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Would-be ちょい不良親父の世迷言


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カテゴリ:読書・映画・音楽( 1428 )

WOWOW映画「スピード」

f0090954_11170345.jpg昨日の小平菜緒のスピードスケート記事に続いて、スピード関連で、WOWOW録画映画「スピード」を取り上げてみました。

爆破されたビルのエレベータからの脱出時にスカートがめくれて若い女性の下着が露わになるシーンが印象的だったのですが、その映画作品を何故か「ダイハード」シリーズだったとずーっと記憶違いしていました。

この「スピード」を再度観てそのシーンを再確認することで、その感違いのモヤモヤが吹っ飛んでくれました。

キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックの出世作ですね。

キアヌ・リーブスが短髪の坊主頭で何故かリオ五輪柔道90㎏級金メダリストの「ベイカー 茉秋」とイメージが重なってしまいました。 高速バスを運転するハメになるアニー役のサンドラ・ブロックもほっぺがふっくらして初々しかったです。

元警察の爆発物処理班員ペインが逆恨みで、警察を挑発しリベンジを果たそうとします。

最初の乗客の乗ったエレベーターに仕掛けられた爆弾はロサンゼルス市警察SWAT隊員のジャック(キアヌ・リーブス)等の活躍で排除され、乗客は無事救出されました。ペインは簡単には諦めません。今度は、路線バスに爆弾を仕掛け、ジャックに対応させるよう仕向けたのです。

爆弾はバスの速度が時速50マイルを下回ると爆発することになっています。その爆発を阻止するため走行中のバスに飛び乗ったジャックでしたが、乗客の一人が誤って発砲し、運転手が負傷してしまいます。やむを得ずスピード違反で免停中のためバス通勤していた若い女性、アニー(サンドラ・ブロック)がそのハンドルを任されることになったのです。

お決まりの、暴走バスによるクラッシュシーン続発のパニック映画でした。結構楽しめました。こういうのをジェットコースターアクションというのでしょうね。

1994年の公開映画で、1995年のアカデミー賞で2部門(録音と音響編集)を受賞するなど世界的な規模で高い評価を受けた作品でした。


by zoompac | 2017-03-19 11:18 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「i(アイ)」 西加奈子_あるがままに受け入れる提案小説?

f0090954_08414881.jpg唐突ですが、大阪市が大阪文化の世界発信に活躍している人に贈る「咲くやこの花賞」というものがあります。
2016年12月に「芸術」、「音楽」、「演劇・舞踊」、「文芸」、「大衆芸能」のジャンルの「大衆芸能」部門で、私が応援している桂佐ん吉さんが受賞されたので調べたところ、2011年に西加奈子さんも「文芸」部門で受賞されていました。

「難波津に咲くやこの花冬ごもり 今は春べと咲くやこの花」(王仁) 古今和歌集

西加奈子さんは、よく、「王様のブランチ」のゲスト出演をされていてコテコテの大阪弁全開ぶりが個性の作家さんです。

西さんはイランで生まれで、誕生から2歳までテヘランに住んでいました。 小学校は1年生から5年生までエジプト、カイロで過ごされました。 それ以降は大阪です。

2015年に直木賞を受賞された「サラバ」は、そのカイロ時代の経験を下敷きにされた作品でした。

この「i(アイ)」は、難民問題にも関心があるという西さんならではの作品ですが、「サラバ」同様、彼女の幼少時代の経験が下敷きになっていました。

主人公のアイはシリアからの養子で、裕福なアメリカ人と日本人の夫婦の元で育ち、その恵まれた環境にいる自分と、世界中で起こる事故や事件の犠牲者を比べて悶々とします。

彼女の国連UNHCR協会事務所@東京でのインタビューでの言葉からの抜粋です。 2016年7月のインタビューですが、11月30日の発刊されたこの「i(アイ)」を執筆・推敲されていた頃のインタビューですのでその言葉は小説を読むにあたっての参考になりました。

「エジプトで過ごしたのは7歳から11歳まで。カイロ市内のザマレクという街で暮らしていました。ザマレクは大使館があって駐在員が住むエリア。イギリスが統治していたエリアで建物もイギリス風で。エジプトにおいては並外れて裕福なエリアでした。」

「”なんで自分は苦労もせずこんなきれいな服着て、すごい素敵な家に住んでいるんだろう”という恵まれている自分に対する罪悪感、恥ずかしさ。エジプトで過ごした日々は人生で一番楽しかった時期でもあり、一番ナイーブな時期でもありました。ずっと苦しくて、しかも苦しいって口にしたら絶対だめだと思ってました。生活が苦しい人は苦しいって言う権利はあるけど、恵まれてる人間が恵まれてることを苦しいって言うなんて絶対あかんって。でも太宰 治の本で「私は、故郷の家の大きさに、はにかんでいたのだ」という一文を読んで、あの頃の苦しさをなかったことにしないでおこうと思えるようになりました。 中東をひとくくりにしないで見ることができるのも幼い頃の経験のおかげだと思います。」

「小説は制約がない点で本当に恵まれてるので、この立場を利用しない手はないよねって。」

「ニュースでこぼれ落ちてしまうこと、たとえば”シリアのダルアーでデモが起こって200人亡くなりました”っていうニュースが、流れていってしまうかもしれないのを、小説だったら”あなたの国のあなたの街であなたの大切な人が200人亡くなりました”と訴えることができると思うんです。あなたや私だったかもしれないということに置き換えて。」

