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封切り映画 「グレートウォール」

f0090954_08005989.jpgTOHOシネマズシャンテで観ました。

10年以上前に私が外資系金融会社で働いていた頃、同じグループ内での証券業務と銀行業務の二部門の情報をイントラネット上完全に隔離する仕組みを「チャイニーズウォール」と呼んでいました。 万里の長城の英語名「The Great Wall of China」とイントラネット防御のための「ファイアウォール」を合成した造語ですが、危うさを伺わせる比喩のような響きがあったと記憶しています。

今、トランプ政権がメキシコとの国境に築こうとしているのもこのようなグレイトウォールなのでしょうか? 5月5日から「ノー・エスケープ 自由への国境」という映画が全国公開となります。 砂漠の国境を舞台で繰り広げられる究極の逃走サバイバル映画のようです。 メキシコからの不法侵入者を射殺していく銃弾の背後にトランプ大統領がいるような既視感を覚える映画のようです。

「グレートウォール」は、中国を代表する巨匠チャン・イーモウが、「ジェイソン・ボーン」シリーズで知られるハリウッドスターのマット・デイモンを主演に迎え、万里の長城を舞台に繰り広げられる壮絶な戦いを描いた中国・アメリカ合作のアクション大作です。 俳優はほとんど中国、香港、台湾人で占められ、舞台も中国の万里の長城という設定ですが、監督を除いた脚本、編集、衣装、音楽などはハリウッド側が請け負っていました。

ヒロインを演じたジン・ティエンが、チャン・イーモウ監督に見いだされた次世代チャン・ツィイーやコン・リーとして大女優への道を歩めればいいですね。

万里の長城といえば秦の始皇帝とか漢の武帝の頃が有名ですが、この映画の時代設定は宋(960~1279)でした。

宋代の中国はヨーロッパに先んじて火薬や羅針盤等を発明していました。 火薬を入手して一攫千金を狙う冒険西洋人傭兵ウィリアム(マット・ディモン)とその連れ(ペドロ・パスカル)が万里の長城で禁軍に捕まります。 宋の時代の禁軍とは、禁裏、禁中を守る近衛軍ではなく、国軍、中央軍の意味です。 その禁軍が莫大な戦力を万里の長城に結集していたのですが、それは60年毎に現れるという敵の来襲に備えていたからです。 そんな緊張の中で捕らえられた二人でした。 そしてその敵とは、匈奴といった生易しい異民族ではなく饕餮(とうてつ)という異種生物でした。 プレデターとエイリアンを足して2で割ったような破壊力と攻撃力に秀でた生物です。

伝説によると饕餮は人間の欲が姿を変えたもので、その貪欲さはなんとなく貧富の差を拡大する資本主義をイメージさせる怪物でした。 人間の欲が独り立ちして怪獣に姿を変え人間を襲って喰らうのです。

傭兵ウィリアムが、万里の長城へとたどり着いたときが、圧倒的な数の饕餮が60年に一度現れるちょうどそのときだったのです。ウィリアムは万里の長城へ逃げ込む前に饕餮と戦って切り落とした饕餮の手を持っていました。そのことから饕餮は磁石に弱いということがわかり、西洋人傭兵2人は禁軍の仲間入りを果たします。 ジン・ティエン扮する女司令官リン・メイとも信任を深め、圧倒的な敵を前に団結して戦う禁軍仲間と共に、ウィリアムは戦う理由を見出していくという物語でした。

中国の歌って踊れるアイドルのルハン、 WOWOWの「三国志 趙雲伝」で韓国のアイドルグループ「少女時代」のユナとイチャイチャの主人公趙雲を演じている中国人俳優ケニー・リン、香港で最も成功した俳優の1人であるアンディ・ラウ等も共演していました。

そういえば、アンディ・ラウが主演したインファナル・アフェアの第一作をマーティン・スコセッシ監督が「ディパーテッド」として2006年にリメイクしてアカデミー賞作品賞を受賞しました。そのハリウッド作品ではマット・ディモンが香港のオリジナル作品のラウが演じた役を演じていましたね。 ギャングの部下で警察組織に潜入したほうの人物です。 (その逆の警察官でギャング組織に入り込み潜入捜査している人物はオリジナル版がトニー・レオン、ハリウッド版がレオナルド・デカプリオでした。)

筋立ては単純なものでしたが、特撮での映像のスケールの大きさと音の大きさには圧倒されました。 最近MRI検査で脳梗塞の予防検査をしたのですが、その検査時に脳髄に響くような音ががんがん響くそのような迫力の映像に迫力の音響でした。

by zoompac | 2017-05-06 08:10 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

