銀座和光裏にあるシネスイッチ銀座の前身銀座文化劇場で、学生時代から足かけ7年、入り口でチケットをもぎる”もぎり嬢”のアルバイトをしていた片桐はいりさんが、そのもぎり時代のことや、日本各地の映画館のことを、キネマ旬報に連載したエッセイ集です。
荻上直子監督の下、小林聡子さん、もたいまさこさんと共演した、映画「かもめ食堂」の東京での上映館は当初シネスイッチ銀座一館だけだったそうで、何の因果か、若き日の彼女のアルバイト先のシネスイッチ銀座での舞台挨拶をしたときの印象が面白く描かれていました。
まさに主客逆転ですよね。もぎりのバイトをしていた映画館のスクリーンに自分が役者として映り、その別世界(スクリーンのあちら側)で演技をしているわけですから。
もぎり時代、その銀座文化が大入りになったのは、寅さんとガンダムのシリーズ、それに「蒲田行進曲」だったそうです。寅さんの男はつらいよシリーズでは、人いきれで沸騰した場内に笑いが起こるたび、映画館の重い扉がぱふん、ぱふんと開いては閉じ、劇場が巨大な怪獣に感じられた等の面白いエピソードが満載でした。
ちなみに、「かもめ食堂」は日本初のオールフィンランド(ヘルシンキ)ロケということで話題を呼び、当初、東京と横浜の二館だけの上映でしたが、多くの映画館に拡がり、その多くでロングラン上映を記録しました。
イタリアのシチリアにある小さな映画館を舞台とした「ニューシネマパラダイス」は、銀座文化がシネスイッチ銀座になってから単館上映され、未だに単館上映の興行成績でトップを誇るシネスイッチ銀座の花形作品だそうですよ。
私は、「世界の果ての通学路」という、ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インド等の道なき道を何時間もかけて通学する子供たちを追ったドキュメンタリーをこのシネスイッチ銀座で観たとき、大入り満員で、全席指定であるのにもかかわらず、立ち見の観客もいた光景を覚えています。2014年の春休みか、ゴールデン・ウィークあたりだったと思います。 扉がぱふんぱふんする笑いはありませんでしたが・・・・。
レディース・デー割引を始めた映画館としても有名ですね。 シネスイッチ銀座のレディース・デイは金曜日です。
「シネスイッチ銀座」よ、永遠なれ!ですね。 今度、伺ったときは、おかっぱのもぎり嬢の姿を、頭の中で探してみたいと思っています。