冒頭のシーンはエルサレムの「嘆きの壁」から始まりました。
12月6日にお騒がせ大王・トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都をエルサレムに承認し米大使館をエルサレムに置くと発言したばかりで、世界中が大騒ぎになっています。
偶然の一致とはいえ、2017年の重大な出来事を象徴する場所であるエルサレムの「嘆きの壁」の大写しが印象的でした。
ケネス・ブラナーが制作・監督・主演の映画です。
それでなくても押し出しの強いケネス・ブラナーが前作のA・フィニーの髭に比べてやたら立派な大きな口髭でさらに目立っていました。
映画「ダンケルク」でもやたらアップで撮影された海軍中佐役のケネス・ブラナーのイメージがまだ記憶に新しく、並み居る豪華キャストの陰を薄くするかのようなこれみよがしの口髭を誇るケネス・ブラナーの私立探偵「エルキュール・ポワロ」に少々食傷気味になってしまいました。
オリエント急行内のスタイリッシュなセットや外からの俯瞰撮影はよかったですが、個人的には。シードニー・ルメット監督作品の方が好きです。
ポワロ役のアルバート・フィニーの(ケネス・ブラナーと比較して)抑えた演技が、豪華キャストの華やかさを引き出したように思えました。 イングリッド・バーグマンがアカデミー助演女優賞を受賞した1974年版を2016年の新・午前十時の映画祭で観たばかりでしたので記憶にまだ新しく残っていました。
1974版は同年度アカデミー主演男優賞など6部門でノミネートされ、イングリッド・バーグマンが神経質な下層階級(元メイド)出身の宣教師役で助演女優賞を受賞しました。
自作の映画化に乗り気でなかったアガサ・クリスティもこの映画の出来には満足だったようで、その後次々と彼女の小説の映画化の転機となった記念すべき映画が1974年版「オリエント急行殺人事件」でした。
映画に出てくる「アームストロング事件」は1930年代という時代設定から、誰しも想像がつく「リンドバーグ事件」が下敷きになっています。
オリエント急行の起源は国際寝台車会社「ワゴン・リ」社)により1883年に運行がはじめられたパリ ~ コンスタンティノープル(イスタンブル)間の列車(当時は一部船舶連絡)のことですが、1930年代にはフランス北部のカレーにまで伸びていたようです。
私は、約10年前に、ベルモンド社がバンコクとシンガポールの間で運行を行っている「イースタン・オリエント急行」(E&O)に乗ったことがあります。 3拍4日の旅でした。
1920年代から30年代の国際寝台車会社の車両を復元した観光列車というだけあって、映画の「オリエント急行殺人事件」のコンパ―トメントも食堂車も、まさにE&Oでの車内風景の記憶を呼び起こしてくれました。 社内のインテリアには優美な寄木細工とチーク材のパネルがふんだんに使われていました。 コンパートメント/キャビンは冷房完備で、シャワー、トイレ、洗面台に大きな車窓がありました。
私が乗ったときは映画とは違ってさすがに蒸気機関車ではなく電車でしたが、映画を観ながらそうした薄れかけた記憶の甦りも楽しめました。
ちょっと押し出しの強さが鼻に突きますが、灰色の脳細胞を誇るポワロは元々鼻持ちならないキャラクターです。 オリエント急行殺人事件の一作で終わってしまったA・フィニーに対して、ケネス・ブラナー版ポワロの活躍はシリーズ化しそうです。 次回作品(ナイル殺人事件/ナイルに死す?)も楽しみです。