TsutayaDVD映画「波止場」_含蓄深いエリア・カザン監督の代表作

f0090954_09102358.jpg先々月、観た映画の中にケーリー・グラントとエヴァ・マリー・セイントが共演した「北北西に進路を取れ」(1959)がありました。そのとき「南果歩似」だと思ったエヴァ・マリー・セイントの助演女優賞受賞作品のこの「波止場」が気になって、Tsutayaで借りて観ました。

あのマーロン・ブランドが、二枚目なのにびっくりしました。この好青年があのゴッドファーザーのドンの顔になっていくのですね。

「波止場」(はとば、On the Waterfront)は、エリア・カザン監督の代表作の1つで、アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞(エヴァ・マリー・セイント)、脚本賞、撮影賞 (白黒部門)、美術監督賞 (白黒部門)、編集賞の8部門で受賞を果たしています。

主演のマーロン・ブランドはこの作品でアカデミー賞の主演男優賞を受賞し名実共にトップスターになりました。

しかし、翌年、育ての親ともいえるエリア・カザン監督の次の大作「エデンの東」の主役のオファーを蹴ってしまいます。

これはカザンが、当時アメリカを吹き荒れていた赤狩りの追及に負けて同じような容共的な仲間をジョセフ・マッカーシー率いる非米活動委員会にチクったことに対して憤慨していたからだそうです。

マーロン・ブランドに替わって出演したジェームズ・ディーンがその映画「エデンの東」でスターになりました。 不思議な巡りあわせです。

この映画「波止場」は、ピュリッツァー賞を受賞したマルカム・ジョンスンの有名な暴露記事「波止場の犯罪」を資料にして、小説家バッド・シュルバーグが脚本を練り上げました。
ニューヨークの港を舞台に、マフィアのボスに立ち向かうある港湾労働者の姿を描いた1954年制作のアメリカ映画です。f0090954_09110621.jpg

余談ながら、司馬遼太郎の「ニューヨーク散歩」という本を読むと、アメリカが移民の国だということがよく理解できます。 港湾労働者に対する記述もありました。 司馬遼太郎氏もこの映画「波止場」を観ていた可能性は高いなという想像を楽しみました。

最初にアメリカに渡ったのが、ホワイト、アングロ・サクソン、プロテスタント、俗称WASPという人たちでホワイトカラーの仕事につき、次にアイルランド系の人たちが渡って警官、消防士、軍人等の職を占めてしまいます。その他、ブルーカラー系の労働にも携わりますが、その労働に従事していた黒人との間に深い確執が生まれたことにも触れていました。その後にやってきたイタリア系移民は、さらに下級の肉体労働に従事することになりました。港湾労働者としての仕事にその多くが就きました。問題を起こしてはアイルランド系の警官に取り締まられる構図はこの頃誕生します。そのあたりの背景を司馬遼太郎氏は、エッセイ風に軽やかな筆さばきで要領よくまとめてくれています。その手腕はさすがです。

地元のマフィアが仕切る波止場は、労働の供給も、労働者たちの憩いの場(酒場、賭け事)の提供も、マフィアの思いのままという無法地帯でした。マフィアのルールに逆らうものは命さえ落としかねない状況でした。

そういう中、マーロン・ブランド演じる若者テリーが登場します。兄がマフィアの使い走りで、兄に頼まれたことで八百長に手を染めたことでボクサーを辞めさせられ、波止場で荷役をする日雇い労働者として働いています。

そんなある日、地元のマフィアの顔役の命令で、テリーは古い友人を呼び出し、結果的に殺害に関与してしまうことになります。顔役は自分の既得権利を守るためなら手段を選びません。テリーも最初は知らぬが仏と逆らわないことにしていましたが、死んだ友人の妹イディ(エヴァ・マリー・セイント)に出会います。兄の死の真実を求める彼女の姿に心動かされ、テリーは次第に、信念に基づき生きることに目覚めていきます。

テリーの反抗的な行動に対し見せしめのように彼の兄も殺されてしまいますが、テリーは港湾内の殺人事件の証言台に立ちます。そして、彼の不屈の精神が他の港湾労働者たちの共感を呼び、労働者たちもマフィアに向かって立ち上がる姿が描かれていました。

