久々のシネスイッチ銀座で観ました。
エリザベス王女を演じたサラ・ガドンは品があってよかったです。 ローマの休日を演じたオードリー・ヘップバーン同様、ああした品の良さは演技以前の育ち、さらに遡って天性だと思いますね。華がありました。
それに比べて妹のマーガレット王女(ベル・パウリー)は、役柄でしょうが苦笑いするしかなかったですね。自らP2(2番目のプリンセス)と自己紹介する茶目っ気たっぷりのお転婆ぶりでした。
「ローマの休日」(53)の脚本を担当したダルトン・トランボの波乱万丈の人生を描いた映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」が、7月22日にTOHOシネマズシャンテ等で公開になりますが、トランボが「ローマの休日」のプリンセス・アンのモデルにしたのが、当時それほど位の高くない空軍兵と恋に落ちて別れたとの噂が世界を駆け巡った時の人マーガレット王女だったようです。
この映画「ロイヤルナイト」もその噂を下敷きにしていました。ただし、映画では、軍人との一夜の恋のお相手は、マーガレット王女ではなく、今年4月21日に90歳の誕生日を迎えられたエリザベス2世が若かりし頃の王女になっていましたよ。 2016年から1945年を引くと19歳のエリザベス王女の物語だったのですね。
1945年5月8日にドイツが降伏文書に調印したことからヨーロッパ戦勝記念日(VEday Victory in Europe Day)とされ、バッキンガム宮殿でも国王ジョージ6世の勝利演説が行われます。
国を挙げてのお祭り気分が高揚する中、エリザベス王女と妹のマーガレットが生まれて初めてのお忍びでの外出を許可され、勝利を祝う群衆に姉妹ははぐれてしまい、そこでハプニングが続出する展開でした。
「ローマの休日」の華やかで明るいイメージと比べると、一夜の話ということもあり(「ローマの休日」は一泊+丸一日の深夜まで)、娼婦街等も出てきて、やや暗いイメージはありましたが、それはそれなりに楽しめました。
国王ジョージ6世をルパート・エヴェレットが演じていました。
最近観た、「ベスト・フレンズ・ウェディング」にもジュリア・ロバーツの恋の悩み相談係のおかまっぽい彼役で出演していましたが、何よりも印象深いのは、約30年前にコリン・ファースと共演した映画「アナザー・カントリー」(84)です。
パブリックスクールでの同性愛をテーマにした映画で、英国美青年ブームを巻き起こした2人は一世を風靡しましたよね。
いみじくも、コリン・ファースが2010年の映画「英国王のスピーチ」で演じたのがこのジョージ6世でした。 ルパート・エヴェレットがこの「ロイヤルナイト」でジョージ6世を演じたのも何かの縁でしょうか?
キス以上までコトが進んだような感じの「ローマの休日」に比べると、キスだけで終わった感じがする「ロイヤルナイト」のラストのやるせなさの余韻は薄いのですが、それでも実名・実在の重さを考えるとよくあそこまで踏み込みました。 別れのシーンに、観客として奥歯をぐっと噛みしめさせていただきました。
第二次世界大戦終盤の欧州で大流行した、グレン・ミラー作曲の「Tuxedo Junction」、「American Patrol」、「In the Mood」等のミラー・サウンドも心地よい映画でした。
余談ながら、NHK海外ドラマの「刑事 フォイル」を思い出しました。 第二次世界大戦下のロンドン近郊の街を舞台にしたミステリー事件簿でしたが、戦時下での英国人のつらい戦いが描かれていて興味深いドラマでした。 6年間も続いた戦争が正式に終焉したと告げられ国を挙げてのお祝いとなったVEdayそのものもこの映画の見どころの1つに数えていいと思います。