ルイ16世もギロチンの露と消えてしまった後、この13巻あたりから、血なまぐさい予兆が漂ってきます。
実際には14巻以降のことになりますが、革命の立役者たちも、様々な理由で次々殺されていく少々つらい展開になっていきます。
13巻では、「くそったれ!」が口癖のジャック・ルネ・エベールがこのシリーズで初登場の狂言回しとして活躍します。
彼は「デュシェーヌ親爺」という新聞を発刊し、歯に衣着せぬ物言いが人気を得て、今ではパリ市の第二助役です。
エベールは、同じく新聞発行人マラの活躍と人気に憧れています。 そのマラを巡って国民公会でジロンド派とジャコバン派が対立の度合いを深めていきます。
その対立が、エベールの目を通して展開されていくのです。
マラを告発しようとしたジロンド派の目論見は、ジロンド派を見限ったダントンなどのジロンド派への口撃もあって失敗に終わってしまいます。
マラの勝利に、エベールをはじめとするパリの群衆が大喜びする様が描かれていました。
サンテールのような金持ちブルジョワでもなければ、ダントンのような弁護士出身でもない、第三身分として一括りにされてきた貧乏な平民出身のやや下品なエベールが台頭してきた時代の背景には、物価高騰、食糧危機ということがありました。
不穏な時代の中で、サン・キュロット(キュロットをはかない無産市民=貧困層)が食糧争奪のため無秩序の暴徒と化していきます。
彼らサン・キュロットへの共感は、理想や理念ではありません、論理や理屈でもありません、実感です。「腹が減るってことは、腹が立つってことだよ、くそったれ!」でした。