させてくれましたが、「白いスバルフォレスターの顔のない男」や、「ペンギンのフィギュア」の行方等、いろいろ疑問は残ります。

冒頭から、この現実と非現実の境界線が曖昧な物語のアウトラインを説明してくれたり、ダレ場をかいつまんで要約してくれたり、村上春樹氏にしては、読者にやさしい配慮が感じられた作品でした。相変わらずの筆力で、謎が謎を呼び、読者をぐいぐい引き込んでくれています。

なんといっても最大の疑問は、謎の資産家・免色渉の正体ですよね。 名前が、2013年4月に出た村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、巡礼の旅」を彷彿させます。

この「騎士団長殺し」の第三部?で、モヤモヤがすっきりすることを願っています。


by zoompac | 2017-04-20 05:39 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「三国志(第三巻)」宮城谷昌光_まるで人名辞典!

f0090954_05530062.jpg人名辞典のように次々に人物紹介が作者の思いつくままに語られ、全体像が非常に掴みづらい小説になっています。

しっかりとした概略の地図と敵味方の人物の勢力図が頭に入っていないと、読破するのは相当困難な作業になります。

宮城谷三国志は、吉川三国志のように講談調の名調子で読めません。元々吉川英治の三国志は三国志演義を元に書かれており、読んでで血沸き肉躍る名調子なのですが、宮城谷三国志は例えるなら意味のない人物名がやたら出てくるお経のような内容で読んでいてイメージが膨らみにくいです。

元々さほど庶民には人気の低かった曹操をメインキャラとする三国志の正史を下敷きにしていますので、期待する方が間違いかもしれません。あらかじめ正史をベースに描かれた漫画「蒼天航路」等で三国志の正史を概略掴んでおかないととても読み通すことが難しいかもしれません。

往年の、宮城谷昌光作品に特徴の涼風のような清々しさがこの作品からは感じられませんでした。

とりあえず、WOWOWドラマで「三国志 ~趙雲伝~」が放映されていますので、それに合わせてと思ったのですが、枝葉末節の人物説明の多さに邪魔されて読むスピードが上がりませんでした。

宮城谷三国志はこの第三巻で打ち切り、今後、三国志正史は漫画「蒼天航路」を読むことにし、とりあえず小説は講談調の吉川英治「三国志」に戻るのが無難かもしれません。 曹操が中心の三国志では、劉備玄徳に仕える趙雲子龍の活躍場面もあまりないでしょうから。

5月13日からNHK土曜ドラマ「みをつくし料理帖」が始まるのに合わせて、その高田郁の原作小説「みをつくし料理帖」も読みたいので、「三国志」と並行読みになりそうで結構ハードです。

by zoompac | 2017-04-14 05:53 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)
RELEASE INFORMATION NEW ALBUM

[通常盤]「Now On Sale!!」
TOCP-66380/¥2,548(税込)

[DVD付 初回生産限定盤]
「Now On Sale!!」
TOCP-66381/¥3,500(税込)

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WMP HIGH LOW
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