会計に関する法律 → 会計理論は実務に密着した実践規範であるが、それ自体は法的強制力を持つものではない。その会計理論に法的強制力を持たせたのが、会社法などの会計規定である。我々が目にしている貸借対照表や損益計算書などの計算書類は、強行法規である会社法や会社計算規則などの「会計に関する規程に」従って作成されている。
1.内部管理資料としての「会計」→企業の経営者が、経営管理責任を遂行するためには、自社の経営状況を的確に、かつ迅速に把握することが不可欠である。そのために「会計」は、利益計画・予算統制・原価管理・損益分析などの、経営意思決定や業績評価のための資料を経営者に提供する役割を果たしている。これを管理会計というが、管理会計の特質は、企業の利益獲得を目的とした内部資料であり、「法的な規制を受けない私的会計」であることである。
2.外部報告書としての「会計」→企業が、自由経済体制の下で市場に参加して経営活動をするにあたっては、その市場が秩序生前と機能するように、市場の要求にこたえて自社の情報を開示することが求められる。外部に開示する情報は、隠ぺいや粉飾などによって市場の秩序を乱すものであってはならなず、また、各企業の情報の内容は、均質で、必要かつ正確でなければならない。そのため、法令で「情報の公開」と「情報内容の均質」とを義務づけることによって、企業の会計情報を公的に管理する体制が整えられている。我が国の外部報告としての企業会計制度は、会社法、金融商品取引法、法人税法というそれぞれ目的の異なった3つの法律の規制の下で形成されている。
①会社法の会計→会社法は、「株主の保護」と並んで、「債権者の保護」とそのための債権に対する担保能力の保全を目的としている。したがって、債権者にとって唯一の担保である株主出資額を保全するために、資本維持の原則に従って、配当可能額の算定を厳しく規定している。会社法では、「配当可能利益とは純財産の増加分である」という計算思考をとっているので、貸借対照表上の資産の範囲とその評価に重点をおいて規制している。(貸借対照表重視)
②金融商品取引法の会計→金融商品取引法は、「一般投資家の保護」を目的としているので(金商法第1条)、企業情報の開示を重視し、会計の主目的を投資家に対する情報提供においている。そのため、会社の収益力を示す期間損益計算に重点を置いて、発生主義会計に従って当期の期間損益を算定することを課題としている。(損益計算書重視)
③法人税法の会計→法人税法の会計は、「税負担の公平性の確保」を目的としているので、課税所得(税を課する利益)を公平に計算することに重点を置いている。そのため、各会社の利益計算(収益-費用=当期利益)を、税法の「益金」「損金」の規程に従って加減調整することによって、課税所得を公平に算定することを課題としている。