2月10日、11日に行われる柔道グランドスラム・パリで私が注目していた階級は、48㎏の渡名喜風南(帝京大4年)、52㎏の阿部詩(夙川学院高)と世界柔道選手権銀メダリストの角田夏実(了徳寺学園職)、それに昨年12月のワールドマスターズの準決勝で現世界王者のクラリス・アグベニュー(フランス)に勝って優勝した63㎏の田代未来でした。
女子52㎏級で、阿部詩が期待通りの優勝を果たしてくれました。 決勝まで全試合1本勝ち、決勝も地元のアモンディーヌ・ブシャー(フランス)を一方的に攻め続けて3つの「指導」を奪う快勝でした。 圧倒的な強さで12月の東京大会に続くグランドスラム2連勝を飾りました。(写真、左がプシャー、その右隣りが優勝した阿倍詩)
一方、この大会で成績を残して存在感を示したかった角田夏実は、準決勝でブシャーに負けて、阿部との決勝対決という舞台にまで上がれませんでした。3位決定戦でも破れ5位に終わりました。
女子48㎏級の渡名喜も3位決定戦で敗れて5位でした。
準決勝でヨーロッパチャンピオンであるウクライナのダリア・ビロディド(彼女は決勝でも韓国のカン・ユジュンを寝技で破ってこの大会のこの階級の優勝者となりました)に大内刈で敗れると、3位決定戦でもムンフバット相手に指導2でリードしながら、唇を切って何度も治療に当たったことにより反則負けを与えられて5位にとどまりました。
ライバルの近藤亜美(三井住友海上)が右膝の負傷により欠場したため、この大会の優勝候補筆頭との呼び声が高かった渡名喜にとっては残念な結果に終わってしまいました。しかしながら、大会後の世界ランキングではこの階級の日本選手として福見友子以来5年半ぶりに1位となっています。
女子63㎏級では、ブダペスト世界選手権チャンピオンのクラリス・アグベニュー(フランス)、リオデジャネイロ五輪金メダリストのティナ・トルステニャク(スロベニア)、そして、12月のワールドマスターズ王者の田代未来(コマツ)の三つ巴の優勝争いが期待されていました。 この階級のトップ選手3名がこの大会で揃い踏みとなったのです。
田代未来が準決勝でティナ・トルステニャクを技あり大内刈りから寝技への1本勝ちで破ると、2017年度の世界王者クラリス・アグベニュー(フランス)との決勝という大舞台での頂点対決が実現しました。
12月のワールドマスターズでは田代が日本勢に6年間負けなしで田代自身も過去6戦全敗のアグベニューを「一本」で下す歴史的大金星勝利を挙げたばかりでしたが、この日はホームの応援を力に変えたアグベニューが田代を圧倒しました。外巻込で「技有」を得ると、最後は真っ向からの大外刈で田代を「一本」で粉砕し、グランドスラム・パリ5度目の優勝を決めました。 優勝はできませんでしたが、田代の銀メダルは評価できると思います。
57kg級は芳田司(コマツ)が全試合一本勝ちの素晴らしい出来で決勝まで進みましたが、カナダから出場した出口クリスタ(山梨学院大4年)に破れました。
その他、日本は70kg級に現役世界王者の新井千鶴(三井住友海上)、78kg級にもっかワールドツアー2連勝中の濱田尚里(自衛隊体育学校)と昨年度の世界選手権銀メダリスト梅木真美(ALSOK)、78kg超級には2017年の選抜体重別王者の素根輝(南筑高3年)といずれも優勝を狙える人材を送り込みましたが、当てが外れました。新井の2位が最高成績で、濱田と素根が3位、梅木は5位に終わりました。