水曜日11時15分放送のNHKBSドラマ「クイーン・メアリー」も面白いですよ。
「クイーン・メアリー」はBBCを想像していたのですが、制作はアメリカだそうです。そう思ってみると重厚さに欠けた軽いディズニーっぽいお気楽さも漂っていますね。
実際の設定された登場人物はスコットランド人とフランス人なのですが、キャスティングされた俳優さんたちはオーストラリア人、カナダ人、イギリス人達で占められています。
ちなみにブラッディ・メアリーの異名をとったプロテスタント虐殺で有名なクイーン・メアリーはこのメアリー・スチュアートではありません。ブラッディ・メアリーはイングランド女王のメアリー1世(エドワード・メアリー)です。映画「エリザベス」で、病気にかかって他に選択肢がなく渋々王位をケイト・ブランシェット演じる異母妹エリザベスに譲ったあのメアリーです。
一方、メアリー・スチュアートはスコットランド女王です。
幼くしてスコットランド女王となったメアリー・スチュアートは、ヘンリー八世の要望で、ヘンリー八世の後継者となる当時王太子だったエドワード6世と婚約させられた経緯がありました。ヘンリー八世はスコットランドをイングランドの配下に置きたかったのです。今でいう吸収合併ですね。
ヘンリー八世が亡くなるとエドワードの伯父さんがしゃしゃり出て無理やりメアリー・スチュアートを拉致しようとしました。 身の安全のためメアリー・スチュアートは彼女のお母さんの母国フランスに逃れたのです。
ドラマはメアリー・スチュアートとフランス王太子王太子フランソワの結婚前あたりから始まりますが、この背景知識を押さえておくとわかりやすいと思いますよ。
エドワード6世が病弱で早死にしたため、エドワードのお姉さんのメアリー1世がイングランド女王となったのです。ちなみにヘンリー八世は遺言で、王位継承の順位をエドワード6世、メアリー1世、そしてエリザベスと決めていたのです。もともとエドワードは病弱だったのです。(生まれながらの脳梅毒だったという説も)
この頃のイングランドはヘンリー8世が離婚したさにプロテスタントに宗旨変えしてしまいますが、エドワードの後を受けたメアリー1世は敬虔なカトリックでした。 彼女の後を継いだエリザベス1世はもちろんプロテスタントですが、同じイングランドの中でも宗教対立があったこと、プロテスタントの色が濃くなっていくイングランドが、カトリック連合というべきスペイン、フランス、スコットランドに囲まれているという構図も頭に入れておくとこのドラマの背後にある複雑な国際関係がわかりやすいと思います。
ついでながら言ってしまいますと、メアリー・スチュアートはエリザベスの暗殺を企てた罪を問われイングランド女王のエリザベス1世の命で、刑死させられてしまう運命です。
メアリー・スチュアートのお父さんがエリザベスの従兄弟とかで、メアリー・スチュアートとエリザベス1世には血縁関係がありました。 エリザベスは決断したくなかったようですが、メアリーが暗殺を画策した証拠が出てきたうえメアリーもそれを隠そうとしなかったとか・・・。
メアリー・スチュアート亡き後、その子ジェームズがスコットランド王として即位し、また生涯独身で子のいなかったエリザベス1世の死後は、イングランド王位をあわせ継ぐことになりました。以後スコットランドとイングランドは同君連合を形づくり、18世紀のグレートブリテン王国誕生の端緒となったのです。
終生未婚で、子孫を残さなかったエリザベス1世に対し、メアリーの血は連綿として続き、以後のイングランド・スコットランド王、グレートブリテン王、連合王国の王は、すべてメアリーの直系子孫という皮肉な巡り合わせになりました。現、エリザベス2世もメアリー・スチュアートの直系です。
物語は宮廷ラブロマンスという謳い文句でした。
でも、占い師ノストラダムスも出ているし、ちょっとおどろおどろしい幽霊が、メアリーを嫌う王妃カトリーヌの陰謀の毒牙から守ってくれているみたいでワクワクさせられます。 ちょっとオカルトっぽい雰囲気です。
この頃のフランス宮廷って毒殺大流行だったようですね。メアリーも結構きわどいところであの手この手の毒殺や強姦などを回避しています。
日本の歴史物語にたとえると魑魅魍魎と陰陽師が活躍する平安時代ってイメージですが、メアリー・スチュアートの生きた時代は16世紀半ばですから、ちょうど日本にフランシスコ・ザビエルがやってきたり、鉄砲が種子島に届いた頃より少し後の話です。
15歳のメアリーと14歳のフランス王太子が結婚するのが1558年ですが、これは、上杉謙信と武田信玄の川中島の戦いの真っ最中の頃です。織田信長が将軍足利義昭を追放して室町幕府が滅ぶ(1573年)少し前の物語です。
ちなみにこの年にエリザベス1世がメアリー1世からイングランド女王の座を引き継ぎました。
国際情勢もドラマって感じの時代だったのですが、メアリー・スチュアートがフランス皇太子フランソワとの政略結婚の前日譚って感じでドラマがスタートしました。
この後、イングランドの王位継承権を巡って、エリザベス1世の転覆を図ろうする勢力がメアリーに近づいてきたリしてエリザベスとメアリーの確執も深まっていく展開でしょうね。
それにしても、メアリー・スチュアートは、スコットランド、アイルランド系に多い赤毛ってイメージでしたが、ドラマの俳優さんはどちらかといえば黒髪に見えます。