ジョディ・フォスターといえば、14歳で、娼婦役として出演したロバート・デニーロ主演の「タクシー・ドライバー」(’76)が有名です。
この「ホテル・ニューハンプシャー」(’84)で主役格のフラニー役を演じている彼女もまだ22歳で若いなあ・・・・と思って観ていると、物語の冒頭でいきなり輪姦されたり、物語の後半あたりで次男との合意の上での近親相姦とかのシーンがあって、私には強烈なインパクトでした。
ホテル経営を夢見る父ウィンスロー・ベリーを大黒柱とする不思議なベリー家族の物語です。 おのおの弱みや傷をもちながらもたくましく生きていく(飛行機の事故死、自殺者も出ますが)家族の姿を次男ジョンの視点から語った大河物語でした。
長男フランクは学校でいじめにあっているゲイです。美しくも天衣無縫の長女フラニーはフットボールチームの連中にレイプされてしまいます。そのとき力になってくれた黒人フットボールの選手のジュニア・ジョーンズとは家族ぐるみの友人となり、後にフラニーと結ばれました。次男ジョンは姉を女として好きであり、仇を討とうと拳闘を祖父のアイオワ・ボブから教わりますが、祖父は急死してしまいます。次女リリーは成長せず、小人症と診断されますが、後にベストセラー作家になります。
父ウィンスローは教師でしたが、廃校になった女子高を買い取り「ホテル・ニューハンプシャー」と名付け家族を巻き込んだホテル経営に乗り出します。そのうち友達からウィーンの地でのホテル経営の依頼の話が舞い込んで家族で移りますが、分乗して乗った飛行機が墜落して、母と三男が亡くなってしまいます。
いろいろな災難に遭遇しますが、そこは適者生存のアメリカ人魂でしょうか、それはそれで織り込みながら、過去の災いにしっかり決別して前向きに乗り越えていきます。 (次男ジョンがレイプされた姉フラニーに、「何かできることはあるか」と慰めの言葉を投げたときの、フラニーの「昨日までの私を返して」と返した台詞にはぐっときました。)
「人生はおとぎ話、人は夢をみて、その夢は去っていくが、それでも人生は続いていく、悲喜こもごも、苦しいことや悲しいことが続いても、それでも夜明けはやってくる。」・・・・というあたりがテーマでしょうか? 家族に起こりうるあらゆる事件、出来事、不幸等の事例がこれでもかと羅列され、それでも乗り切っていくという姿勢に、ちょっぴり「風と共に去りぬ」との共通点が垣間見えましたが、エキセントリックな登場人物の事件を描いた群像劇という点では、この「ホテル・ニューハンプシャー」というネーミングはとても気に入りました。