先週、昔働いていた外資系金融機関のOB会の集まりがありました。 5人だけのこじんまりとした食事会でしたが、私より若干年上の女性の元同僚もその集まりに参加していました。彼女は長年糖尿病と闘っているのですが、いたって健康そうでした。そのことを告げると、嬉しそうに、最近山歩きを始めたといいながら、笹本稜平著作の文庫本を取り出して紹介してくれました。 それが、この映画の原作「春を背負って」でした。
その後の土曜日の、「王様のブランチ」にゲスト出演した今年74歳の木村大作監督の、「標高3000mのホームドラマ」との宣伝文句も心に響きましたので、背中を押されるようにして、この「春を背負って」の映画を観てまいりました。
新宿、京王百貨店に用があったので、新宿3丁目にある「バルト9」で観ました。
映画では、原作の複雑な筋の枝葉は思い切りカットしシンプルでストレートな話にしたようです。撮影許可の関係で、原作の奥秩父の山小屋は、立山にある「大汝休憩所」に変更されたそうです。
東京の投資銀行でGMとして働く有望な独身男「長峰亨」(松山ケンイチ)は、急死した父(小林薫)の後を継いで山小屋の運営に挑むことになります。その彼を支えるのが、世界を放浪した年上の山男「ゴロさん」(豊川悦司)と父母の相次ぐ死により「居場所」を求めて、山小屋「菫」にたどりつき、亨の父の手伝いをしていた愛(あい)ちゃんでした。
多忙な都会での生活で居場所を見失いつつあった亨、父母の死の後心身ともに居場所を亡くした愛、居場所を求めて放浪を続けているゴロさん等、欠落感を持った彼らが見つけた居場所(ホーム)がまさに標高3000mの大自然の囲まれた菫小屋だったのです。
ゴロさんのつぶやく言葉が心にしみます。「人生は徒労の連続だ。でも、一歩一歩自分のペースで歩いていけばいいんだよ。」「人間は重いものを背負って生きている。でも、心の持ちようでその重荷が春の風のようにふっと軽くなるものだよ。」とか・・・・です。
最後に流れる山崎まさよしの主題歌「心の手紙」も感動的でした。
読めるかどうか自信はなかったのですが、映画の帰りに立ち寄った、地元西葛西の本屋「文教堂」で「春を背負って」の原作文庫を買ってしまいました。北村薫の「八月の六日間」という都会で働く週末山ガールを題材とした小説も気になっています。
3月の左膝に続いて今月末の右股関節手術を控えて、山登りとか山歩きに妙に心惹かれているみたいです。