シネスイッチ銀座で観ました。
原題は「Still Alice]です。 原作の翻訳本はstillを形容詞としてとらえ「静かなアリス」ってタイトルにしていましたが・・・。 他動詞としてとらえると「アリスをなだめろ!」になります。 翻訳された映画の邦題は副詞の、まだ、今までどおり、それでもやはりの意味で、「アリスのままで」としています。
若年性アルツハイマーの女性アリスが記憶を失っていく日々をつづった全米ベストセラー小説「Still Alice」を映画化し、アリス役を演じたジュリアン・ムーアが第87回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したドラマです。
この原作は2007年に自費出版されたものですが、口コミで広がり、2009年に大手出版会社から刊行されるとあっというまに「ニューヨークタイムズ」のベストセラーリストに入ったのだそうです。その後30を超える言語に翻訳され世界で1800万部を超えた大ベストセラー小説になったのですから、まさにシンデレラ本ですね。
一個の自我が壊れて思い出や過去が消えていく恐怖を、身近に「明日は我が身か?」と感じる現代人がそれほど多いということかもしれません。
ニューヨーク、コロンビア大学で教鞭をとる50歳の言語学者アリスを演じるジュリアン・ムーアが、その刻一刻と悪化していくアリスの様子を、表情、しぐさ、動きで見事に演じきっています。
講義中に言葉が思い出せなくなったり、ジョギング中に自宅までの道がわからなくなったりするのですが、私は、このジョギング中に迷子になった彼女の顔の表情に見入ってしまいましたよ。
主人公の目線とカメラ目線と私の目線がまさに釘付けになった瞬間でした。
夫や娘たちとアリスの距離感がいいですね。その大人の対応ぶりに救いを感じます。
アリスが病状悪化するであろう自分にビデオを残してそのときの行動を指示する企ては驚愕であると同時に身につまされるものがありました。 映画でのこの部分は、感傷に浸りすぎず、たんたんとむしろ滑稽さも感じさせる描写になっていました。
アリスがアルツハイマー病患者と医療関係者の前で行ったスピーチには胸を打たれますよ。 「私は闘っているんだ!」
アルツハイマー予備軍の皆様、明日は我が身です。 他山の石と思える今、映画で疑似体験し、心の準備をしてみませんか?