マフィアという巨悪に対する正義とも、共産党員だった監督の思いが込められているようにも思える微妙な映画でした。

1952年、アメリカ下院非米活動委員会によって、共産主義者の嫌疑がかけられた元共産党員であるエリア・カザン氏が司法取引に応じて、共産主義思想の疑いのある者として友人の劇作家・演出家・映画監督・俳優ら11人の名前を同委員会に売った話はあまりに有名です。

その仲間を売ったことで、彼は演劇界・映画界において精力的に活動を続けることができ、名作と呼ばれる作品の誕生に数多く関わっていくことができましたが、この告発行為は、後のカザン氏の経歴およびその作風に暗い影を落とすこととなりました。

1998年、長年の映画界に対する功労に対してカザン氏はアカデミー賞「名誉賞」を与えられましたが、赤狩り時代の彼の行動を批判する一部の映画人からはブーイングを浴びせられました。

賞のプレゼンターはマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロで、共にその赤狩り時代の映画人の苦難の物語を描いた「真実の瞬間」’91に出演していました。ロバート・デニーロがマッカーシズムに揺れるハリウッドで共産主義者の疑いをかけられた映画監督の主人公を演じていました。

リチャード・ドレイファスは事前に授与反対の声明を出し、ニック・ノルティ、エド・ハリス、イアン・マッケラン等は、受賞の瞬間も硬い表情で腕組みして座ったまま、無言の抗議を行なっていました。スティーヴン・スピルバーグ、ジム・キャリー等は拍手はしたが、起立しませんでした。起立して拍手したのはウォーレン・ビーティやヘレン・ハント、メリル・ストリープ等でした。

通常は名誉賞が授けられる人物には、全員でのスタンディングオベーションで暖かく賞賛されるのが慣例ですので、このカザン氏の受賞は異例で会場内は異様な空気に包まれていました。

去年観た映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」は、マッカーシズムによる「赤狩り」の嵐に吹き上げるハリウッドで、議会侮辱罪で禁固刑を受けながら偽名で脚本を書き続けた脚本家ダルトン・トランボの不屈さを描いたものでした。 あの有名な「ローマの休日」でアカデミー賞を偽名で受賞した脚本家です。

監督の人間性はともかく、いろいろなことに思いが馳せられた映画「波止場」でした。

余談ながら、この「波止場」にちなんで、一時邦画でも小林旭や石原裕次郎を主役とした「波止場」シリーズが一世を風靡しました。曰く、「赤い波止場」、「悪名波止場」、「波止場無法者」、「波止場の鷹」、「波止場野郎」・・・・。

by zoompac | 2017-05-03 09:12 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画 「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」

f0090954_05534939.jpgナタリー・ポートマンがジョン・F・ケネディ元大統領夫人ジャクリーン・ケネディを演じ、ケネディ大統領暗殺事件をファーストレディの視点から描いた伝記ドラマでした。

半生を描いた伝記ではなく、大統領暗殺後5年にギリシャの大富豪アリストテレス・オナシスと再婚し世界を驚かせたエピソードはもちろんなく、1961年から1963年までアメリカのファーストレディであった(彼女が32歳から34歳)約2年に凝縮した物語でした。

その短い期間を3つの事項に分割し、その事項間を行きつ戻りつで編集されるという変わった手法を取っていました。

その3つの出来事とは、1962年2月にジャッキー自身がTV出演して案内役を務めたドキュメンタリー番組「ホワイトハウス案内」についてのエピソード、1963年11月のJFK暗殺事件とJFKの葬儀を巡ってのエピソード、そしてその葬儀の後行われたライフ誌とのインタビューです。

映画はそのインタビューを軸として、ファーストレディとして画期的な「ホワイトハウス」案内を買って出たジャッキーの斬新性、そして暗殺の現場で打たれた大統領の頭を抱きかかえ血まみれになりながらもファッションアイコンとして人々の記憶に焼き付いたピンクのシャネルのスーツにピルボックス帽の組み合わせ、そして狙撃犯容疑のオズワルドまで暗殺された不安の漂う最中、各国の要人を引き連れて歩いて墓地まで大統領の遺体と行進をする毅然としたジャッキーの姿を活写していました。

それらの人々の脳裏に残っているジャッキーの姿からは伺いしれない内面にカメラは迫ります。ナタリー・ポートマンは人間ジャッキーの感情の深層に入り込み、困惑、不安、悲嘆、混乱の中での迷いとそこから気力を振り絞って決断し実行する揺らぎのない強い意志とのせめぎ合いを切り取って見せてくれていました。