「そしてこの1年ぐらい作家として気持ちがすごく変わってきています。今まで自分自身に対して小説を書いていたのが、世界の情勢や世界の匂いとかを書いていると、とにかく色々な人に読んでほしいという気持ちに変わってきました。普段本を読む心の余裕のない人にどうしたら本を読んでもらえるか、ずっと考えています。」

「とにかくあきらめないことやと思っています。考え続けることを。考えるのを放棄したら、ほんとに終わってしまうと思います。」

「”差別をしない”ということを”みんな同じと思う”のも危険。無茶やし。私は”みんな違う”ところから始めたいというか。小説の感想でも「すごい共感しました」って言ってくださる方が多いんです。めちゃくちゃうれしいけど、もっとうれしい感想って「ぜんぜん共感できんかったし訳わからんかったけど大好き」なんです。それを人間同士でもできるって思うんです。「あなたの言うことすごくわかるから好き。あなたの宗教すごくわかるから好き」じゃなくて「なんでこんなおいしい豚食べられへんのか意味わからんけど、あなたのことは好き」とか。”理解できへんし、共感できないけど好き”っていう関係が今自分が考えられる限り一番目指したいものです。」

「たとえば親とか。正直、意見も趣味も合わへんし、でもやっぱり愛してるじゃないですか。それって、肉親っていうだけが理由じゃない気がして。ではそれは何かって言うと、その人がいてくれないと世界が成り立たなかったということやと思うんです。自分だけが生きてたら世界じゃないですよね。」

この小説の主人公は「アイ」、後に結婚するカメラマンは「ユウ」、小学校時代か中学校時代の親友が「ミナ」です。 IとかYouとかEverybodyとか名前にも意味が込められているように感じました。アイは愛にも物事を見つめる目(アイ)にも通じますね。

日本の3.11やシリアの難民問題も含め様々な国で起こる悲惨な災害、殺害等が取り上げられます。 主人公は心を痛めるのですが、西さんの文章は驚くほどフラットに思えました。

私たちに肩肘はらない小説を通じて、私たちなりの接し方を提案しているかのように思えました。

by zoompac | 2017-03-12 08:42 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「覇王の家(下)」司馬遼太郎、模倣家としての家康像!

f0090954_08071285.jpgこの小説は、秀吉が天下取りをする過程で唯一敗戦を喫した、織田信雄・徳川家康連合との「小牧・長久手」の戦いにその大半のページを費やしています。

この当時織田信雄は尾張から伊勢にかけて100万石に近い版図をもっていました。 一方、徳川家康も本能寺の変の後のどさくさにまぎれて手に入れた甲州、信州に準本拠地の遠州、駿河、そして本拠地三河で五ヵ国の太守になっていました。

この戦いでは、家康軍は三河の岡崎城から尾張のほぼ中央に位置する清州城に移動して陣を構えます。 一方の秀吉軍は美濃の大垣城から尾張の北に位置し美濃との境界に近い犬山城に本陣を置きました。

北に位置する犬山城とそこからやや南西に位置する清州城の真ん中に位置するのが小牧山で、やがて家康はこの小牧山を本陣としました。

犬山城から南東へ移動して、三好秀次、池田勝入斎、森武蔵守長可等が空巣狙いのように三河の岡崎城を目指した途中にあったのが小丘陵の起伏する長久手でした。小牧山からも南東に位置し、家康軍が秀吉側の各個を撃破し、池田勝入斎、森長可は戦死しました。

その後は、秀吉軍、家康軍共に「後の先」狙いでにらみ合いとなりました。

結局、秀吉は長対峙を嫌い外交を使って打開を図りました。

同盟を結んだ織田信雄が、家康に相談することなく秀吉の調略に乗って秀吉と和議を結んでしまいます。

家康はハシゴを外された形で、その後は秀吉と戦う理由も消滅してしまいました。

司馬遼太郎氏のこの小説を読むと、徳川家康という人物を模倣のスペシャリストのように切りとってくれています。

信長と秀吉の派手好みは性に合わなかったようで、同じ安土桃山時代に生きながら、家康は安土桃山文化とは無縁であったと思えるぐらいです。

商売とか交易には信長・秀吉ほど力を入れず、茶の湯にも興味はまったくありませんでした。

むしろ、敵方であった武田信玄をいたって尊敬しており、治水や農本主義的なところは進んで取り入れました。 この農本主義が江戸300年に引き継がれます。

武田家滅亡の後、元の武田の家臣を信玄の編み出した甲州式軍法や陣法毎すべて取り入れて徳川の軍制に大改革を施しました。 服装にいたるまで徹底的にまねをしました。

小牧・長久手の戦いなどは、家康がこの徳川版「信玄軍団」の壮大なる実験として実践経験をするために仕掛けたのではないかと思えるくらいです。

さらに、家康はこの小牧・長久手の戦いで、羽柴秀吉の調略能力の高さによほど感銘を受けたようです。

後年、関ケ原を演出し、大坂夏の陣を仕掛けたときは、ことごとく秀吉の創案した調略のあの手この手を模倣し自家薬籠のものにまで仕上げたのです。

同じ詐欺まがいの外交調略にしても秀吉の明るい性格と違って、家康の吝嗇で暗い性格で実施されるとずいぶんその印象も違ったものに映るのは仕方ないですね。

余談ながら、秀吉は死後神になることを望み、その旨朝廷に内奏して豊国大明神という神号を得ました。自分の死後神になるという珍奇な着想は、織田信長がすでに持っていた形跡がありますが、豊臣秀吉がそれを死の前から考え、側近に言い含めておき、死後、豊国大明神という神号を贈られ、阿弥陀峰の廟所に静まったのです。

