TOHOシネマズシャンテで観ました。
10年以上前に私が外資系金融会社で働いていた頃、同じグループ内での証券業務と銀行業務の二部門の情報をイントラネット上完全に隔離する仕組みを「チャイニーズウォール」と呼んでいました。 万里の長城の英語名「The Great Wall of China」とイントラネット防御のための「ファイアウォール」を合成した造語ですが、危うさを伺わせる比喩のような響きがあったと記憶しています。
今、トランプ政権がメキシコとの国境に築こうとしているのもこのようなグレイトウォールなのでしょうか? 5月5日から「ノー・エスケープ 自由への国境」という映画が全国公開となります。 砂漠の国境を舞台で繰り広げられる究極の逃走サバイバル映画のようです。 メキシコからの不法侵入者を射殺していく銃弾の背後にトランプ大統領がいるような既視感を覚える映画のようです。
「グレートウォール」は、中国を代表する巨匠チャン・イーモウが、「ジェイソン・ボーン」シリーズで知られるハリウッドスターのマット・デイモンを主演に迎え、万里の長城を舞台に繰り広げられる壮絶な戦いを描いた中国・アメリカ合作のアクション大作です。 俳優はほとんど中国、香港、台湾人で占められ、舞台も中国の万里の長城という設定ですが、監督を除いた脚本、編集、衣装、音楽などはハリウッド側が請け負っていました。
ヒロインを演じたジン・ティエンが、チャン・イーモウ監督に見いだされた次世代チャン・ツィイーやコン・リーとして大女優への道を歩めればいいですね。
万里の長城といえば秦の始皇帝とか漢の武帝の頃が有名ですが、この映画の時代設定は宋(960~1279)でした。
宋代の中国はヨーロッパに先んじて火薬や羅針盤等を発明していました。 火薬を入手して一攫千金を狙う冒険西洋人傭兵ウィリアム(マット・ディモン)とその連れ(ペドロ・パスカル)が万里の長城で禁軍に捕まります。 宋の時代の禁軍とは、禁裏、禁中を守る近衛軍ではなく、国軍、中央軍の意味です。 その禁軍が莫大な戦力を万里の長城に結集していたのですが、それは60年毎に現れるという敵の来襲に備えていたからです。 そんな緊張の中で捕らえられた二人でした。 そしてその敵とは、匈奴といった生易しい異民族ではなく饕餮(とうてつ)という異種生物でした。 プレデターとエイリアンを足して2で割ったような破壊力と攻撃力に秀でた生物です。
伝説によると饕餮は人間の欲が姿を変えたもので、その貪欲さはなんとなく貧富の差を拡大する資本主義をイメージさせる怪物でした。 人間の欲が独り立ちして怪獣に姿を変え人間を襲って喰らうのです。
傭兵ウィリアムが、万里の長城へとたどり着いたときが、圧倒的な数の饕餮が60年に一度現れるちょうどそのときだったのです。ウィリアムは万里の長城へ逃げ込む前に饕餮と戦って切り落とした饕餮の手を持っていました。そのことから饕餮は磁石に弱いということがわかり、西洋人傭兵2人は禁軍の仲間入りを果たします。 ジン・ティエン扮する女司令官リン・メイとも信任を深め、圧倒的な敵を前に団結して戦う禁軍仲間と共に、ウィリアムは戦う理由を見出していくという物語でした。
中国の歌って踊れるアイドルのルハン、 WOWOWの「三国志 趙雲伝」で韓国のアイドルグループ「少女時代」のユナとイチャイチャの主人公趙雲を演じている中国人俳優ケニー・リン、香港で最も成功した俳優の1人であるアンディ・ラウ等も共演していました。
そういえば、アンディ・ラウが主演したインファナル・アフェアの第一作をマーティン・スコセッシ監督が「ディパーテッド」として2006年にリメイクしてアカデミー賞作品賞を受賞しました。そのハリウッド作品ではマット・ディモンが香港のオリジナル作品のラウが演じた役を演じていましたね。 ギャングの部下で警察組織に潜入したほうの人物です。 (その逆の警察官でギャング組織に入り込み潜入捜査している人物はオリジナル版がトニー・レオン、ハリウッド版がレオナルド・デカプリオでした。)
筋立ては単純なものでしたが、特撮での映像のスケールの大きさと音の大きさには圧倒されました。 最近MRI検査で脳梗塞の予防検査をしたのですが、その検査時に脳髄に響くような音ががんがん響くそのような迫力の映像に迫力の音響でした。