山本杏(パーク24)が2012年大会以来、5年ぶり3度目(52kg級1度を含む)となる講道館杯制覇を達成しました。
この日は準々決勝で舟久保遥香(三井住友海上)、準決勝では宇髙菜絵(コマツ)と優勝候補を連続で破って勝ち上がり、決勝では渡部優花(ALSOK)を力強い袖釣込腰「一本」で退けました(写真)。
近年なかなか成績を残せず、自ら優勝インタビューでは目に涙を浮かべながらも「山本は終わったと思っている人も多かったと思う」と語っていたのが印象的でした。
私も正直その1人でした。彼女の高校時代の活躍の印象が強かっただけにピークが過ぎた抜け殻のように出る試合、出る試合で期待を裏切られたように負け続ける姿を見ました。 萎む期待の中、山本の姿も大きな舞台から消えていきました。
高校1年生時(2010)に52㎏級で講道館杯を制し、中村美里以来の高校1年生の柔道天才少女と騒がれました。高校2年時から階級を57㎏級に上げ、3年のとき講道館杯を再び制すると、同年(2012)のグランドスラム東京でも初優勝を手にしました。 その実績から、国士舘大学へ進学した2013年の世界柔道代表に選ばれましたが5位でした。
燦然と輝いた高校生時代から比べると大学時代の4年間は低迷が続きました。
こんなはずはないと思いつつ苦しい年月が続いたことが走馬灯のように今回のインタビュー時に思い起こされたのだと思います。
涙で滞りがちな勝利インタビューでしたが、天狗になっていた高校時代の反省、今の自分の立ち位置、今後の方向性等、彼女のしっかりした考えが語られていました。頭の良い人だなと思いました。
彼女のインタビューでの言葉が長い低迷からついに抜け出した印象を深めた優勝になりました。
彼女の言葉をかいつまむと「諦めないで自分を信じてやってきたことがよかった」「次のグランプリ東京で勝って、世界への挑戦権を奪還したい」ということになっていくのだと思います。
同日の52㎏級の決勝で福岡大の立川莉奈をフェイントの効いた大外刈り(大外落し)で破り初優勝を飾った阿部詩(夙川学院高2年)のきらきらした輝きが、山本杏の高校生当時の飛ぶ鳥落す勢いと重なって見えてしまいました。
どんぐりの背比べの63㎏級は、ダークホースの土井雅子(環太平洋大4年)が、能智亜衣美(筑波大4年)と田代未来(コマツ)の優勝候補2人に勝利して初優勝を果たしました。