家康はこの着想と方法さえ真似、東照大権現という神号を得ました。大明神の創造性は大権現の模倣性によって引き継がれたのです。

細かくて吝嗇で知られた家康が、死後は、秀吉のごとく気宇壮大にして雄渾な神として飾り奉られるなんてちょっとユーモラスですね。

司馬遼太郎氏は、家康に対しては辛口です。

「かれの生涯は独創というものがほとんどなかった。」と切り捨てていました。 さらに、「徳川幕府は、進歩と独創を最大の罪悪として、300年間、それを抑制し続けた。」と追い打ちをかけていました。

by zoompac | 2017-03-11 08:07 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画 「アサシン クリード」_粗雑なストーリー設定に消化不良感の残った映画!

f0090954_06090631.jpgイメージとちょっと違った映画でした。

アラビアのロレンスこと、トーマス・エドワード・ロレンスがまだオクスフォード大学の2年生(21歳)だった1909年にバックパッカーとしてべイルートで下船し今のシリアを約半年に渡って旅した足跡を牟田口義郎の「アラビアのロレンスを求めて」という本から知ることができました。

その彼の足跡はシリアの古城巡りといったものでしたが、その中にシリアの内陸のマスヤフの山城がありました。 十字軍時代(第1回1096年~第9回1272年)に名を轟かしたアサシン(暗殺者の語源となりました)教団の根城があったところです。

アサシン教団の根城の南東には11世紀の初めにイスラム教徒の太守によって築城された天下の名城とされるクラク・デ・シュヴァリ古城があります。

この城はやがて十字軍戦争でキリスト教徒の手に渡り、12世紀半ばには聖ヨハネス騎士団に譲渡され増改築を繰り返し13世紀に最盛期を迎えました。 2000人を収容できるこの城は、イスラム世界からは、「喉元に突き刺さった骨」と呼ばれ、反十字軍勢力からすれば驚異の的でした。

聖地エルサレムに存在した修道院が元になり、巡礼者の保護のために軍事化したという点では、聖ヨハネス団騎士団はテンプル騎士団より歴史は古いですが、 第一次十字軍の後はこの2つの騎士団はほぼ同様の活動を行っていたようです。

ただアサシン教団の活動は、キリスト教世界に対する攻撃という単純なものではありませんでした。 教団の創始者はスンニ派で、シーア派をも敵対視し攻撃していたようです。

映画を観る前の私の想像は、時代はこの11世紀~12世紀の十字軍時代で場所はイスラムの地のアサシン教団根城対聖ヨハネス騎士団の拠点での二大敵対勢力の争いだったのですが、映画では15世紀のレコンキスタでスペインからテンプル騎士団によってイスラム勢力が最後の拠点グラナダから駆逐される中アサシン教団の精鋭の兵士達が最後の抵抗を試みる展開が描かれていました。

地中海世界がサラセン人に圧倒され、イベリア半島は718年~1492年までイスラム勢力に覆われた歴史を持っています。レコンキスタというキリスト教徒によるイベリア半島再征服活動により、イスラム勢力はイベリア半島の南に押しやられ最後の拠点となったグラナダが陥落したことですべての領土を失ってしまうのです。

そのグラナダの最後のスルタンの王子をテンプル騎士団の魔の手から守る役をアサシン教団の最後の兵士としてマイケル・ファスベンダーが暗躍するという設定になっていました。

全世界で人気の同名ゲームシリーズを扱ったもののようですが、私はそのゲームに関する知識はありません。またこの15世紀のイベリア半島におけるレコンキスタの中で、テンプル騎士団とアサシン教団との間に映画のような確執があったのかどうかについては詳しく知りません。史実ではなく、ゲームでの設定ということかもしれませんが、いずれにせよ私の想像とは違った話でした。

映画では、時代が錯綜して話がややこしくなっていましたが、15世紀のスペインを追体験しながら、レコンキスタの戦いの中で、暴力といったキーワードで何か世界征服ができそうな秘宝をグラナダのスルタンから手に入れるため王子を誘拐したテンプル騎士団に、アサシン教団の伝説の兵士が立ちはだかるといった構図の話でした。

アサシン教団が正義で、スルタンから王子を誘拐して秘宝を手に入れ世界征服を狙うテンプル騎士団が悪者という設定のようでした。

2016年と15世紀を行ったり来たりの映画でしたが、2016年のテンプル騎士団組織についてはさすがにもう少し説明を加えるべきだと思いました。

テンプル騎士団といえば、莫大な財をもっており、ルネサンス時代にはフィレンツエのメディチ家がその財の運用に銀行業にいそしんだことで有名です。 テンプル騎士団は公には14世紀にローマ法王によって解させられています。その財の一部はテンプル騎士団のメンバーだったポルトガル王(エンリケ航海王)にも渡り、イエズス会からザビエルが日本に布教にやってきた資金をその航海王が援助したと司馬遼太郎氏が「街道をゆく 南蛮の道編」で紹介していました。

解散後のテンプル騎士団は、ルネサンスから大航海時代に移行する中、財を海賊紛いの貿易、交易で運用し財を膨大なものにしやがてフリーメイソンという組織が立ち上がってきます。アメリカの独立宣言に署名した56人のうちの53人がフリーメイソンのメンバーで、ジョージ・ワシントンもその1人だとかは有名な話ですよね。ロックフェラー財閥もフリーメイソンのメンバーだと言われています。

