監査法人等に会社法に基づく、計算書類(財務諸表)等の監査契約をしていない会社の監査役による会計監査の留意点を大雑把にメモしてみました。
1.計算書類に関する取締役の義務
株主から会社の経営を委任された取締役は、株主をはじめとする利害関係者に対して、自分の職務執行の経過と結果を報告し説明する義務(Accountability)がある。そのため、毎事業年度末には、会社の状況及び財産・損益の状況を記載した計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)、及びその附属明細書)、(事業報告及びその附属明細書)を作成しなければならない。(会435②)
これらの計算書類等を株主に報告するには、事前に監査役監査を受けることが義務づけられている。(会436①)
そのため、監査役は、計算書類等が適法かつ適正に作成され、会社の実態を正確・明瞭に表示しているか否かを監査して、監査報告をしなければならず、取締役は、その監査報告を計算書類に添付して株主に提供し、本店に備置し株主・債権者の閲覧に供しなければならない。(会437、442)
2.監査役会計監査の役割
計算書類等は、取締役が自分の職務執行の結果を報告するために、自らの手で「作成」した書類であるので、それだけでは報告を受ける人の信頼を得ることはできない。計算書類等は、取締役から独立した立場にある監査役の「監査」を受けて、その適性性、信頼性を担保されることによって、はじめて「報告」に値する書類になる。これが会社法の規定する会計監査の役割である。
計算書類の信頼性を担保する監査役の責任はまことに重大である。
4.その他注意点
①会社法における計算書類とは、その事業年度にかかる個別(単体)の計算書類である。連結計算書類が求められるのは、会社法上の大会社であって、金商法の規定により有価証券報告書を提出しなければならない会社である。ただし、会計監査人設置会社は任意で連結計算書類を作成することができる。(会444条①)
②注記表の記載項目の要求も、機関設計、公開・非公開によって異なる。
③重要な会計方針に係る事項は計規101条によれば、1)資産の評価基準及び評価方法、2)固定資産の減価償却の方法、3)引当金の計上基準、4)収益及び費用の計上基準、5)その他・・・をカバーしておく必要がある。
④事業報告について、1)2006年5月1日施行の会社法施行規則第118条により、内部統制システム基本方針につき取締役会決議があるときは、その最新の決議内容の概要を開示することが求められている(施規118条②)2)2011年3月31日、11月16日の改正法務省令の施行に対応すべく、会社役員の状況の項目から社外役員に関する情報が取り出され詳細な情報開示をすることが2012年度の事業報告から適用されている。今期の事業報告では、特に施規124条①~⑨における社外役員の項目の情報開示を含めて、しっかり施規で求められている事業報告の内容に対応しているか否かのチェックが必要となりそう。
⑤経理規程等をレビューする。
⑥売上計上等は売上認識の根拠となる検収書等と突き合わせて入力されているか立ち合い確認。
⑦決算前の試算表、決算仕訳一覧、決算財務諸表、月次決算表等を前期、前々期のそれと比較分析。
⑧会社がコンサルティングを依頼している監査法人の期末往査の結果報告をヒアリング。