”広い世間には、我々の常識の範囲内では理解できない思考を持ち、その思考に沿った行動を取る人物が、我々が漠然と想像するよりはるかに多くいる。”そうです。
確かに、今は画一的ではなくいろいろな考え方をした人がたくさんいて、常識で測れない信じられないような事件を多く目にします。事件の近所の人の話だと”まさかあのまじめな人に限って・・・”という感想もあれば、”いつかはこういう事件を起こすのではないかと思っていた・・”とかという意見もあります。
宮部みゆきの”名もなき毒”は、ぬれ衣とでも言うんでしょうか、思い当たる節もないのに逆恨みを買ってしまうという怖い話しです。人の思い込みとか、世間に対する恨みとかが毒となって、罪のない人を蝕んでしまう・・事件を引き起こすのです。
身の回りにありそうな話だけによけい不気味です。
脇役ですが、ごんちゃんというあだ名の”まゆみ”の竹を割ったような性格と小気味のよい台詞が清涼感を持つ救いとなっています。
事件を呼び寄せる杉村、美人に縁のある杉村が主人公です。今多コンツエルン会長の娘婿で、その会社の社内報を編集する部署の副編集長です。彼は、次作ではこの世にある毒を清めるべく人助けのため探偵業を営む探偵業に就いているかもしれません。
相変わらず、宮部みゆきは一気読みできます。