目の前で夫を殺害された妻ジャクリーンは悲しむ暇も与えられず、葬儀の取り仕切りや代わりに昇格する副大統領の大統領就任式への出席、ホワイトハウスからの退去など様々な対応に追われることになります。そんな中で事件直後から夫が「過去の人」として扱われることに憤りを感じた彼女は、夫が築き上げたものを単なる過去にはさせないという決意を胸に、ファーストレディとして最後の使命を果たそうとするのです。

インタビューに訪れていた記者が、そのジャッキーの強さに驚いていた表情が印象に残りました。

オバマ政権の終了に伴い離任、2017年1月18日、離任し帰国の途に就いた元駐日米大使のキャロライン・ケネディの幼少期の姿も垣間見ることができます。

人によってとらえ方は様々だと思いますが、私はナタリー・ポートマンがジャッキーに憑依したようにみえ印象に残りました。

再婚で、世間をお騒がせしたジャッキーでしたが、1994年に死去し、元の大統領夫人としてアーリントン国立墓地のジョン・F・ケネディの墓の横に埋葬されました。

by zoompac | 2017-04-26 05:54 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

2017年のアカデミー作品賞受賞作 「ムーンライト」

f0090954_06011821.jpg今年のアカデミー賞で大本命の「ラ・ラ・ランド」をハプニングの末破って、最優秀作品賞を受賞した話題作です。

剛腕トランプ政権で少数派に対する偏見や差別が助長される中ハリウッドの映画人がそうした流れに逆らう良心の証として選んでくれた作品として注目していました。

同性愛、差別、いじめ、麻薬中毒、親子の断絶とテーマが重たくて暗いのですが、映画を観てみると斬新さを感じました。

刺激的な印象から程遠く、むしろ静謐さを感じたのは、主人公の受動的ながら一途な性格からっだような気がします。カメラワークも見事で、黒人の肌艶の輝きが美しく見えました。月明りでお前はブルーに輝くという言葉に見事に応える映像でした。

マイアミを舞台に自分の居場所とアイデンティティを模索する少年の成長を、少年期、ティーンエイジャー期、成人期の3つの時代構成で描いた作品です。

主人公の小学生、高校性、成人という人生の三段階を3人の異なった役者が演じていたところが斬新でした。

三人は、姿、形は似ても似つかないのですが、観客には同じ人物に見えるのが不思議です。ちょっとした目の仕草、うつむき加減の内向性等々が共通なのです。

この三人が同じ一人の人物を演じながら、撮影現場で顔を合わすこともコミュニケーションを取ることもなかったそうです。

孤独な少年、青年を支えたのは、麻薬ディーラーの「フアン夫妻」と、唯一の男友達である「ケヴィン」だけでした。 そのファン役のマハーシャラ・アリがアカデミー助演男優賞を受賞しました。

観る前に、そのテーマに肩肘張って身構えていたのですが、観た後は不思議と涼風を感じる爽やかさが残りました。 ブラピもなかなかやりますね。

007シリーズで、ボンドの上役Mの秘書役のミス・マネーペニー役のナオミ・ハリスが役柄とは言え、結構シワシワなのがショックでした。 最近はニコール・キッドマンのシワシワも「ライオン」で見たばっかりでショックが続きます。

五つ星ばらまき映画評論家の中条省平氏が四つ星でしたが、これは額面通り私にとっても四つ星でした。 少しだけ、中条省平氏との価値観の距離が縮まったような気がした作品でした。

by zoompac | 2017-04-24 06:01 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画 「ライオン」_25年目の母を訪ねて三千里

f0090954_06051134.jpg最後の最後にこの映画の題名が何故「ライオン」なのかがわかる仕掛けになっています。ネタばらしはしません、映画を観てのお楽しみ!

1986年、インドのスラム街で暮らす5歳の少年サルーは、兄と仕事を探しにでかけた先で停車中の電車で眠り込んでしまい、家から遠く離れた大都市カルカッタ(コルカタ)まで運ばれます。そのまま迷子になったサルーは、やがて養子に出されオーストラリアで成長して、2012年に25年ぶりに家を見つけ母親との再会を果たすという実話に基づいた物語でした。

「キャロル」のルーニー・マーラ、ニコール・キッドマンら豪華キャスト共演で、主人公のサルーを「スラムドッグ$ミリオネア」、「マリーゴールドホテル」のデヴ・パテルが演じていました。 5歳時のサルーを演じた5歳の俳優サニー・パワールの演技も見事でした。