作家の広瀬隆によると、ロス・チャイルド家がそもそも、フリー・メイソンで、兄弟で、ドイツ、イギリス、フランス等にそれぞれ分散し根を下ろしたようです。 フランスではワインで有名なロートシルト(ムートン・ロートシルト)です。

日露戦争の折、イギリスで日本の国債を買ってくれたのもロス・チャイルド/フリーメイソンだという話も有名です。

現在500万人とも言われるフリーメイソンのメンバーですが、この映画ではイギリスのロンドンでしょうか、テンプル騎士団員の最高会議が開催されているシーンがありました。

なんとなく、宗教を悪用して権力と富を追求している組織には思えるのですが、ゲームでもそのような勧善懲悪調に描かれているのでしょうか。

ゲームを知らない者にも理解できる映画にしてもらいたかったですね。

私にとってのアサシン教団員は、金正男毒殺に係った若い女性のイメージのほうがしっくりくるのですが。マイケル・ファスベンダーがカッコよすぎでした。

映画では、アサシン教団員のDNAを持った死刑囚(マイケル・ファスベンダー)が2016年のテンプル騎士団系の財団の研究室(CEO役にジェレミー・アイアンズ、遺伝子記憶再生装置の開発者でCEOの娘: マリオン・コティヤール)の開発した装置で、DNAから過去に遡って、当時のテンプル騎士団の入手した秘宝を現代から送り込んだアサシンのDNAを持つ男に探させる物語となっていました。

そんなことができるのなら、いったんテンプル騎士団が入手したお宝の行方なんて、テンプル騎士団のDNAを持った自分たちで探せばどうなのよと思いつつ、なんだかボタンの掛け違い感いっぱいの映画でした。

マリオン・コティヤール扮する女性研究者の立ち位置も掴めず、消化不良感の残る映画でした。

by zoompac | 2017-03-09 06:08 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「DIVE‼(上)」森絵都

f0090954_05393324.jpg今年の本屋大賞ノミネート作品で私が勝手に本命視している森絵都の「みかづき」を読んだ後、森絵都作品の読後の喪失感(もっと読み続けたい!)に耐えられず、以前、書評家の北上次郎氏がスポ根小説の最右翼と絶賛していた「DIVE‼」に手が伸びてしまいました。

この手のスポ根小説では、あさのあつこの「バッテリー」とか佐藤多佳子の「一瞬の風になれ」が私のお気に入りなのですが、奇しくも、この二人が文庫本「DIVE‼」の上下巻それぞれの解説をされていました。

あさのあつこの「バッテリー」は面白かったのですが、作者がこの小説を愛するあまりなのでしょう、登場人物の一人が小学高学年から、中学へ、そしてやがて高校生へというあたりで、作者自身の和歌の蘊蓄をその登場人物の口を借りて気障な感じで披露していました。 作者あさのあつこは楽しんでそれをやっていたようですが、読者の私としてはその部分を読むたびに歯の浮いたような不快感を覚えました。

似たようなことを森絵都もやっていますね。

ダイビングの練習をしている男子中学生3人の元に、若い女性が新コーチとして颯爽と登場するのですが、黒い水着と黄色いTシャツ姿のコーチの後ろ姿を見た中学生の一人の口を借りて「いいケツしているよな」ってつぶやかせているのです。

四十過ぎのおっさんならともかくまだ世の中の酸いも甘いもわからぬ中学生にはかせるセリフじゃないですよ。

ただ、オヤジ読者層に寄り添うセリフってところは買えますね。

そのセリフは、たとえば映画の「ラ・ラ・ランド」でLAを見下ろす夜の公園でミア(エマ・ストーン)とセブ(ライアン・ゴズリング)のダンスシーンを観ている初老のオヤジが、薄暗がりの中ミアの黄色のドレスが妙に体に纏わりつきつつも激しく体を回転させるので輪郭が浮き出た尻を生唾飲みながらつぶやくって代物でしょう。

「みかづき」では昭和、平成の社会の変化の中で塾経営に携わった一家三代の物語を描いていましたが、この「DIVE‼」も、ダイビングに携わった三代の物語が描かれていました。

「いいケツ」したコーチ麻木夏陽子(あさぎかよこ)の祖父が1936年のベルリン五輪で飛び板飛び込みと高飛び込みの両部門で4位入賞を果たしたという設定です。

これにはモデルがいます。柴原恒雄氏です。戦前のベルリン五輪で日本飛び込み界の最高到達点で、後にも先にもこの4位を上回るオリンピックの成績はありません。

ただ、オリンピックでの入賞に限って言えば、1992年のバルセロナ五輪で金戸恵太が8位入賞を果たしています。 ちなみに彼のお父さんは金戸俊介で1960年のローマ、1964年の東京オリンピックに出場しています。

金戸恵太は、88年のソウル、92年のバルセロナ、96年のアトランタの3大会に出場しています。92年のバルセロナで8位入賞した時、父俊介は日本選手団コーチを務めていました。

この「DIVE‼」は2008年に映画化されており、3人の中学生に、林遣都、池松壮亮、溝端淳平、いいケツしてるコーチが瀬戸朝香です。

現在は金戸ダイビングクラブ(旧ミキハウスダイビングクラブ)で若手の育成に当たっている金戸恵太が、映画『DIVE!!』では撮影前の合宿時から選手役を演じた俳優のダイビング指導をし、劇中でも川口コーチ役として出演しています。

