全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ「2017年本屋大賞」の候補作が1月18日水曜日に発表されました。
去年7月の第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの「コンビニ人間」他、今年1月というか19日木曜日発表の直木賞候補作、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」と森見登美彦の「夜行」等を含む10作がノミネートされています。
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店含む)で働く書店員が、過去1年間で「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票するものです。そのほか、既刊本市場の活性化を狙った「発掘部門賞」、日本で翻訳された小説から選ぶ「翻訳小説部門賞」も選ばれます。
今後は書店員が2月28日までに全ノミネート作品を読んだうえで、2次投票を実施し大賞を決定する。大賞作品は4月11日に発表される予定となっています。
私なりの10作品の分類です。
すでに読んだ本と簡単なコメント(4冊)
①原田マハ「暗幕のゲルニカ」(新潮社) 原田マハの作品としては、個人的に美術モノより、映画モノの「キネマの神様」や沖縄モノの「風のマジム」のほうが読んで楽しいし、共感できます。 「暗幕のゲルニカ」での本屋大賞はぴんと来ない。
②村田沙耶香「コンビニ人間」(文芸春秋)芥川賞などメジャーな賞を獲った作品が本屋大賞に選ばれることはその主旨からしてないと思っています。
③塩田武士「罪の声」(講談社)週刊文春の2016年ミステリーベストテンの国内部門1位に選ばれた本。今更ながらの「グリコ森永事件」を掘り下げるという話題性にはやや疑問ですな。
④恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎)これは本日19日発表の直木賞の私なりの大本命イチオシ! 直木賞に選ばれれば本屋大賞には選ばれないでしょう。
読もうと思って買っている本と何故買ったかについてのコメント(3冊)
①森絵都「みかづき」(集英社)2016年の王様のブランチ大賞受賞作品です。学校教育の裏側の「塾」にスポットライトを当て塾という切り口から戦後の昭和から平成に及ぶ三世代の塾に関わった一家と日本の教育界の編纂を描ききったと評判の小説のようです。 まだ読んでいないのですが、これが本屋大賞の大本命の予感がしており興味津々です。
②小川糸「ツバキ文具店」(幻冬舎)今、WOWOWドラマで放送中の「本日はお日柄もよく」は原田マハの原作で政治家等のスピーチライターの活躍を描いたものですが、その言葉を扱う専門家のお仕事小説関連で手紙等の代筆を請け負う人達のドラマを描いた小川糸の「ツバキ文具店」にも興味をもってとりあえず購入しました。 「ツバキ文具店」より先に「本日はお日柄もよく」を先に読みたいです。 バラク・オバマの「Yes, We can」演説の陰に名スピーチライターがいたように、安倍首相や小池百合子都知事の演説の裏にもこうしたスピーチライターが知恵を絞っているって考えるだけでも愉快です。 そしてやはり言葉は力です。
③森見登美彦「夜行」(小学館) 直木賞候補作の1つとして、恩田睦の「蜜蜂と遠雷」、垣根涼介の「室町無頼」、須賀しのぶの「また、桜の国で」と共に買いました。 結局並行読みで、途中から「蜜蜂と遠雷」に夢中になり、「室町無頼」と2冊だけ読み切りました。「夜行」と「また、桜の国で」では、私が興味を持っているのは圧倒的に「また、桜の国で」です。 結局、まったくの手つかずとなった「夜行」ですが、森見登美彦の独特なファンタジー感あふれるちょっと怖い話を、お化け屋敷に行くような感覚で4月までに敗戦処理のような感じで読んでみたいと思っています。私は、「明」の万城目学、「暗」の森見登美彦で、両作家の作品は結構好きです。ただ両作家とも好き嫌いに分かれそうな気がして書店員一般に支持されにくいような気がします。
ちょっと気になる本だけどたぶん買わないし読まないと思う本3冊
①村山早紀「桜風堂ものがたり」(PHP研究所)これぞ、本屋大賞の精神を謳った小説のようで、書店員さんが感情移入しやすい、ちょっとズルイって感じのテーマを扱っていますね。去年、漫画が原作の重版出来(しゅったい)って黒木華が主役のドラマがありましたが、そのイメージと被っています。百貨店のブックコーナーに働く青年が、万引き事件をきっかけに、運命が変わり、一冊の売りたい本を巡って街の本屋の老書店員さんと出会うって感じの筋のようですが、よほど余裕がない限り読まないと思います。
②川口俊和「コーヒーが冷めないうちに」(サンマーク出版)「4回泣けます」とかの謳い文句で気になっていましたが、かえってその言葉が胡散臭くて最後まで手が出ませんでした。 この本で読む時間があれば、司馬遼太郎、塩野七海、山崎豊子、浅田次郎、佐藤賢一の著作を読みたい。
③西加奈子「i」(ポプラ社) 一時、相当はまった西加奈子ワールドですが、彼女の天才性は、「ふくわらい」、直木賞受賞作の「サラバ」でも垣間見ることができましたが、私にとって衝撃だった彼女の「通天閣」の読後にじわじわとそれこそ通天閣の背景に輝く花火を観るような高揚感を超える作品ではありませんでした。ちょっと奇天烈な大阪弁のネーチャンの作品は興味はあるのですが、「通天閣」のような読んだ後に広がる感覚に対する期待値が高すぎる今は彼女の新作は封印しておきたい。 彼女の作品は、活字を追っている時より、読み終えたときに絵画感覚で立ち上がるイメージの余韻が素晴らしい。