老け役のニコール・キッドマンの首元の皺が演技なのかすっぴんなのかがとても気になりました。

幼かったサルーが自分のかって住んでいた町「ガネッシュ・タライ」をガネストレイと記憶していたため、Google Erathを使ってもなかなかたどり着けなかったのですが、ある日、天からの啓示のように道筋が露わになったのです・・・。 潜在意識に隠れていた6歳の頃の遠い記憶が突然蘇ったような不思議で感動的な瞬間でした。

インドで迷子になった5歳の少年が、25年後にGoogle Earthとかすかに残る記憶で故郷を探し当てたという実話をもとにしたストーリーです。 泣くもんかと歯を食いしばって観ていましたが、涙腺は自然に緩んでしまいました。


by zoompac | 2017-04-21 06:06 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

複雑なアジアの匂いを感じた映画 「バンコック・ナイツ」

f0090954_05484028.jpg新宿三丁目にある「テアトル新宿」で観ました。

この映画は、五つ星ばらまき映画評論家の中条省平氏が、日経のシネマ万華鏡で例によって絶賛の五つ星でしたので、眉にしっかり唾をつけて観ました。

思い切り中条バブル評価を割り引いて観たのですが意外とよかったです。

3時間の長丁場映画だったのですが、オート三輪車の「トゥクトゥク」の疾走感等が爽やかでダレ場は意外と少なかったです。

インドネシアに約3年赴任していた経験や約3ヶ月カンボジアのプノンペンで生活した経験もあって、この映画で東南アジア特有の匂いとか色合いとかに共感するシーンもたくさんありました。 郷愁を掻き立てられた掘り出し物の映画でした。

「サウダーヂ」で話題を集めた映像制作集団「空族」の富田克也氏が監督・脚本を手がけ、バンコクの歓楽街で働くタイ人娼婦と日本人の男たちが織り成す、失われた楽園を取り戻すための旅を描いたロードムービーといったところでしょうか。

バンコクにある日本人専門の歓楽街タニヤ通り。タイの東北地方イサーンから出稼ぎに来て5年になるラックは、現在は人気店「人魚」のトップにのぼりつめ、ヒモの日本人男性ピンを連れ回し贅沢な生活を送る一方で、故郷の家族に仕送りをしています。

ある晩、ラックはかつての恋人である元自衛隊員オザワと5年ぶりに再会します。オザワが不動産絡み(日本人の金持ち老人相手に現地妻付き高級介護コンドミニアムの開発調査)で出張の機会を利用して、ラックとオザワはそれぞれの思いを胸に秘めながらバンコクを離れ、ラオスとの国境にあるラックの故郷へ向かいます。

そこで、オザワは日本やバンコックの都会では決して知りえない世界を知ることになるのです。

世界は、未だに戦争の只中にあるという事実と女性の未来を悲観しない図太さとたくましさが切り取られたような映画でした。

ラオスに残る多くのクレーターのような跡が、「ラオス秘密戦争」(北ベトナム軍が南のベトコンへ支援物資を送っていたホーチミン・ルートの破壊爆撃)と言われるアメリカの爆撃の証拠をありありと突き付けていました。

ちなみに、クリント・イーストウッドの「グラントリノ」で描かれるお隣さんは、アメリカへ難民として渡った「ラオス秘密戦争」の戦場地で暮らしていた山岳少数民族のモン族でした。ベトナム戦争が生んだ難民でした。

そのモン族の多くが難民として、雨季と乾季で水嵩の量が大きく変わり川の形が変わることから橋がほとんど架かっていないメコン川を渡って(船で対岸に渡ることになります)タイに逃れました。 彼らが渡ったメコン川の泥水色の流れも懐かしく見させてもらいました。

メコン川はチベット高原に源流を発し、中国の雲南省を通り、ミャンマー・ラオス国境、タイ・ラオス国境、カンボジア・ベトナムをおよそ4200キロにわたって流れ、南シナ海に抜ける、東南アジアで一番長い川(アジアでは7番目、揚子江が1番、黄河が3番、オビ川とかアムール川とかロシア、シベリア方面の川もアジアに含まれています。ちなみにインドのガンジス川はメコン川の2/3くらいの長さです。)

一筋縄ではいかなそうな複雑なアジアの匂いを嗅いだような映画でした。 パクチーとナンプラーの混ざったような空気に包まれて何故か懐かしい反面戦争の爪痕等を目撃すると鼻の奥にツンとくるきな臭さも感じました。


by zoompac | 2017-04-19 05:49 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

中途半端映画_「ゴースト・イン・ザ・シェル」

f0090954_07034103.jpgこの手のごちゃごちゃ漫画が苦手で読んだことはありませんが、原作は士郎正宗のコミックを押井守監督が映画化したSFアニメの傑作「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」で、映画「マトリックス」にも多大な影響を与えたモノらしいです。

原作を知らないので頓珍漢なコメントかもしれませんが、この映画は一貫性に欠けた印象が強かったです。上半身を大きく後ろに仰け反らせながら「ちゅ〜〜と(中途)半端やなぁ〜!!」とツッコミを連発したくなる映画でした。

他の登場人物は、桃井かおりも含めて英語を話しているのに、何故ビートたけしだけが日本語でしゃべって英語字幕なんだぁ?