そして、この金戸恵太の次女が中学生ながら先月2月に初のシニア大会となる飛び板飛び込み(3メートル)で、女子高飛び込みでリオデジャネイロ五輪8位入賞の日本人エース板橋美波(17歳、JSS宝塚)の4連覇を阻む快挙で頂点に立った東京五輪期待の星金戸凛(りん)です。

金戸一家のダイビング競技は彼女の祖父と父だけではありません、彼女の祖母も母もオリンピック選手なのです。

三世代続く飛び込み一家のサラブレッド金戸凛が、健在の祖父・祖母に、父母に、いや日本国民に、4位入賞よりさらにその上のメダルをもたらせてくれる感動の瞬間まで残り3年半ですね。

この「DIVE‼」を読むと、各選手が10回のエントリーでどのように技と美を競い合うのかがよく理解できます。東京五輪で世紀の瞬間の喜びを共感したい人にこの「いいケツ」ケッサク小説をお勧めします。

高さ10メートルからの飛翔は時速60メートルになりその空中演技の時間はわずか1.4秒って凄くないですか?

by zoompac | 2017-03-08 05:40 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書「がん消滅の罠(完全寛解の謎)」岩木一麻

f0090954_07092090.jpg王様のブランチ等で売れすぎランキングの上位にあったことや、「がん」を題材とした殺人事件ではなく活人事件という発想のユニークさに興味を持ち読みました。

最後の4ページに、「ちょっとちょっと~!」という感じのどんでん返しが用意されています。

活人事権と謳った以上それは反則でしょという感じで、本筋とは異なる脈絡での完全(殺人)犯罪がさらりと書かれていました。

そして最後の最後にもうひとつ違う仕掛けが施されています。

選評者の茶木則夫さんはラストの一行に驚愕したと大絶賛していましたが、ちょっと唐突過ぎていて私の琴線には響きませんでした。

「えっ、なんでそうなるの」って疑問と「で、何が言いたいの」って物足らなさ感が残ってしまいました。

ビッグデータ検索時代でにそんなことも簡単に突き止められる時代になったんだなと軽く受け流す読者層も結構いるのではないでしょうか。

最前線での癌治療に当たる医療現場の記述部分は面白く読ませてもらいましたが、小説としての完成度はイマイチでした。

主人公に華もなく、友達同士の議論や会話の繰り返しで、起承転結のリズム感にも欠けていたなぁ。

この作品が、第15回の「このミステリーがすごい」大賞受賞作品だということなのですが、同じ医療界のことを題材にして2005年に「チーム・バチスタの崩壊」で、第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞された海道 尊氏の作品を読んだ時のようなインパクトはなかったです。

選評者の大森望さんは、ストーリーテリングが弱いとか、議論ばかりで展開が地味だとか、もろもろの小説的な弱点は、この作品に関しては枝葉末節で、大胆不敵な謎の取り上げ方とその鮮やかな謎解きを絶賛され、海道尊の作品に肉薄するレベルの本格的医療ミステリーと言っていました。

謎解き等より登場人物の人間的な魅力や物語の展開を楽しみたい私にとっては、本末転倒なコメントとしか響きませんでした。

by zoompac | 2017-03-05 07:10 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画 「スノーデン」_日本にも覆われている米NSAの監視包囲網!

f0090954_07072233.jpg2月にTOHOシネマズスカラ座で観ました。

ハリウッドを代表する社会派監督オリバー・ストーンが、アメリカ政府による個人情報監視の実態を暴いた元CIA職員エドワード・スノーデンの実話を、ジョセフ・ゴードン=レビット主演で映画化した作品です。

「いや~、それにしても、ここまで問題は大きくなっているのか~」って感じの映画でした。

「大統領の陰謀」を先月DVDで観たばかりでしたので、余計感じ入ってしまいました。(タイプライターを叩く音がリズミカルで、緊迫感と疾走感を煽り立ててくれていましたね。時代性も感じられお勧めの映画です。)

ワシントンDCのウォーターゲート・ビルの民主党本部でおきた盗聴進入事件から始まった当時のアメリカ最大規模のスキャンダルとされたウォーターゲート事件でしたが、このスノーデンによって暴露された規模の大きさに比べるとかわいく思えてしまいます。

それだけ世界を駆け巡る情報量が1972年のウォーターゲート事件から約40年後の2013年のスノーデン事件では隔世の感があるということです。IT社会の到来でこの情報量は爆発的に増殖中で、またその情報を検索、分析する技術も飛躍的に向上しています。ある意味、この国家による監視網構築はビッグデータの時代の落し子といえるかもしれません。

最先端IT技術とハッカー集団を駆使してアメリカ国家安全保障局NSA(National Security Agency: 米国防長官直轄)やCIAがやっていることは、ウォーターゲート事件の教訓は何も活かされてないようにも思えます。

それどころか、盗聴、ハッキングのターゲットは国内の政敵という枠から国境を飛び出し、仮想テロ集団から、あらゆる国の政治・軍事・産業の中枢のみならず、世界中の個人のFace Bookやメールにまで及んでいるのですね。

うかつに米国大統領の悪口を書こうものならたちまちキーワード検索でNSAの監視アンテナに引っ掛かり、逆に発信元の個人のスキャンダラスなプライベート生活まで監視下に入るという怖いエピソードが紹介されていました。

