ナタリー・ポートマンがジョン・F・ケネディ元大統領夫人ジャクリーン・ケネディを演じ、ケネディ大統領暗殺事件をファーストレディの視点から描いた伝記ドラマでした。
半生を描いた伝記ではなく、大統領暗殺後5年にギリシャの大富豪アリストテレス・オナシスと再婚し世界を驚かせたエピソードはもちろんなく、1961年から1963年までアメリカのファーストレディであった(彼女が32歳から34歳)約2年に凝縮した物語でした。
その短い期間を3つの事項に分割し、その事項間を行きつ戻りつで編集されるという変わった手法を取っていました。
その3つの出来事とは、1962年2月にジャッキー自身がTV出演して案内役を務めたドキュメンタリー番組「ホワイトハウス案内」についてのエピソード、1963年11月のJFK暗殺事件とJFKの葬儀を巡ってのエピソード、そしてその葬儀の後行われたライフ誌とのインタビューです。
映画はそのインタビューを軸として、ファーストレディとして画期的な「ホワイトハウス」案内を買って出たジャッキーの斬新性、そして暗殺の現場で打たれた大統領の頭を抱きかかえ血まみれになりながらもファッションアイコンとして人々の記憶に焼き付いたピンクのシャネルのスーツにピルボックス帽の組み合わせ、そして狙撃犯容疑のオズワルドまで暗殺された不安の漂う最中、各国の要人を引き連れて歩いて墓地まで大統領の遺体と行進をする毅然としたジャッキーの姿を活写していました。
それらの人々の脳裏に残っているジャッキーの姿からは伺いしれない内面にカメラは迫ります。ナタリー・ポートマンは人間ジャッキーの感情の深層に入り込み、困惑、不安、悲嘆、混乱の中での迷いとそこから気力を振り絞って決断し実行する揺らぎのない強い意志とのせめぎ合いを切り取って見せてくれていました。
目の前で夫を殺害された妻ジャクリーンは悲しむ暇も与えられず、葬儀の取り仕切りや代わりに昇格する副大統領の大統領就任式への出席、ホワイトハウスからの退去など様々な対応に追われることになります。そんな中で事件直後から夫が「過去の人」として扱われることに憤りを感じた彼女は、夫が築き上げたものを単なる過去にはさせないという決意を胸に、ファーストレディとして最後の使命を果たそうとするのです。
インタビューに訪れていた記者が、そのジャッキーの強さに驚いていた表情が印象に残りました。
オバマ政権の終了に伴い離任、2017年1月18日、離任し帰国の途に就いた元駐日米大使のキャロライン・ケネディの幼少期の姿も垣間見ることができます。
人によってとらえ方は様々だと思いますが、私はナタリー・ポートマンがジャッキーに憑依したようにみえ印象に残りました。
再婚で、世間をお騒がせしたジャッキーでしたが、1994年に死去し、元の大統領夫人としてアーリントン国立墓地のジョン・F・ケネディの墓の横に埋葬されました。