映画観ている英語勉強中の青少年のやる気を削ぐんじゃねえっうの! 役者として出演受けたんだったら英語くらい、猛特訓でしゃべれよ! 「馬鹿野郎、このやろう!」と威勢のいい罵声がトレードマークのタケシにしては情けない役の日本語セリフでした。相手が英語でしゃべっているもんだから、間のとり方がマヌケで早口で独り言をしゃべっている感じ、ホンマに情けないったら、「なんだぁ、このやろ~‼」

スカジョがサイボーグと人間のハイブリッドで秘密作戦部隊公安9課の「少佐」という設定でした。その裸モドキのボディスーツもどうにかなりませんかねぇ。戦闘モードでは裸になるのに、日常でタンクトップや下着を着ける意味がよくわかりませんでした。どうせ義体なんだったらすっぽんぽんにバタフライだけで統一したほうが潔かったんじゃないかなぁ? 上半身を大きく後ろに仰け反らせながら、再び、「ちゅ〜〜と(中途)半端やなぁ〜!!」f0090954_07041856.jpg

ゴースト・イン・ザ・シェルのゴーストは「魂」とか「心」という意味で使われていたのですが、体が義体化されて、意思決定も電脳化という世界で、人間性の象徴ともいえる魂とか心がゴーストと呼ばれるような世界にはなって欲しくないですね。

「電脳」「人工知能」のソフト面、「義体」「ロボット」のハード面、さらに「サイバー空間」などの都市・環境面で、高度な技術が育っているのですが、それを運用するのはときに感情などによって合理性を失う「心」であるというこの手のテーマは、「ロボコップ」等でもやっていたテーマですね。古くは、「鉄腕アトム」でも。

映像は、都市空間が摩訶不思議な雰囲気を醸し出していました。蜘蛛足芸者ロボットも「フジヤマ・ゲイシャ」的で悪趣味満載でした。タランチーノ監督の「キルビル」の変な和式接待の場面の焼回しにみえました。

スカジョに釣られて観た、私にとっての期待外れ三部作(何の期待じゃ?)の1つが誕生しました。1に「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」(全裸のスカジョの下半身が明らかに別人合成にみえる!・・・みえるじゃなくて合成なんだろうけど、いずれにせよ画面が暗すぎぼやけ過ぎで期待外れ!)、2に中途半端な「LUCY/ルーシー」、そして3にこの「たけし」の浮いた日本語セリフにがっかりの「ゴースト・イン・ザ・シェル」です。


by zoompac | 2017-04-15 07:14 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

含蓄深い映画_サラエヴォの銃声」

f0090954_07525947.jpg新宿のシネマカリテで観ました。

観終わったときは、消化不良を感じた映画でしたが、その後サラエヴォ事件の背景などを学んだ後この映画の構成の妙が理解できました。含蓄のある映画でした。

第1次世界大戦の引き金と言われるサラエヴォ事件の簡単な説明から入りましょう。

サラエヴォ事件とは、 1914年6月28日にオーストリア=ハンガリー帝国の皇帝・国王の継承者フランツ・フェルディナントとその妻ゾフィーが、ボスニア州都サラエヴォ(当時オーストリア領、現ボスニア・ヘルツェゴヴィナ領)の病院を訪問する途中で、ボスニア出身のボスニア系セルビア人(ボスニア語版)の19歳の青年ガヴリロ・プリンツィプによって暗殺された事件です。

この事件がきっかけとなって、事件から1ヶ月後、オーストリア=ハンガリーがセルビアに宣戦布告し、 第一次世界大戦が勃発しました。

トルコの支配権が失われたバルカン半島内での領有権を巡って南部のブルガリア対セルヴィアが対立し、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを併合しバルカン半島進出に意欲満々のオーストリアがブルガリを擁護し、それに対抗してロシアがセルヴィアを支持しました。 このヨーロッパの火薬庫バルカン半島を巡っての対立構図が、オーストリア=ハンガリー、ドイツ、イタリアの三国同盟とロシア、イギリス、フランスの三国協商との戦いと拡大されたのが第一次世界大戦です。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナでは、現在もガヴリロ・プリンツィプをテロリストとみなす意見と、英雄とみなす意見に分かれているそうです。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナは1878年のベルリン会議でオーストリアが占領し、その後1908年には正式にオーストリア領に併合されていました。多くのボスニア住民、特にボスニアのセルビア人住民はこれに反発し、セルビアや他の南スラヴ諸国への統合を望んでいたのです。

