潜入捜査官という存在そのものがドキドキで、このテーマを扱った映画作品はたくさんあります。 これまで、私が観た映画から5作品を選んでみました。
①インファナル・アフェア
私の観た中では、香港映画のインファナル・アフェアがベストですね。若き日のトニー・レオンとアンディ・ラウがとにかく恰好いいし、話の展開がまさに仁義なき戦いで度肝を抜かれます。インファナルとは「地獄の」という意味で、アフェアは「出来事」ですが、香港映画での表題は「無限道」になっていました。「無間地獄」ってやつですね。ちなみにシリーズ2作目は「無間序曲」、三作目が「終極無限」になっていました。第三作目には、中国の大物俳優チェン・ダオミンまで登場して、またまたとんでもない仕掛けが用意されていました。
猥雑な香港の街のにおい、もっと言えば なまあたたかい血のにおいを感じさせられる一方で仏教感の漂う映画でした。香港、中国にまたがる黒社会の描き方もその駆け引きの心理描写も見事で、まさに タイトルの 「無限地獄」がぴったりくる映画です。
登場人物のほとんどが死に絶えたシリーズ3作目を観てはじめてホントの「地獄」の意味を実感するという仕掛けにも感心しました。
ちなみに、無間地獄とは大悪を犯した者が、死後絶えることのない極限の苦しみを受ける地獄のことで、仏教で説かれている八大地獄の八番目にある最も恐ろしいとされる地獄のことです。
②ディパーテッド
ディパーテッドは、死んでしまった人という意味で、潜入捜査官としてそのボスが亡くなったりしたら誰もその人が警官だったなんてわからないという、まるでインファナル・アフェアのトニーレオンの役を暗示するような題名ですね。
①のリメイク作品に関わらず、アカデミー作品賞を獲得してしまったという作品です。それだけオリジナルが優れていたということにもなりますが、本作は登場人物などに変更を加え、よりアメリカナイズされたダイナミックな作品になっています。そうそうたるキャスト(監督・製作はマーティン・スコセッシ。出演はレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォルバーグ。)が集結し、雰囲気も華やか。良くも悪くもアメリカ的な映画に変身しています。「男は死ぬまで正体を明かせない」というキャッチコピーが「デパーテッド」の意味をよく表しています。
マサチューセッツ州ボストン南部を舞台に、警察に潜入したアイルランド系ギャング組織への内通者の男とアイルランド系ギャング組織に潜入した警察官の数奇な運命を描いたサスペンス映画でした。
③フェイク
ジョニー・デップ演じるFBI捜査官が偽名を使ってマフィアの中に入って捜査をする映画です。サスペンスというよりは、男と男のせつない友情ドラマという趣きの強く、最後までその警官を仲間と信じつづけたマフィア役のアル・パチーノがお人好し過ぎて逆になんともやるせなさを感じる映画でした。
ちなみに、1997年に制作されたこのアメリカ映画は、マフィアのボナンノ一家に「ドニー・ブラスコ」の変名で6年間潜入し、彼らの大量摘発に貢献した連邦捜査局(FBI)の特別捜査官、ジョー・ピストーネ(英語版)の実録手記「Donnie Brasco: My Undercover Life in the Mafia」に基づいたものです。この潜入捜査が発覚後、しばらくマフィアから懸賞を懸けられ、潜伏を余儀なくされた実話であったことが印象に残った映画でした。
④フェイスオフ
去年のTVドラマですが、栗山千明主演で『コピーフェイス〜消された私〜』(コピーフェイス〜けされたわたし〜)というTVドラマがNHKで放映していました。こちらは、女性記者が飛行機事故か何かで誤って亡くなった他人の顔に整形手術で変えられる話です。その顔が、たまたま彼女が取材していた有名な整形病院の社長夫人の顔だったので、その顔のまま夫人に成りきり潜入調査をするという筋立てでした。
映画「フェイスオフ」は、息子殺しのテロリスト(ニコラス・ケイジ)の行方を執念深く追っていたFBI捜査官(ジョン・トラヴォルタ)が、やがて彼が弟とともに空港から逃亡を図るとの情報を掴み、罠を張って激戦の末逮捕するところから話が始まります。ついに宿敵を逮捕したのですが、テロリストは意識不明状態となっています。そんな最中そのテロリストがロサンゼルスに細菌爆弾を仕掛けていたことが判明しました。情報のカギはテロリストの弟ですが、彼は話をはぐらかし、爆弾の在り処を聞き出すことができません。苦慮した末FBI捜査官はテロリストの顔を自分に移植してなりすまし、弟が収監されている刑務所に入獄して兄として情報を聞き出すことを決意します。しかしそこに腰を抜かす程びっくりの大どんでん返しが起きます。ネタバレ容赦!なんとテロリストがFBI捜査官の顔で現れるのです。しかも、彼は自分で仕掛けた爆弾をFBI捜査官に成りきって自ら解除し英雄となっていました。
刑務所を出ることもできず、自分の顔や地位、家族までも奪われたFBI捜査官は、自分に成りすましたテロリストに復讐をはたすべく脱獄し戦いを挑むことになります。これって死んでしまって存在しないのと同じという意味で究極のデパーテッド状況ではないでしょうか? 4番目にランクしましたが、この映画、結構いけていました。
⑤北北西に進路をとれ
アルフレッド・ヒッチコック監督の映画で、その後の映画007シリーズに影響を与えた作品です。 オトリ捜査のため架空にでっち上げられたスパイと間違われてギャングから狙われた男(ケーリー・グラント)が、そのギャングの中に政府機関から潜入捜査官として送り込まれた女性(エヴァ・マリー・セイント)と協力してギャングに立ち向かう話でした。彼女は、ギャングの持つあるものを盗み出すため潜入していたのですが、ギャングから疑われはじめていたのです。その架空のスパイを登場させてギャングを攪乱しようと思っていたのですが、そのスパイと間違われた男の出現にまさにギャングは攪乱させられて、無事その勘違いされた男と女潜入捜査官とで目的達成一件落着という映画でした。
歴代大統領の顔が岩に刻まれた巨大なモニュメントのある岩場でギャングとの修羅場を無事切り抜けた後、画面が切り替わって、寝台車のベッドの上でその男と女潜入捜査官が抱き合うシーンでチャンチャンと幕になる最後がとても印象に残った映画でした。