ウォーターゲート事件はアメリカで起きたことと割り切れましたが、このスノーデンが暴露した事実は他人事ではありません。

この映画でも、スノーデンがしばらく日本の米空軍横田基地内にあるNSAの日本本部で働いていたエピソードが紹介されていました。日本で飛び交う情報ももしっかりNSAの世界監視網の管轄下にはいっているのです。

何故、日本のメディアがこの問題をしっかり取り上げないのかわかりませんが、2013年に強行採決された(特定)秘密保護法って不気味ですね。(2011年の3.11の東北大地震の福島第一原発のニュースも海外のメディアでは日本のメディアが報じないことまで流れていたことが思い出されます)

スノーデン自身が、日本の安全保障のために特定の情報は秘匿されるというその法案をデザインしたのはアメリカだと言っているようです。

国家の安全保証のための情報が、本来の目的を外れて、国家権力者が自分の政権を守るため、政敵や特定人物の弱みを握って蹴落とすといったことなどに悪用されていたとしたら許せないですよね。

「これはおかしい」と、行動を起こした元CIA職員 スノーデンの感覚は正しいと思いますよ。その勇気ある行動を起こした男が身を潜めている先がロシアというのも皮肉な話です。

ポールダンサーのインストラクターをしていたスノーデンの妻のリンゼイもモスクワに渡り共に暮らしているとの後日談を語った字幕が救いになっている映画でした。

スノーデンが早い機会にアメリカに無事戻れる日がくればいいのですが。

国を愛する平凡な若者だったスノーデンが、なぜ輝かしいキャリアと幸せな人生を捨ててまで、世界最強の情報機関に反旗を翻すためガーディアン誌にその情報を提供したのかといういきさつがよく理解できる映画でした。

マイクロソフト、グーグル、ヤフー、フェイスブック、AOL、スカイプ、YouTube、アップル等の各社のサーバーに政府お抱えのITオタク職員達が直接アクセス(侵入?)し、国民本人の知らぬ間に自身の個人的な情報が筒抜けにされる秘密捜査の実態は、知るにつけ恐ろしくも不気味なホラ~映画を観ているような気分にさせられました。

メール、チャット、ビデオ通話、ネット検索履歴、携帯電話などの通話等、世界中のあらゆる通信経路を通過する情報のすべてが標的にされればたちどころにNASAに筒抜けと思った方がいいようです。

ということは、このブログも・・・?

ブッシュはともかく、オバマまでそうした監視システムを擁護していた事実をこの映画で知り少々意外感をもちました。一部の狂信的な人がこの情報監視網を自在に操れるとしたら、自由も民主主義も阻害される可能性大ですね。

ジョージ・オーウェルの「1984年」を読みたいと思いました。

by zoompac | 2017-03-04 07:08 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

2017年2月の読書と映画の総括_森絵都「みかづき」と「ミッドナイトラン」

f0090954_05535472.jpg読書(5冊)
170203 「街道をゆく 濃尾参州記」司馬遼太郎
170210 私のイチ押し、2017年の本屋大賞ノミネート作品「みかづき」森絵都
170211 「海の都の物語 4 ヴェネツイア共和国の一千年」 塩野七生
170223 「沈黙」遠藤周作
170225 「小説フランス革命16 徳の政治」 佐藤賢一、残すところあと2巻!

久しぶりに3S(司馬遼太郎、塩野七生、佐藤賢一)の揃い踏みでした。
森絵都の「みかづき」が面白かったので、今、「DIVE!!」という本を読んでいます。
村上春樹の新刊本も思わず買ってしまったけど、3月も3S揃い踏みといきたいですね。
遠藤周作の「沈黙」を再読して、映画を観ました。読んでいてよく理解できなかった穴吊りの拷問が映画で氷解しました。
4月の本屋大賞の発表までまだ時間がありますが、本命は森絵都の「みかづき」ではないかと思っています。昭和、平成の社会の変化の中で塾経営に携わった一家三代の物語に加え、終盤にはメビウスの輪を彷彿させる構成の妙が冴えわたる逸品です。

映画(7本)
170224 恵方巻を食べながら、NHKBS録画「北北西に進路を取れ」を観賞
170205 NHKBS映画 「ナバロンの要塞」
170208 「アイヒマンを追え」
170215 「ミッドナイトラン」
170212 「大統領の陰謀」
170219 「海は燃えている」_移民・難民問題の地中海の玄関の現実!
170224 「沈黙」f0090954_06071681.jpg

印象に残ったのは、アメリカの「ミッドナイトラン」。ローバート・デニーロが主人公の賞金稼ぎを演じています。

この映画でアメリカの一面を知ることができました。

犯罪大国アメリカでは容疑者の数もとてつもなく多いため全ての人を拘束するとすぐに留置所が一杯になってしまうのです。そのため、大半は早々に保釈されるとか。そんな人々のために各裁判所の前にはbailbond agentと呼ばれる保釈金(bail bond)専門の金融会社(保釈保証業者)が群がって商売をしています。

容疑者はそこでお金を借りて保釈保証金を裁判所に納めて保釈されるのですが、容疑者が逃亡して期日までに裁判所に出頭しないと保釈金は裁判所に没収されてしまいます。

それでは金融会社は大損になるので、ロバート・デニーロが演じる主人公のような賞金稼ぎ(bounty hunter)と呼ばれる人の出番となるのです。賞金稼ぎは雲隠れした容疑者を連れ戻してもらうということになるのです。