オーストリア当局はセルヴィアにとって重要な祝日である聖ヴィトゥスの日(Vidovdan)にあたる6月28日をフェルディナント大公のサラエヴォ訪問の当日に設定しました。この日はまた、1389年にセルビアがオスマン帝国に敗北を喫したコソボの戦いの行われた日でもあったため、皇太子夫妻の訪問はセルビア人の神経を逆撫でする結果ともなったようです。

映画は、サラエヴォにある老舗ホテル「ホテル・ヨーロッパ」を舞台に、サラエヴォ事件の100周年記念式典の準備にいそしむ支配人、従業員、VIP、警備員、ジャーナリスト等の群像劇でした。

経営難に陥っているためホテルの支配人は銀行との交渉に余念がなく、給料の支払いが滞っているため従業員はストを予定し、仕事熱心な美しい受付主任はリネン室で働く自分の母親がストの首謀者に祭り上げられたことで頭を痛め、記念式典を前にストを心配した支配人はヤクザを使ってスト破りを画策し、一方で、女性ジャーナリストは100年前の暗殺者と同姓同名の青年と論争をはじめ、次第に混沌を深めるホテルで一発の銃声が鳴り響くといった筋書きでした。

その銃声は、100年前の混沌と対立を深めるバルカン半島の火薬庫が爆発しヨーロッパ全域を戦争に巻き込んだあのサラエヴォの銃声を彷彿させるものでした。

テロが頻発し民族同士の争いが絶えない、現代の世界の縮図は、サラエヴォ事件からなんの進展も学習もなかったのだということを、経営難に陥ったヨーロッパを老舗ヨーロッパホテルに見立てて強烈な皮肉を交えながら、観客に突き付けているような含蓄のある映画でした。


by zoompac | 2017-04-11 07:56 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画「モアナと伝説の海」_6歳の孫には怖かった16歳のモアナの冒険物語

f0090954_07464241.jpg私には海の美しい映像が印象に残ったのですが、その共感を得ようとして尋ねたお孫嬢のこの映画を観た直後の感想は「こわ~い!」でした。

族長の娘モアナはお姫様なのですが、ロマンティックな夢見る乙女ではなく冒険心に溢れた行動派女子です。

島の危機を救うため、モアナは生まれ育った島を離れ冒険の旅へ出ます。

おばあさんから語り継がれた古い物語から、かつて世界を生んだ命の女神テ・フィティの心が、伝説の英雄と言われた半神マウイによって盗まれ、世界に闇が広がりました。島の作物や海の魚たちに異変を起こした闇から世界を救うには、いまもどこかで生きているマウイを探し出し、テ・フィティの心を象徴する宝石を元あった場所(女神テ・フィティの島)に戻すことが必要だと知り、父親の反対を押し切り大海原に旅立ったのです。

途中からモアナとマウイの二人芝居を観ているような様相になりますが、次々起こる困難を克服し、ハッピー・エンドを迎えるお約束通りの映画でした。

「アナと雪の女王」の雪景色が、南海の海に変わり、物語はアナ雪に比べたらよりシンプルになったと思ったのですが、お孫嬢にすれば、「アナ雪」方がよかったということになるらしいです。

お孫嬢が怖かったとするのは、テ・フィティの心を狙うココナッツの海賊カカモラの一団の襲撃でしょうか、それとも海底にある魔物の国「ラロタイ」で暮らす、体長15.2mの巨大なヤシガニだったのでしょうか。

私もちょっと怖いなと思ったのは、溶岩の悪魔テ・カァです。 テ・カァはマウイにより「心」を奪われた女神テ・フィティの別の姿でした。海しかなかったこの世界に島、植物、動物を誕生させた命の女神テ・フィティ は、「心」を奪われたため溶岩の悪魔テ・カァに姿を変えると、我を忘れて世界に闇を広げてきたのです。 そして、女神テ・フィティは、緑の植物に覆われた巨大な島そのものなのですが、モアナとマウイが「心」の宝石を返そうとしたとき立ちはだかったのが巨大な溶岩島と一体化した溶岩の悪魔テ・カァでした。