3月は、2月に観た「スノーデン」、「ラ・ラ・ランド」の感想記事を早めにアップし、その後3月3日からのアサシン・クリード、3月11日からのチア・ダン、3月21からの楊貴妃、31日からのジャッキーを観たいと思っております。DVDや録画映画は「ユージュアル・サスペクツ」、「スピード」、「フェイク」、「インファナル・アフェア」を観る予定です。

総括
170201 2017年1月の読書と映画等の総括(5冊+2本+年次総括2本+直木賞、本屋大賞の予測2本)

by zoompac | 2017-03-02 05:52 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

映画「ラ・ラ・ランド」_2017年度アカデミー賞、6部門受賞!

f0090954_06204131.jpg作品賞受賞作として「ラ・ラ・ランド」のタイトルが読み上げられ、壇上に上がった「ラ・ラ・ランド」チームが歓喜の受賞スピーチを始めるも、その後本当の受賞作は『ムーンライト』であることが判明して大混乱のうちに幕を閉じた第89回アカデミー賞授賞式でした。

作品賞のプレゼンターを務めたのは、「ボニーとクライド/俺たちに明日はない」のウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイでしたが、どうやらアカデミー賞授賞式運営サイドから間違った封筒を渡されたようです。

ウォーレン・ベイティが封を開けたところ、直前に主演女優勝を獲得したはずの “エマ・ストーン「ラ・ラ・ランド」”のカードが出てきて、戸惑った様子でフェイに目配せしたところ、フェイはそのまま「ラ・ラ・ランド~!」と読み上げてしまったということらしいのです。

間違い発覚の後、騒然とする舞台からフェイは姿を消し、ウォーレンは壇上で上記の言い訳を司会者に(汗をかきながら?)していました。

長年にわたり同賞の投票の集計および管理を請け負っている一流会計監査事務所プライスウォーターハウス(PWC)の男性社員のミスだったとのことです。 授賞式の模様のツイッターでの実況中継に夢中だったとか・・・。 お粗末な話ですが、「ラ・ラ・ランド」の幻の作品賞のハプニングは長く語り継がれることになりそうです。

発表の前から「受賞は間違いなし」といわれてきた「ラ・ラ・ランド」の作品賞は、ブラッド・ピットが製作総指揮を務めた『ムーンライト』に譲る結果になりました。それでも、監督賞や主演女優賞など6部門を獲得したのは下馬評通りの強さでした。

去年の授賞式が白人優先と非難されたことから今年は黒人受賞者のバランスを考えたかの印象をもちました。それにしてもハリウッドは完全に反トランプの嵐でしたね。司会者の大統領に対する皮肉と揶揄が受けていました。

さて、「ラ・ラ・ランド」の話です。

デイミアン・チャゼル監督の「セッション」を観終わった後は、そのスクリーンにアップで映し出されたJ・K・シモンズのド迫力とその迫力をはね返そうと血まみれの手でドラムをたたき続ける主人公のド根性に圧倒され、ぐったりして劇場み明かりがともった後もしばらく動けませんでした。

その重量感とは打って変わってこの「ラ・ラ・ランド」の軽さは何でしょう。心も体もふわふわ浮き上がりそうな映画でした。ただ、最後に夢を実現したかわりに二人が失ったものも突き付けられていて、観客が現実の世界に戻る前にワンクッションを入れられた感はありました。ちょいとほろ苦い大人の童話って感じですが、「セッション」とは違って手に汗握らず気楽に楽しめます。甘酸っぱい映画です。

ここから先はネタバレ満載です。まだ映画を観ていない人はここまでにしてください。

夢と現実の境界線が明白でない青春時代の象徴なのでしょうか LAを見下ろす夜の公園は駐車した車を探すために歩いていたミアとセバスチャン(セブ)二人が矯めつ眇めつの動きからいきなりという感じではなくいつの間にかという感じでダンスが始まります。薄暗がりの中ミアの纏った黄色のドレスにまで命が吹き込まれたかのような絶妙長回しのカメラ撮影技術も光っていました。さりげなくミアをリードするセブもイケていました。

売れない女優ミアとジャズピアニストセブの夢の実現への葛藤と互いの夢の実現を励ます寄り添う恋を、往年の名作ミュージカル映画を彷彿させるゴージャスでロマンチックな歌とダンスで描いていました。(と言って、私がこの場面はあのミュージカルのあの場面だと言えるほどミュージカルを観ているわけではありません。ミアがセブとの待ち合わせ時間に遅れて映画館にやってきて上映中の映画のスクリーンの前に立ち上がってセブを探すシーンは何かの映画のオマージュだと思うのですが・・・。)

ミアがプリウスに乗ったり、スマホを使ったりで、時代は現代のなのでしょうが、1950年代の雰囲気を醸し出す場面も取り入れられていたためか、懐かしい感じのする不思議な映画でした。

ミュージカルっぽく感じたのは冒頭から前半にかけてです。 LAのハイウェイの入り口での大人数の歌と踊りが、ミアのルームメイト4人の歌と踊りに、そして次第にミアとセブ二人きりの踊りにスケールダウンされる中、歌も口を大きく開けて叫ぶようなものから弾き語りのせつない哀愁を帯びたものに変化していきました。 従来のミュージカルとは異質の作品に思えました。ドラマとミュージカルの境界線が曖昧で、その変化に徐々に慣らされていったためそう感じたのかもしれません。

夢中で夢を追っかけその実現のため別れた二人が5年後に、再会した場面が、何故か、映画「カサブランカ」のボガードとバーグマンの再会のようでした。(女優を目指すミアの部屋にバーグマンの写真が飾ってあったため無意識のうちにそう思ったのか、監督の計算づくの仕掛けにやすやす嵌ったのかよくわかりませんが)

「カサブランカ」では「リックのバー」にバーグマンが演じる主人公が夫婦で現れますが、この映画では「セブのバー」にミアが夫婦で音楽に誘われて入ってくるのです。(この再会は偶然じゃなく、必然の運命のようにも思えました。)そこでセブがミアにとってそして観客にも懐かしい(懐かしく思える)曲をピアノで奏でます。(さすがにアカデミー賞の歌曲賞と作曲賞を獲得しただけはあります。い~曲です。)

そこからの走馬灯のようなコマ送りもよかったですね。現実の世界は長回しで思い出や妄想の世界はカット写真の早コマ送り七変化です。二人が共に疾走した過去が回顧され、そこからミアとセブのありえたかもしれないもう一つの運命がパラレルワールドのように立ち上がってきます。 そして、音楽も走馬灯の妄想も終わり、やがて現実に立ち戻り失ったものの大きさに立ち尽くす二人の表情が印象的でした。夢のようなふんわりしたミュージッカル映画の興奮から、ちょっぴり苦い現実を突き付けられ我に戻って観客はそれぞれの日常に戻っていくって映画でした。

エマ・ストーンは今まであまり意識したことのなかった女優さんでしたが、この作品で私の評価は一変しました。彼女のダンス(身体表現力)や演技、特に顔芸というか、オーディション一発不合格の痛い表情から喜びへの七変化、そしてセブとの再会のときの複雑な表情が絶品でした。大きな瞳の動きで実に細かい感情の変化を表現できる彼女の才能に驚きました、セブ役のライアン・ゴズリングが表情で演技する役者ではないので、そのさりげない彼の演技との組み合わせも効果的でよかったです。

ミュージカル映画の中での無粋な車のクラクションもいい小道具になっていました。 最初は最悪の出会いでしたが、とにかく出会いのきっかけを作ってくれました。 2回目は彼女への呼び出しの合図、ミアの満面の笑顔と上ずった声の台詞が印象的でした。 そして3回目はミアに運命の知らせをセブがミアの実家付近に運んできたシーンです。 今後も車のクラクションを聞くたびにミアは条件反射を起こしてしまうかもしれませんね。

映画好きの人が見ても、それほどでない人が見ても、程度の差こそあれ青春の挫折を経験した人なら、心に響くものがある、そんな映画です。

by zoompac | 2017-03-01 06:22 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)

読書 「小説フランス革命16 徳の政治」 佐藤賢一、残すところあと2巻!

f0090954_07244935.jpg「徳なしでは恐怖は有害であり、恐怖なしでは徳は無力である。その理(ことわり)を万人が理解して、正しき独裁を支えていくこと」と理想に燃えるロベスピエールでしたが、徳と恐怖のバランスをとることはなかなか難しく、恐怖政治に弾みがついていく様がこの第16巻で巧みに描かれていました。

イギリス海軍に占領されていた地中海に臨む軍港都市トゥーロンを奪還することに成功したとの明るいニュースもありました。ナポレオン・ボナパルトという若い砲兵隊隊長が出色の働きをしたのです。

ロベスピエールによって断頭台へ送られる人間も増えてきて死刑執行人のシャルル=アンリ・サンソンも忙しくなりそうです。

リヨンで2000人を処刑したと言われるジョセフ・フーシェはまだ登場しないですね。 ロベスピエールの政敵ですから、次の17巻か18巻あたりで登場するのでしょうか。

ちなみに、シャルル=アンリ・サンソンの目を通してフランス革命を描いた漫画に「イノサン」(英語でイノセントの意味)があります。 また、ジョセフ・フーシェの半生を綴った倉多江美の漫画「静粛に、天才只今勉強中」って漫画もあります。 フランス革命を描いた漫画は「ベルサイユのばら」だけではありません。

マキャヴェリストとしてのフーシェを描いた名著として名高いツヴァイクの「ジョセフ・フーシェ」は、司馬遼太郎氏も絶賛しておられ、昔、一読したことがありましたが、フランス革命の派閥(ジロンド派、ジャコバン派、山岳派、フィヤン派、コルドリエ派等)名が多く、その対立位置関係を理解する背景知識も乏しかったので、読み通すのに苦労しました。

フーシェは革命時代の警察官僚の経歴から出世し、タレーランと共にナポレオンの内政を支え、後にナポレオンを裏切ることになるまことに興味深い人物です。 この機会に再読してみたいです。

さて、小説フランス革命も残すところ17、18巻の2巻となりました。

佐藤賢一氏は、「小説フランス革命18巻」に続いて、同じくらいの長編大著「小説ナポレオン」を執筆中です。 ナポレオンの物語は、「ベルばら」の作者の池田理代子氏の「栄光のナポレオン エロイカ」でしか読んだことがありません。 楽しみです。


by zoompac | 2017-02-25 07:25 | 読書・映画・音楽 | Comments(0)
RELEASE INFORMATION NEW ALBUM

[通常盤]「Now On Sale!!」
TOCP-66380/¥2,548(税込)

[DVD付 初回生産限定盤]
「Now On Sale!!」
TOCP-66381/¥3,500(税込)

NEW SINGLE
WMP HIGH LOW
REAL HIGH LOW
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海外オフィシャルサイト
http://www.gorillaz.com/
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