6歳のお孫嬢には海の美しさや世界に緑と命を取り戻したモアナの勇気ある大冒険より、ココナツの海賊、巨大なヤシガニ、溶岩の悪魔への恐怖感が印象に残ったようです。 彼女が泳げないということも恐怖感を余計にあおったのかもしれません。

モアナ役の屋比久知奈は大規模なオーディションで選ばれ、主題歌『どこまでも~How Far I’ll Go~』などを劇中で熱唱しています。モアナと一緒に冒険の旅に出る伝説の英雄マウイの声を尾上松也、モアナを見守るタラおばあちゃんを夏木マリが演じ、それぞれ歌を披露していました。

日本での興行収入は、3月10日公開の1週間は1位でしたが、翌週に「SING/シング」が公開された後の3週間は、SING/シングにトップの座を明け渡し、2位に甘んじています。(「王様のブランチ」のランキング情報です。)

それにしても、今年の映画は、「ラ・ラ・ランド」のミュージカルに始まり、「モアナと伝説の海」、「SING/シング」と、歌を前面に出した映画のヒットが続いていますね。

4月21日には、ディズニー・アニメーションの人気作をディズニー自ら実写化したミュージカル映画「美女と野獣」も公開が予定されています。 ラ・ラ・ランドのエマ・ストーンに続いて「美女と野獣」のエマ・ワトソンも活躍してくれそうです。

浦安の東京ディズニーランドにも、「美女と野獣」エリアが誕生する(2020年までに?)ということもニュースで流れていました。

by zoompac | 2017-04-09 07:59 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画 「SING/シング」

f0090954_08451267.jpg歌を通じてそれぞれの問題を抱えた動物キャラクター達がその問題を乗り越えていくってストーリーでした。

といって、説教調ではなく、ゴリラの自己反省、ゾウの内気の殻からの脱却、パンクロッカーのヤマアラシの相棒の浮気、父親が残してくれた劇場を守ろうと孤軍奮闘するコアラ支配人等の問題をサラリと語りながら、名曲&ヒット曲で包んで元気にしてくれます。歌の持つ力を実感できまる作品でした。オールディーズ好きにはお勧めです。

私は、孫と観たため日本語吹き替え版でした。

欲張りで自己中心的なジャズ・ミュージシャンのネズミ「マイク」役の山寺宏一の「マイ・ウェイ」がよかったです。和製フランク・シナトラでした。

オリジナル版は「テッド」の声と監督の「セス・マクファーレン」のようですね。 彼の「マイ・ウェイ」も絶品と好評のようです。

ブタのグンターの声は、歌ウマでいい声芸人として話題の斎藤司(トレンディエンジェル)でした。レディー・ガガの代表曲「バッド・ロマンス」を歌い上げていました。これもよかったです。

吹き替え版で長澤まさみが声を担当したヤマアラシのオリジナル版はスカヨハ、子豚育てに奮闘する母豚(人気声優の坂本真綾)はリース・ウィザースプーンだそうです。

坂本真綾 さんは、ブタのグンターとのコンビネーションが重要な要素となっており、テイラー・スウィフトの「シェイク・イット・オフ」を熱唱していました。

ゾウのミーナ役がMISIAでした。

歌で皆前向きになれるって、ただそれだけの映画でしたが、よかったですよ。 機会があればオリジナル版も観てみたいです。

余談ですが、世界約60か国で公開されている本作は、すべての国が英語のセリフや歌に字幕を入れて上映しているそうで、唯一日本だけが例外だそうです。

日本では、字幕版と日本語版を同時に公開することが米国の製作者から承認されました。

米国製作者たちの厳しい審査をクリアして、世界で唯一、セリフに加えて一部を除く全ての楽曲も日本語に吹き替える許可をもらったのだと「王様のブランチ」で紹介していました。

日本語版の演出には数々のアニメ作品などに携わる三間雅文、日本語吹替え版音楽プロデューサーに、YUKI、Superfly、ゆず、back numberなど、幅広いアーティストが本作に参加しています。


by zoompac | 2017-04-08 08:45 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)
RELEASE INFORMATION NEW ALBUM

[通常盤]「Now On Sale!!」
TOCP-66380/¥2,548(税込)

[DVD付 初回生産限定盤]
「Now On Sale!!」
TOCP-66381/¥3,500(税込)

NEW SINGLE
WMP HIGH LOW
REAL HIGH LOW
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海外オフィシャルサイト
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